初秋から晩秋へ
| ☆天上の声を聞くかの秋麗に 清々しさと寂しさまじる |
| てんじょうの こえをきかの しゅうれいに すがすがしさと さみしさまじる) |
| ☆隣家との境に白しムクゲ花 季節(とき)交差する一日(ひとひ)に揺れる |
| (りんけとの さかいにしろしムクゲばな ときこうさする ひとひにゆれる) |
| ☆虫たちの綾を織るかの鳴き声に蝉も最後の競演に酔う |
| ☆秋野原渡る風さえ眠る夜の 尾花にそそぐ銅色(あかがね)の月 |
| (あきのはら わたるかぜさえ ねむるよの おばなにそそぐ あかがねのつき) |
| ☆残り穂の里田に入日滲む頃 噴水さながらイナゴ飛び交う |
| ☆空よりも青き竜胆碑に挿しつ 秋はあるやと亡親(おや)に訊ねり |
| (そらよりも あおきりんどう ひにさしつ あきはあるやと おやにたずねり) |
| ☆夕暮れに爪の形の月見れど 葉の一片も照らさで消ゆる |
| (ゆうぐれに つめのかたちの つきみれど はのひとひらも てらさできゆる) |
| ☆夕映えに朱衣纏いウロコ雲 鰯にあらず鯛の群れかな |
| (ゆうばえに しゅごろもまとい うろこぐも いわしにあらず たいのむれかな) |
| ☆窓ガラス ツツツとつたう雨雫 一筆書きで秋を深めて |
| ☆里山に暮色滲む頃なれど 野はプラチナに花ススキ輝(て)る |
| ☆里の秋 送りし友の声便り 一年分の話 咲く宵 |
| ☆月影に羽音寂しき名残り虫 衣うつりて夜寒なるらむ |
| ☆神無月 一日一日(ひとひ・ひとひ)に化粧して あるじ待つかな 社のもみじ |
| (かんなづき ひとひひとひに けしょうして あるじまつかな やしろのもみじ) |