「……跡部?」
ホストの仕事を始めて一週間が経った頃、不二は一定の時間が過ぎるとどこかへ行く跡
部の行動に気付いた。時には手ぶらで、時にはコンビニの袋を持って、時にはどこかの料
亭の弁当を持ってどこかに消えるのだ。
「……もしかして」
不二はある過程を想像して、跡部をつけることにした。その想像とは、跡部が向かうそ
の先に不二が探している神尾がいるかもと考えたのだ。
暗い階段を何段も下りていくと、そこには小さな扉があった。跡部は首にかけてあった
鍵を使って扉を開けると部屋に入って行った。
「……」
不二は音を立てずに扉に近付き扉に耳を当て中の様子を窺った。
『よう。調子はどうだ?』
『……』
『ほら、メシだ』
『いつになったら、ここから出してくれるんだよ?』
『あーん? お前はずっとここにいるんだよ』
『っ!』
跡部が部屋から出て来る気配を感じて不二は慌ててその場を後にした。
「不二さん。忍足さんが探してますよ」
「うん。分かった」
鳳に言われ、不二はその場から離れた。が、それを見ていた人物がいた。樺地崇弘だ。
「跡部さん」
「どうした? 樺地」
「実は……」
「……あれ?」
再び、不二が地下の部屋に行くと、なぜかそこはもぬけのからだった。
「……バレたかな?」
不二は慌てて踵を返すと階段を駆け上がった。
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