5 Aランクとも思われた任務はあっけないほど簡単に終了した。 小国の主は、自分の身に余るような禁術の書などさっさと始末したいといわんばかりに、そそくさと書を差し出した。 あまりにあからさまな態度に、カカシもイルカもあきれたが、所詮忍びを見る一般人の目とはそういうものだ。接待を受けるのもそこそこに 二人は城を後にした。 「さて、あとは本当に抜け忍がこれを狙ってくるか…」 書を手で弄びながら、楽しそうに呟くカカシを横目に見て、イルカは、カカシ先生、と言葉少なに咎めた。 「何も無かったら無かったでそっちの方がいいに決まっています。」 イルカにしてみれば、無益な戦いに巻き込まれるのは御免被りたいところだ。かなり憂鬱な気分で受けた依頼だったのだ。出来る限り穏便に終わらせたい。 ここ二日間の二人の関係は実に穏やかなものだった。任務中ということもあって、必要最小限の話しかしないが、案外二人の間に落ちる沈黙は 心地よいものだった。 (…カカシ先生がどう思っているかは知らないけど。) つらつらと所在無げなことを考えている途中だった。辺りに流れる穏やかな風に異臭が混じっていることを、忍びの嗅覚が感じ取る。 「カカシ先生…これって…」 「気づきました?どーも罠臭いですけどね。行きましょうか。」 カカシは気負った様子も無く異臭の元へとスピードを上げる。一拍遅れてイルカも後へ続く。上忍にも負けない速さでカカシの後を追う。 それを横目で一瞥し、カカシは満足そうに口布の下で唇を吊り上げた。 (へえ、なかなかやるねえ。) さすがは三代目のお気に入りといったところか。抜け忍たちがどのレベルの者たちなのかは定かではないが、足手まといにはならないだろう。 「こっちは三代目の気紛れみたいなモンでこんな面倒くさい任務を受けることになったんだ。ちょっとぐらいストレス発散をしてもいいと思わない? もちろん正当な任務として認められているわけだし?」 ささやかな非難の視線を感じなくも無かったが、さらにカカシは茶化したように付け加えた。 わざわざ、罠に掛かりに行くんだ。楽しませてくれなくては。 |