君という光 1


  



「リョーマさん、私ここで買い物があるんですけど、どうします?」

 菜々子の指し示した先に視線をむけると、女性客でいっぱいの雑貨屋があった。

 雑誌に良く掲載されているらしく、そのうえ本日は休日。客がいない方がおかしい。

「…………」

 無言だった。

 けれど、はっきりとリョーマの大きな瞳は返事を出していた。



 「入りたくない」と……



 菜々子は正確にリョーマの気持ちを理解していた。もう何度も同じようなことがあったので、当然

かもしれないが。





「なるべく早く済ませてきますので、ここで待ってて貰えますか? これで今日の買い物は終わりで

すので、美味しいケーキを買ってかえりましょう」

「うん、待ってる」

 素直に頷くと店と店が隣接する境にある丁度一人分ほどの幅の壁にもたれる。

「行ってきますね。知らない人について行っては駄目ですよ」

 菜々子はリョーマの背中にからかい混じりに声をかけると、返事を聞かず店に逃げるように入って

行った。









 残されたリョーマは怒りをぶつける相手に逃げられてしまい膨れっつらである。しかし、それはリ

ョーマの魅力を損なわせるものではなく、寧ろ増長させるものであった。

 そんな自分の容姿のことなど全く関心がない、というよりも中学一年生としては平均的な身長なの

だが、部活の先輩たちが揃いも揃って中学生の平均を越えている者が多いため、身長とともにコンプ

レックスにしか感じていなかったのだ。

 が、周りから見ればそれはもう可愛いという言葉に限られる。

 リョーマがいくら否定しようとしても100人いれば、確実に9割以上は可愛いと認めるだろう。

 そんなリョーマが更に可愛い顔で、しかも一人でいるとなれば視線が集まってしまうのも仕方ない。

というか必然的だった。



(……ウザイ!)



 突き刺さるような視線に、リョーマはキレかけていた。

 店に入ろうかという考えがよぎるも、人でいっぱいの店内を見てしまうとうんざりして、暗い溜め

息しか出てこない。







 そんなリョーマに更に追い討ちをかける者が現れた。



 「ねぇねぇ。君、青学の越前リョーマ君だよね?」