4 里の中心から外れた野原。夜空には満月よりやや欠けた月がかかっている。普段はほとんど人影がなく、 たまにアカデミーの子供たちの演習に使われているだけだ。だが今夜は、格闘技の大会で使われるような闘技舞台 が二つ設けられ、周囲に簡易型の観客席が作られていた。一部の忍びにしか知らされない月夜会の会場だ。 観客と化している忍びたちの間からは、野次とも応援とも取れる声が、時折戦っている忍びたちへと投げられる。 「は〜ヒマだねえ…何でオレたちこんなところにいるんだろ…。試合にも出ないのに。」 アスマは、退屈そうに観客席に座っているカカシをジロリと睨んだ。 「…知るかよ。紅に訊いてくれ。」 そう、アスマとカカシの二人は、月夜会に参加する気などサラサラなかったのだが、無理やり紅に引っ張ってこられたのだ。 「ヒマなら飛び入りで出てこいよ。奴ら大喜びで『写輪眼のカカシ』に対戦を申し込むぜ。」 「冗談。オレは面倒事に首突っ込む気はないんでね。…ガイとアンコがそれぞれ任務で里外に出てくれて、本当に助かったよ。」 もし、二人のうちどちらか一人でもいたら、絶対相手をさせられていただろう。第一、忍術を多用する己の戦闘スタイルは、 このような肉弾戦的な試合には向かない。 「おー、紅頑張ってるな。」 紅が相手の首筋へ回し蹴りを決めたのを見たアスマが、軽く口笛を吹いた。相手は舞台に沈んだ。相手が男だろうが全く引けを取らない。さすが里でも名の知れるくのいちだ。辺りを見回すと、 人数は少ないもののちらほらとくのいちの姿を見つけることが出来る。暗部面を被っている者もいる。 「紅の場合、どーせ賞品の酒目当てでしょーが。」 こうやって紅最強伝説は作られていくのか、とある意味感心しながらカカシが言葉を返した。 紅の戦いぶりを目で追っていた二人は、周囲のどよめきに気づいて隣の舞台に目をやった。 その舞台では、ちょうど一人の男が相手の上忍を倒したところだった。試合の勝ち負けは、相手を戦闘不能にするか、 心臓を覆った陶器で出来た胸当てを破壊すれば勝ちとなる。破壊された時点で負けとなるのだ。 相手を戦闘不能にしてしまうと、翌日からの任務が差し支え、その分余計な負担が自身にかかるので、ほとんどの忍びは 胸当てを狙ってくる。その上忍も胸当てを破壊されていた。悔しそうな顔で、男を睨みつけている。 「あの男…暗部か。」 アスマが冷静に呟く。上忍に勝った男は暗部服に白いストールを羽織っている。顔には動物面をつけており、年齢や表情は窺うことが 出来ない。会場で暗部姿の忍びが見られることは、別に驚くほどのものではない。ただ、何より目を引いたのは、 彼の持つ武器だった。 |