次第に遠くなっていくシンジの声を、あたしは幸せな気持ちで聞いていた。

 何も聞こえなくなるまで。何も見えなくなるまで。何も感じられなくなるまで。

 その胸の温かさと、心地よい声。フワフワと軽い意識の中で、

あたしはシンジの声にうっとりと聞き入っていた。

一緒に何処にも行けなくても、これも案外悪くない。

 幸せというのは、こういうものかもしれないな。

 ふと思ったそれは、黙ったままでいた。

 両腕から力が抜ける、最後の瞬間まで。

















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 電話のベルが執拗に鳴って、マミは跳ね起きた。

 「もしもし、カノンちゃん?寝てた?」

 カタオカからだった。一瞬にして身体の力が抜けて、

マミはベッドに横になったまま受話器を耳に押し当てた。

 「・・・ちょっと横になってました。何ですか」

 「いやね、夕食なんだけど、せっかくだから皆で食べようって事になって、

  先刻部屋まで行ったんだけど返事なかったからさ。

  シノヤマさんに言われた事とか、気にしてる?」

 「・・・別に。疲れただけです」

 「出てこれるかな。夕食。皆ロビーで待ってるから」

 「・・・わかりました」

 食欲は全くなかったが、マミは機械的に答えて電話を切った。






















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