君という光 第二章 3


  




 ガチャーン!



 越前家の台所を発信源にガラス製品が割れる音が響き渡る。

「大丈夫ですか、おばさま?」

「え、えぇ。大丈夫よ。ごめんなさい、菜々子ちゃん」

 飛び散ったガラス片を片付けようとしてくれている菜々子に割った張本人倫子は恐縮げに謝る。

「後は私がやりますから、おばさまは少し休んでいて下さい」

 少し顔色が悪いと見てとった菜々子は倫子を休ませようと、居間を指す。

「じゃあ、お願いしちゃいましょうか」

「はい」

 笑顔は見せているが、それは誰が見ても無理しているものと分かるモノだった。そしてやはり顔色

も少し青味が差している。











 倫子はゆっくりと居間に行き、座卓の側に腰を下ろした。

「どうかしたのか?」

 ちょうどその時、裏の寺に行っていたはずの南次郎がタイミング良く帰って来たのだった。

「あなた……」

 一瞬縋るような瞳を向けたかと思うと、すぐにその瞳は付せられた。

 何かから逃げるかのように……。







「…………何があった?」

 誰に?とは問わなくても分かりきったこと、そして、質問の内容は既に何か起こったことが前提で

あった。

 倫子は覚悟を決めたようにゆっくりと閉じていた瞳を開けた。

「……次元の穴が開いたわ」

「!? いつだ!」

 南次郎の表情が一瞬にして真剣なものに変化した。

「今さっきよ」

「…………」

「私には正確なことは分からない。けれど、もしかしたら今回のことは予想外のことかもしれないわ。

だからあのコたちは帰って来るかもしれない。まだ、私たちの元にいてくれるかもしれないわ……」

「そうか。じゃあ、ガキどもが帰って来るのを昼寝でもしながら待ってるとするか」

 倫子の気持ちをしっかり受け取った南次郎は一際明るく言うとゴロンと畳に横になり、言葉通り寝

ることにしたのだった。そんな南次郎を目にすると、倫子も息子としっかりした二人の少年たちを信

じることにする。

 もう自分たちに出来るのは本当に信じ、祈ることだけだから……





「……リョーマ。どうか無事で…………」





















      ◆◆コメント◆◆
       ちょっと一呼吸(笑)
       南次郎と倫子の会話好きなんです♪
       倫子はいろいろと知ってるようです。でも全部ではありません。
       次回はちゃんとリョーマさんたちです(^o^)

             2005.05.15  如月水瀬