3 翌日。 「……イルカ、大丈夫か?」 火影は書類を執務室へ持って来たイルカに語りかけた。火影が心配するのももっともな話で、イルカの目の下には 隈がくっきりと出来ていた。更にイルカの機嫌の悪さでその原因も予想がついた。 「…どうにかならないんですか、あの人。」 「どうにかしたいのはやまやまじゃが、無理であることはナルトたちの元教師であるお主にはわかっておるじゃろうが。」 息子のようにも、孫のようにもかわいがっているイルカに付く害虫を払いたいのはやまやまだ、と火影は苦い顔をした。 「…それではストレス発散に、月夜会にでも出てみるか?」 「え?」 不意に呟かれた火影の言葉に、イルカが目を丸くする。 月夜会というのは、不定期に開催される里に駐在している忍びたちの武闘大会だ。殺人と忍術はご法度だが武器使用は自由という かなり漢らしいルールを持ち、里の忍びたちのよいストレス発散や技術向上の機会なのだが… 「でもあれって、特別上忍以上の忍びにしか知らされないシークレットイベントじゃなかったですかね。」 「知らされるのは確かに特別上忍以上の忍びたちだけだが、出場資格は特にない。顔を見られるのが嫌なら暗部服を着ていけばよい。」 「…カカシ先生は?」 イルカがなおも疑わしそうに尋ねる。とたんに火影が顔を顰めた。 「あやつがそんな面倒なものに出るはずがなかろう。」 それに…と火影が続ける。 優勝者は賞品として高級酒『木ノ葉吟醸』と山海の珍味、それに木ノ葉のブランド米三俵が贈られるらしいぞ。」 「米俵三俵?」 イルカが反応したのは、最後の一品だった。最近某上忍のせいで消費が早い。失態を演じることになった原因、いや 全ての不幸の元となった高級酒などには見向きもしない。 貰える物は貰っとけ、イルカは半ばヤケだった。 「じゃあ服借りていきますよ。」 思い切ってそう言い切ると、イルカは火影と一部の人間しか知らない奥の隠し部屋へ姿を消した。 |