部室が真冬に逆戻りしたなど露知らずリョーマは兄のもとへひた走っていた。
最初は直接マンションの方に行こうかとも考えたが、鍵を持っていないことに気付く。
兄の通う学校に迎えに行くのもいろいろと面倒臭いのだが、寒いのは嫌だ。なので、学校に向かう
のだった。
勝手に他校に入っても良いか一瞬躊躇ったが、青学にもよく見学とか偵察で他校生が頻繁に来てい
ることを思い出し、大丈夫だろうとそのまま門をくぐる。
目指すはテニスコート。
けれどそこまで行く必要はなかった。
「あっ!? セイ兄!」
「えっ?」
「何だ、何だ?」
リョーマの正面から歩いてくる集団に兄を見つけたのだった。
「お疲れっ! セイ兄」
向けられた者以外は全員が顔を紅く染めるほどの笑顔を見せる。そしてリョーマの兄もリョーマに
負けず劣らずの綺麗な微笑みを浮かべるのだった。
「何かあったの、リョーマ? マンションに来るならまだしも学校に直接来るなんて」
ただ兄に早く会いたかっただけなのだが、いつもと違うリョーマの行動に心配の色を隠せなかった。
「別に何にもないよ。ただ、セイ兄に早く会いたかっただけ!」
「ありがとう。僕もリョーマに会えて嬉しいよ」
その言葉を聞くと同時にリョーマは何の躊躇いもなく彼に抱きついた。そして猫が主人にゴロゴロ
と甘えるように、リョーマも甘えるのだった。周りの存在など完璧に無視して。
けれど、無視されている者が黙って見ているわけがない。
「ねぇ、幸村。ソレ誰? てか、どっかで見たことある気がするんだけどさ?」
「彼は青学で唯一の一年生レギュラーの越前だ」
「それぐらい知っておくのは常識ですよ」
「まあ、丸井じゃから仕方ないのお」
「全く、たるんどる!」
「真田、何か違うぞ……」
「丸井先輩は置いとくとして、なんでも幸村部長と越前が? それに“セイ兄”って部長のことっす
よね?」
まずは赤髪でたいていお菓子を食べている丸井。
丸井の問いに答えたのが立海のデータマン柳。
きつい一言はジェントルマン柳生。
どこの言葉か良く分からないうえ、何気に酷い仁王。
相変わらずその言葉しか知らないのか真田。
気苦労の堪えない日系ブラジル人ジャッカル。
何故か一番まともなことを話す2年エース切原。
立海レギュラー全員が話し終えたのを確認してから、リョーマの兄こと立海の部長幸村精市は彼等
の問いに答えた。
「皆の知っての通り彼は青学の一年レギュラーの越前リョーマ君だよ。それと同時に僕のたった一人
の大切な弟でもあるんだ。今までは黙っていたけれど、知ったからにはこれからはそれ相応の対応を
よろしくね」
何も知らない第三者から見れば本当に綺麗な笑顔。
けれどいつも彼と一緒にいる彼等は幸村の本性を知っていた。というか実際に体験していたという
ほうが正しいだろう。
「「「「「「「わ、わかった(わかりました)っ!!」」」」」」」
背中に冷汗をかきながらレギュラー陣は頷くのだった。
名字が異なるのは何故なのかという疑問は当然あったが、今それを聞けば平穏な学園生活は送れな
いと断言出来る。
彼等はソッと心に蓋をしたのだった。
「リョーマ。今日はどうするの? 僕としては泊まっても全然構わないけど、明日は一応学校あるで
しょ?」
「母さんが一日くらい休んでも構わないって。むしろ兄弟水入らずでゆっくりしてきなさいだって♪
だから今日から日曜まで泊まっていい? 後、セイ兄にお願いがあるんだけど……」
「何かな? 僕はリョーマのお願いなら何でもきいてあげるから、遠慮なく言ってね。それと母さん
がOKしてるならいつまででも泊まって構わないからね」
((((((さすがにソレはマズイだろ!!))))))
決して声には出さないがリョーマと幸村を除いた者の心は一つ。
幸村に常識が通じないのは、母親の影響だったということも発覚した瞬間だった。
これ以上余計なことを知りたくない彼等は一人を除いて意識を手放した。
「いいなぁ。なあなあ幸村! 俺も泊めてよ。ダメ?」
幸村の黒さもなんのその。
好奇心旺盛の彼にはあまり効いていない。
同じ学年なのにどこか無邪気さを残す丸井にリョーマを少し重ねているのかもしれない。だから、
丸井に対してだけは他のレギュラーより甘くなってしまうのかもしれない。
−N E X T− −B A C K−
◆◆コメント◆◆
前後編で終わらせるはずが、何故かまだ続いております(-.-;)
そして、タイトルの横の前編が消えて、1になっております(当然この回は2です/爆)
あはははは……
笑って誤魔化されて下さい(死)
誰かさんが暴走してくれましてどこで終わるのか全く分かりません。たぶん初期の設定
通り幸リョで終わるとは思うのですが、ソレすらも……
本当にダメダメで済みませんm(__)m
それでは、3でまたお会いいたしましょう♪
2005.3.14 如月 水瀬