「到着!」
「はぁ〜。相変わらずでっけーマンションだなぁ」
15階建てのマンションの下から上を見上げて毎度毎度感嘆の溜め息をつくのは丸井。
幸村は苦笑するしかない。
いくら感心されてもお金を出しているのは結局親なのだから。
「いつまでそんな所につっ立ってるつもり? 荷物もあるし、早く夕飯の準備しないと遅くなるよ?
いらないなら好きなだけそこにいたらいいけど」
もう本日何度目になるのか分からない冷たい微笑みだった。
「食べるに決まってんじゃん!」
三人は慌ただしく玄関ホールをくぐるのだった。
ガチャ
「ブン太! 早く、早く!」
待ちきれないとばかりにリョーマは靴も脱がない内にブン太の腕を引っ張り部屋の中へもといゲー
ム機の前へと誘う。
「んな慌てなくてもゲームは逃げねぇって」
ブン太だけを視界に入れ、本来の目的であるはずの自分を忘れたような態度のリョーマ。もう怒り
を通り越して、呆れを感じ始めている幸村だった。ただし、それはリョーマにだけで丸井への怒りは
着実に貯まっていっている。
「……ここだっけ?」
「そうそう」
「あっ! 失敗した……」
「直前でセーブしてるっしょ。何度でもゴーだ! オレも片手くらいは失敗したしぃ」
「っス」
気合いを入れ直すと再度挑戦。
けれど、丸井の言う通りなかなか難しいらしくゲームをし慣れているリョーマでもなかなか成功し
ない。
「…………よしっ!」
両手まではいかなかったが、両手近くまで繰り返して無事成功。
リョーマは満面の笑みだ。
「やったぜぃ!」
自分のことではないが、丸井もすぐ隣で自分のことのように喜びを分かち合っていた。
もちろん勝手に。
「ご苦労様、リョーマ。ご飯出来たから、一端手を止めようね」
丁度良いタイミングでエプロン姿の幸村が二人を呼びに来た。
キッチンの方に顔を向けると今までゲームに夢中になって気付かなかったが食欲をそそる美味しそ
うな匂いが漂っている。
「うっわ!? 旨そう」
「俺、皿だすね」
「じゃあ、お願いするね。で、丸井はつまみ食いしない。今から皆で食べるんだから」
視線は完全にリョーマにしか向いていないのに、三年間の付き合いのせいか見事に丸井の行動を言
い当てていた。
「…………まだまだだね」
リョーマは丸井に呆れたような視線を向け、口癖になっているお馴染の台詞をプレゼントしたのだ
った。
幸村お手製の夕飯をキレイに平らげた三人が次にすること。
それはお風呂。
丸井がまただだをこねだしたようだ。
「リョーマ、風呂一緒に入ろうぜ! な? な?」
「ヤダ」
「即答かよ……いいじゃんか、風呂くらい」
「お風呂だから一人で入るの! でないとゆっくり出来ない!」
「むぅぅ……」
「丸井、膨れっ面しても駄目なものは駄目。早く一人で入っておいで。後にリョーマと僕が控えてる
んだから」
一人でという言葉を妙に強調していたのは気のせいか?
深く考えてはいけないことだった。
そうして丸井は渋々ながら一人で風呂場に向かうのだった。
「……可哀想だったかな?」
「リョーマが気にすることじゃないよ。もう中3なんだから一人で入るのが普通なんだから」
「……じゃあ俺たちは?」
「僕たちは兄弟だからね」
「……そーゆーもの?」
「そうだよv」
この場に丸井がいれば、違うだろっ!!というツッコミが入っただろうが生憎彼はお風呂。
幸村の天下である。
まあ、所詮丸井がいたとしても結果は変わらないだろうが。
何せ幸村とリョーマは生まれてからの付き合いであり、兄弟という切っても切れない血縁という縁
がある。けれど違う立場なら他人である丸井が有利なのだが、当の本人たちはまだ精神的にも肉体的
にもお子様なため、友人以上の感情というものは無意識に除外されていた。
だからこそ、幸村もまだまだ安心していられたりする。
最近危ないような感もあるのだが……
まだまだ夜は序の口。
次は何を仕出かすのだろうか?
−N E X T− −B A C K−
◆◆コメント◆◆
はい。ということで5終わりです。
彼は次は何をやるのでしょうか?(←オイっ!)
この長編、プロットなしで書いてるため、本当に展開が分かりません(死)
いきあたりばったりです。
どこで終わるのかも未定……
どうしよう?(←一体誰に聞いてるんだ?)
幸村はリョーマに対して何を望んでるのかも微妙になってきてます(-_-;)
ブラコンのままで終わるのか、それ以上なのか……
何とかなることを祈って(^_^;)
2005.04.10 如月 水瀬