always 7


  



「乾先輩こっち」

「? データではこの道で合っているはずだが……」

 以前に頭に叩き込んだ、学校からリョーマの家までの地図を思い浮かべる。

「間違ってはないっスけど、このすぐ先にある公園突っ切る方が早いっス」

 新事実をノートの新たな項目に付け加えながら、リョーマの後について歩く。





 公園の中を歩いていると、向かいから誰かがこっちに向かってジョギングして

いるのが見えた。最初は誰だか分からなかったが、その距離がある一定の距離ま

で縮まると誰だかはっきりと分かった。

 レギュラーの一人である二年の海堂薫であった。

 海堂の方はトレーニングに夢中なのか二人に全く気付いていないようだった。

ペースを保ちながら、軽快なリズムで走っている。

「やあ、海堂。休日までトレーニングかい? 精が出るね」

「ちぃース」

 二人の全く内容の異なる言葉にやっと海堂も二人の存在に気付く。

「こんちは」

 一応先輩である乾には礼儀正しくペコリと頭を下げ、リョーマには視線を向け

ただけであった。

「何スか?」

 視線に目聡く気付くと問い返す。

「何でテメーが先輩と一緒にいんだ? 確か不二先輩と出掛けたんじゃねーのか

?」

「何で知ってんの?」

「昨日部活の後に不二先輩が自慢そーに話してたんだよ」

「……」

 リョーマの機嫌がこの言葉により一気に下がった。

 不二はレギュラーたちにリョーマは自分のものだから手を出すなと釘をさした

だけなのだが、リョーマはそう考えなかった。何故なら、常日頃から不二はいつ

でもどこでも自分に構い、周りに二人の関係がばれても構わない。否、寧ろ皆に

盛大に発表したいと思っていた。だが、それとは反対にリョーマは絶対に知られ

るのは嫌だと断固として拒否し続けていたため、不二の行為は嫌がらせ以外の何

者でもなかったのである。

 リョーマの機嫌は落ちるところまで落ちた。そして、それは怒りに変化した。

胸の奥底から不二に対する怒りがどんどん溢れてくる。止まることを知らぬよう

に。

 乾と海堂はリョーマが切れそうなのを第六感で感じた。



(やばいな……)

(ふしゅ〜?/何か悪いことでも言ったか?)



 二人はお互いの顔を見合わせ、アイコンタクトで会話して、ここからというか、

リョーマから離れることが最良の方法だろうという考えに至り、これ以上ないと

いうほど息をピッタリ合わせ、この場から逃げ出すための作戦を決行する。

「え、越前」

「何スか?」

 乾の言葉にゆっくりと、ひときわゆっくりと顔を巡らせる。

「お、俺としたことが、どうやら海堂との約束を忘れていたようなんだ。海堂の

トレーニングに付き合う予定だったんだ。悪いんだが……」

「別にいいっスよ。俺一人で帰れるし。んじゃ、先輩方サヨナラ」

「わ、悪いな……」

 背中を向けて去っていくリョーマに海堂は謝罪の言葉をかけるがリョーマから

の言葉はなかった。

 二人は何も言われず、心底安堵していた。









 残された二人が安堵していた頃、実はリョーマも一人になれて心からほっとし

ていた。怒りがピークに達し、今度はそれが悲しみと不安が混ぜ合わさったよう

な複雑な感情に変わっていた。

 リョーマの目にはまた涙が込み上げてきた。



(……っ。もうヤダ。こんな苦しい思いすんなら周助と付き合うのやめる。絶対、

絶対別れる! 何が何でも別れてやるっ!!)



 リョーマは残りの家路を全速力で走りだした。涙で潤んだ瞳を人に見られない

ように下を向いて走っていたため、家の直前で人にぶつかってしまった。

「「……っ!」」

 リョーマとぶつかった相手の痛みに耐える声が重なる。

 相手の方が体格が良かったため、ぶつかった当人であるリョーマの方がバラン

スを崩し、後方に倒れそうになる。リョーマは身体が傾くのを感じ地面に倒れる

ことを覚悟してギュッと目を閉じた。

「……?」

 いつまで経っても痛みの第2波がこないことを不思議に思い、目を開けるとそ

こには見知った顔があった。

「大丈夫か越前?」

「ぶ、部長……。何…で?」

「ちょっと……って、越前。お前どうしたんだ!?」

「?」

「気付いてないのか? お前泣いてるぞ」

「…………えっ?」

 手塚に指摘され自分の頬を流れる透明な光る雫に初めて気付く。

「な、何で……っ」

 リョーマは次々と溢れ、流れる涙を手で拭うが涙は止まる気配を全く見せなか

った。手塚はそんなリョーマの頭を優しく撫でた。

「何があったか知らないが、どうせ不二が関係してるんだろう。理由は無理に聞

かないから、とにかく好きなだけ泣くといい」

 部活中には絶対に見せない優しい表情だった。

「あっ……ありが…と、部長っ」

 涙で濡れたままの瞳を上目遣いで向けられ、手塚の腕は本人の意思を無視して、

知らず知らずの内にリョーマを自分の胸に抱き込んでいた。

 突然のことにリョーマは頭が混乱して、一瞬抵抗することを忘れてしまった。

しかし、そんな時に限って見られてはならない人に見られていることが人の宿命。

 リョーマも例外ではなかった。

















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   ◆◆コメント◆◆       お久しぶりのようなalwaysです。       今回の登場は薫ちゃんと部長でした♪             薫ちゃんは相変わらずどこででもトレーニングをしてますね。       それが今回の氷帝戦での勝利に繋がったんでしょうvv       (↑遅いって……)       部長も登場!       ということでこれでレギュラーのアル一人を除いて青学主要メンバー       登場し終わりました!!       誰を忘れていたかお分かりですよね?(笑)       どうか成仏して下さい!!(酷っ!)              次回は誰が登場するかもうお分かりでしょう?       そうアノ方です。       てか、アノ方以外だとCPが違うことになってしまうんですけどね。       ではでは、また来週〜♪                       2005.08.30 如月水瀬