3 「…誰から聞いたんですか、それ。」 動揺を隠しながらイルカはカカシに尋ねる。 「アスマからですよ。それにしてもイルカ先生否定しませんでしたね。」 「…あなたが入手した情報です。それに間違いがあるはずがない。」 杯を口に運びながら、イルカは苦々しく呟く。言葉にこそしないが、もはや認めたようなものだった。 「さすがにどの部隊に所属していたのかは教えてくれませんでしたけど。最初は驚いたんですが、この前の やりとりのことを考えたら少し納得しましたよ。で、どの部隊にいたんですか?」 「守秘義務です。教えられるはずがない。あなたも分かっているでしょう?」 随分昔のことを引っ張り出してきたカカシに腹が立った。暗部を抜けたとはいえ、特殊であったかつての 所属部隊について話すことは禁じられている。もちろんイルカはカカシに話すつもりなど毛頭なかったが。 「ついでに、薬が効かない理由も分かりましたよ。あなたは進んで薬品分析研究部の試験体になっていた そうですね。開発される新薬などを飲んで耐性がついていたというわけですね。」 「…だから何だと言うんですか。あなたには関係ない。」 イルカは向かいに座るカカシを睨みつけた。にやにやと知ったように笑うカカシが憎らしい。そう思った瞬間 視界がぼやけた。手の中の杯が滑り落ちる。しかしそれは床に中身をこぼす前にカカシがキャッチした。 イルカは机の上に突っ伏した。崩れ落ちそうになる体を何とか支え、カカシを見上げ、睨みつける。体の自由が 利かない。 「…あんた、俺に何をした?」 「駄目ですねえ、イルカ先生。油断してちゃあ…ね?これはイルカ先生が服用したことないやつなんで効果ある はずですよ。」 そう言うとカカシは自由の利かないイルカを軽々と抱え上げ寝室に運ぶ。朦朧とした意識の中イルカは必死に 思考を巡らせた。おそらくグラスに薬が仕込まれていたのだ。自分には大抵の薬は効かないから油断していた。 …まさか自分の過去までカカシが調べ上げるとは思いもしなかったのだ。だが、自分を手に入れるために薬を 盛るような男だ。それぐらいやってのけると考えなかったのは迂闊だった。 ――しかもこの薬は…おそらく相当きつい媚薬だ。意識が快楽へ持っていかれそうになる。 「…この薬を調合したのは、まさか…周防か。」 「おや、ご存知なんですか?まあどうでもいいや、楽しみましょうよ、ね?」 「カカシ先生、これはどっからどう見ても犯罪ですよ…わ、かって…るんでしょうね。」 段々と言葉が途切れ始めたイルカをベッドの上に横たえたカカシは不敵な笑みをちらつかせた。 |