always 6


  




「お待たせ、皆。どんどん食べていってくれよ」

 いつの間に注文していたのか、リョーマたちのテーブル一杯に美味しそうなお

寿司が並べられた。注文した犯人は、菊丸と大石とリョーマが会話していた時、

全く喋っていなかった乾である。彼等が会話というかケンカ(リョーマが一方的

に菊丸を悪者にしていただけなのだが……)をしていた時にデータをもとに、四

人の好みそうな物を手当たりしだい(もちろん予算もしっかり考慮して)に注文

したのだった。

 リョーマは目の前に置かれた皿に乗った寿司を目をキラキラ輝かせて見つめて

いた。

(今にも涎を零しそうだなぁ……)

 ご飯を前に待てとされたパブロフの犬状態のリョーマを見て、大石は苦笑する。

「越前。どうぞ」

 大石の許可を得ると、正しくリョーマは寿司に飛びついた。

「いただきまーす♪」

 一つ食べる毎に至福の笑みはどんどん深くなっていく。

 大石は途中で食べることを止めると、リョーマの幸せそうな顔を眺めることに

残りの時間を費やした。乾は食べながらデータをノートに次々と書き込んでいく。

ノートはいつの間にか新しくなっており、本日だけでどうやら一冊を書き終えた

ようである。







 それから15分ほど食べ続けた後、リョーマは箸を置いた。

「ごちそー様でしたv」

 リョーマの機嫌は頗る良かった。それは誰が見ても明らかだった。

 寿司は8割方綺麗に食べられており、残り2割はというと菊丸の分であった。

 菊丸はまだ死出の旅路から戻ってきていない。今なお、リョーマには到底理解

できないことを呟き続けている。全ての寿司を食べてしまっても良かったのだが、

さすがに可哀相と思いリョーマは菊丸の分を残しておいた。それも菊丸の大好物

のアナゴを。

 乾はノートに『越前は意外と優しい』と付け足すとノートを閉じ、立ち上がっ

た。それに続きリョーマも立ち上がるが、大石は出ようとしない。それに気付き

疑問を浮かべると

「大石先輩?」

「英二の奴をこのままにしておくわけにはいかないから、意識が戻ったら家に送

り届けるよ。だから俺はここでさよならするよ。英二と俺と越前の分のお金渡し

ておくから、乾支払い宜しく」

「ああ」

 お金を受け取ると、乾は会計をするためレジに向かった。

「越前ごめんな」

「えっ? 何がっスか?」

「不二とケンカして泣くほど辛かったんだろうに、仲直りもさせてやれないどこ

ろか、話を聞いただけに終わってしまった……」

「愚痴聞いてくれただけでも十分スよ。だって先輩たちが真剣に話聞いてくれて、

心配してくれたのスゴイ伝わってきたから。だから、先輩が謝ることなんてない

っス。俺は二人にスゴイ感謝してるんスから」

「そうなのか?」

「そうなんです! それにお寿司も奢って貰ったしね」

 いつもの強気な笑みと口調で大石を納得させる。

「そうか。それなら良かった」

 リョーマのいつもの態度と言葉にようやく納得した大石は、全身から余分に使

っていた力を抜き、ホッと安堵の溜め息を吐く。

「話は終わったかい?」

「うわぁっ!」

 精算を済ませた乾が音もなく、リョーマの背後からにゅっと顔を出す。近付く

気配はさることながら、足音すら悟らせずに突然背後から喋られ、リョーマは思

わず叫び、大石の腕にこれ以上ないほどピタリと引っ付いた。

「越前は背後が弱いっと……」

「何書いてんスか!!」

 リョーマの反応をどこか楽しそうにノートに書き記す乾にツッコミを入れるが

届くことはなかった。諦めてガックリと肩を落とすとノートを閉じる音が聞こえ

る。

「そろそろ行こうか越前。俺も暇だし家まで送っていこう」

「……」

 返事をしなかったが、無言は肯定と取り、乾はリョーマの手を取り店を後にし

た。

















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   ◆◆コメント◆◆       やはり今回は新たな人物は登場せずでした。       次は、登場しますので(笑)             そして今気付いたことが!?       一人忘れてました。それはもう綺麗に(−_−;)       登場させようかどうか迷います。              管理人の気力次第ということで……       ごめんよ……                       2005.08.16 如月水瀬