2 「火影様、入りますよ。」 飄々とした態度で執務室に入ってきたカカシに火影はため息をついた。 「相変わらずじゃな、カカシ。」 生意気な態度は幼い時から変わらない、うんざりと諦めるように一人呟くと火影は表情を改めた。その顔はやはり偉大なる長の表情をしている。 「ナルト達への指導は評価している。多忙なところ悪いが、今回は上忍であるお前に任務を頼みたい。」 自然とカカシの表情も険しいものへと変わる。 「ランクは?」 「A…といったところかの。」 「あなたにしては妙に歯切れが悪いですねえ。」 ややこしいことになった。カカシは心の中でそう結論づけた。高ランクの任務なのに火影の言葉のあいまいさは どうしたことだろう。何か裏があるに違いない。 「オレは暗部抜けたはずなんですけどねえ。この任務、単独任務ですか?」 火影に尋ねると、火影は首を横に振り否定した。 「いや、今回の任務はツーマンセルで行ってもらう。本当はもっと人数を割きたかったのじゃが、他も人手が足りん。 お前ともう一人であればツーマンセルで十分だと判断した。」 「へえ。それでもう一人は?」 アスマかガイのどちらかだろうとぼんやりと考えていると、音も無く執務室の扉が開いた。続いて若い男の声。 「失礼します。」 カカシが嫌っているイルカの声だった。イルカが扉の前に立つ気配にも気づかなかったとは。上忍にあるまじきことだと カカシの眉間に皺がよる。 「お前も知っているじゃろう?うみのイルカじゃ。こやつをお前のサポート役として連れて行け。」 「お言葉ですがAランクに中忍…しかもアカデミーのイルカ先生を連れて行くのは如何なものかと。」 内心の動揺と不快感を押し殺してカカシは答えた。Aランク任務を引き受けるのは基本的に上忍だ。ましてや火影直々の命ということであれば、Sランクに格上げ になる可能性さえある。それを中忍を連れて行けというのか。 「…お前のような上忍が中忍をこのようにSに変わるかもしれんようなAランクに出すのに不満があるのは分かる。しかしわしが大丈夫じゃと判断した。 イルカとてAランクを幾度と無く遂行している。お前の足手まといになるようなことはない。」 そうキッパリと言われると断れるはずもない。 「あっそ。分かりました。お引き受けします。」 渋々といったふうに了承すると、黙って任務説明書を受け取る。イルカの方に目をやると、イルカはうつむき、黙って説明書に目を通していた。 今の会話をどう思ったのか、知るすべはない。 カカシは火影に目礼すると静かに部屋から出て行った。残された火影はため息をついた。 カカシは書類を読みながらナルト達7班の元へ歩いていく。いつかのアスマとの会話の通りになるとは忌々しい。 ゆっくり歩いて盛大に遅刻してやろう。 |