Brother 4


  

「じゃあ、僕とリョーマは帰るね。それと明日は学校休むから♪ 真田後のことはよろしく頼む」

 それはもうあっという間に着替えるとリョーマだけを連れて部室を出ようとする。

 丸井のことは完璧に無視である。

「幸村酷いっ!」

 叫んでみても幸村が待ってくれるはずはなかった。

 唯一の頼みの綱であるリョーマは幸村に新発売のファンタグレープフルーツを買ってもらい、幸せ

そうに飲んでいた。

 心の中で泣きながら、急いで着替えて二人を追いかける丸井を、残りの立海レギュラーたちは憐れ

みを含む眼差しで見つめていた。

 ただ、部活を任された真田だけが、明日はどうなるのだろうかと頭を抱えていたりする。











 バタンッ

「あぁ〜、もういねぇ〜じゃん……。幸村早……」

「遅いよ!!」

「えっ!?」

 校門の方に向けていた身体を声が聞こえた方に向き直すとそこには幸村に引っ張られ帰宅したと思

ったリョーマがいた。その横にはもちろん幸村もいたのだが、丸井の視界には入ってはいない。

「な……んで…?」

「置いて帰った方が良かったっスか?」

 すぐに丸井はブンブンと頭を左右に振り否定した。

「だから、ゲームするって約束したっスよ。まさかもう忘れたんスか?」

「そんなわけないだろが。でも、幸村が……」

 本人が目の前にいるため、言葉を濁すが、リョーマには言いたいことが伝わってていた。

「セイ兄は俺がちゃんと叱ったから大丈夫っス。時間を過ぎなければ文句は言われないよ」

「じゃあ、レッツゴー!! だな?」

「だね」

 しっかりと頷き合うとマンションへと足を進める二人。







 幸村はというと……

『ああ、柳? 僕だけど、明日の練習の丸井のメニューなんだけど、変更するものがあったんだけど

伝えるの忘れたてたんだ。………………。じゃあ、ヨロシクねv』

『了解した。しっかりとやらせておく』

『アリガトウv』

 何やら背中に黒い先が三角のシッポと黒いコウモリのような羽根が見えるのは気のせいなのか?

 幸村の表情はそれはもう楽しそうなものだった。







「セイ兄〜? 置いてくよ?」

 少し先で兄が来ないことに気付いたリョーマが声をかけると、シッポと羽根は一瞬にして消えた。

 まるで魔法のように……。

 そして、いつもの柔らかい空気を纏うとリョーマのもとへ急いだ。

「ごめんね。そういえば今日の夕飯は何が食べたい? リョーマの好きなもの何でも作るよv」

「茶碗蒸しと焼き魚と肉じゃが!」

 間髪入れずに、嬉しさが多分に含まれた言葉が返ってくる。

「じゃあ、それに……丸井は何か食べたいものあるかい? それとも、食後のデザートの方がいいか

な?」

 リョーマに向ける微笑みと同じように見える微笑みを丸井にも向ける。本心は丸井が来ることを許

してしまったことを後悔し、遠慮という言葉を覚えようとしない丸井にも今までとは異なり怒りを感

じているのだった。

「それに炊き込みご飯付けたらカンペキだな。デザートはオレお勧めのショートケーキにしよーぜ!」

「遠いんスか?」

「通り道だぜぃ」

「じゃあ、決まり。セイ兄もいい?」

「うん、もちろんだよ。じゃあ、ケーキは丸井の奢りだね」

「えぇ――!? 幸村の奢りじゃないの? オレ客だぜ、客!」

「事前の約束ならいいんだけどね。突然の訪問なんだから、丸井が奢るのが筋でしょ?」

「うぅぅぅ〜〜……」

「リョーマも美味しいケーキ食べたいよね?」

「当然」

「……分かったよ、分かりました。オレが奢ればいいんだろが!!」

 鞄の中から引っ張り出してきた財布の中身を確認しながら、今月はお菓子をセーブしなければと人

知れず泣いていた。











 幸村の家に行かなければそんなことにはならないのだが、今言えば確実にリョーマにすねられる。

そしてリョーマが拗ねれば幸村が怒る。幸村が怒ればリョーマと遊ぶチャンスがもうないかもしれな

い。

 テニス以外では足りない脳みそをフル活動させて予想を弾き出した。



(そんなのダメだ――!!)



 ということで丸井は渋々ながら今月の贅沢を諦め、これから先の楽しい未来を選んだのだった。

 といっても、丸井が自分でそう思っているだけ。

 何せそれを叶えるために立ち憚る敵は幸村精一なのだから。

 表向きは真っ白だが、本性は真っ黒な幸村は既に手を打っている。

 それに気付かない段階で負けが見えているのは気のせいなのだろうか?











      −N E X T−  −B A C K−



   ◆◆コメント◆◆       まだ進まない(^_^;)       ブンが好き勝手に動くせいで、幸村がもの凄く黒くなっていくのは       気のせいではないでしょう。       益々不二にそっくりになってくるのは最初にはまったCPが『不二リョ』       だったからなんでしょうか?       次は、次こそは間違いなくマンションに行くはずです!!    2005.03.31 如月 水瀬