Trillium ギターアンプの修理
Trillium アンプを チャンプAA764 回路 に MOD

GAMPS logoTrillium 2x12 combo photo

(c) copy right Guitar Amplifier Manufacturing and Professional Services ギャンプス 2013

Trillium Custom Series 2x12 combo
@【基板を撤去し、ハンドワイアードへアップグレード】
A【Mercury トランスへアップグレード PT, OT
B【WE 復刻版スピーカー・ケーブルへアップグレード】

お客さまからのアンプの不具合とご要望の情報

Trillium のギターアンプ (Trillium Custom Series 2x12 combo )を米国から取り寄せて使っていました。
ある日、音が全く出なくなりました。

ギターアンプのシャーシーの中の回路を自分で覗いてみました。
基板が使われています。搭載されているトランスやコンデンサー部品は高級とは言いがたく、キャビネットの豪華さとはかけ離れています。

基板を外して、ハンドワイアード ( Hand Wired もしくは ポイントツーポイント point to point ) のアンプにしてください。
ハンドワイアードで組み立てる回路は Champ の AA764 回路を希望します。

ハンドワイアードの方法、使用する部品、納期は全て ギャンプスにまかせます。

Trillium Custom series 2 x 12 combo の概要 Fig.1-Fig.6

非常にめずらしいアンプです。キャビネットの外観が美しいです。
トーレックスを使わずに、キャビネットの木部は塗装されています。
白と青色のツートーン・カラーで高級感が高い外装です。
Fig1. がフロントの写真
Fig2. がリアから見た写真です

Note: MercuryMagnetics に対して、当修理作業の結果報告をレポートする目的で、
    写真の解説文は日本語ではなく、英語にしています。ご了承ください。

Trillium custom series 2x12 combo front view and rear view

アンプの回路はシングルアンプです。Champ と同じくパワーチューブ一本の構成です。

フロントの操作パネルは左からパロットランプ、Volume、Treble、Bass、インプット・ジャックの順です。
このアンプ独特のつまみのレイアウトです。 Fig. 3

リアパネルは左からスピーカー端子、インピーダンス・セレクター、AC inlet、電源スイッチという並びです。電源コードが繋がる AC inlet と電源スイッチし1つのプラスチック成型ユニットに収まっています。 Fig.4

キャビネットの下からアンプ部を覗くと、6V6 真空管、12AX7真空管が各々1本ずつと、出力トランス(OT) が見えます。 電源トランスは見当たらず、シャーシーの中に入っています。 Fig.5

Control panel, rear panel, view from bottom


このギターアンプはシングルアンプながら、12 インチスピーカーを 2個搭載しています。
スピーカーには上級クラスの Weber アルニコマグネットの 12インチが使われています。

スピーカーケーブルは撚っていないストレートな( not stranded) Audio タイプが使われています。

mounted speakers, Weber alnico 12 x 2

受け入れ検査の結果

アンプを受け取り、試奏してみると、お客さまのおっしゃるとおり、全く音が出ません。
電気的なノイズも聴こえません。おそらくトランスが壊れています。

そこで Trillium アンプのシャーシー内部の回路を見ました。Fig. 7

外装とスピーカーが高級なことから、さぞ素晴らしい回路であろうと期待し回路を見ました。

a) なんとハンドワイアードではなく基板 ( PCB :プリントサーキット )が使われていました。

b) 電源トランスは小型の基板に直ハンダ付けのタイプの安価な製品です。
  この他にも真空管のソケットも同様に基板に直ハンダ付けのタイプです。
  「音が出ない」問題の原因は、この電源トランスの故障でした。

c) コンデンサー類はオーディオ用ではなく、コンピューター等の汎用回路向けのものが付いています。

「ハンドワイアードに変更してほしい」というお客さまのご要望の背景がよくわかりました。
キャビネットやスピーカーは高級であるにも関わらず、
肝心のアンプの回路がトランスも含めてグレードが劣っていてふさわしくありません。

Mercury のトランスを使い、ハンドワイアード回路で鳴らすのがこのアンプにはふさわしいでしょう。

Circuit view and outer view

ギターアンプ修理の作業内容

以下に順を追って、Trillium ギターアンプの 修理作業・ハンドワイアード化の内容作業の内容を記載します。

1. 基板とトランスの取り外し FIG.8

FIG.8 のように基板と出力トランスを取り外しました。

ポットは基板直付けです。このタイプのポットはCTS のポットと比較すると、寿命が短く、ガリが出やすい特徴があります。当ポットの流用はできません。全て新しい CTS に交換します。

真空管ソケットも基板直付けです。シャーシーにネジ留めする通常のソケットと比べると、真空管の抜き差しの回数が増えたり、強い力で抜き差ししたりすると、基板を痛め、回路の断線が起こるという特徴があります。ソケットも全て新しいシャーシー留めのタイプに交換します。

シャーシーにあけられている真空管用の穴は通常よりも大きく、シャーシーニネジ留めするソケットのサイズに合いません。異なる場所に穴を開けなおす必要があります。
当アンプの整流回路はダイオードであるため、チャンプ AA764にするには 整流菅用の穴を新しく追加して開ける必要があります。

また電源トランスは基板直付けです。チャンプ AA764 回路にするためのマーキュリートランスの PT ( 電源トランス )を新たにシャーシーに取り付ける必要があります。そのための穴も追加で開ける必要があります。

Disassemble process

2. シャーシーへの穴あけ作業 FIG.9

マーキュリーの電源トランスを取り付けるために四角い穴を開けます。ニップラーというツールを使い四角い穴を開けます。 FIG. 9 の上段 2枚の写真

真空管のソケットを取り付ける穴を新たに 3 個開けます。ソケット用の丸い穴は専用のシャーシー・パンチで開けます。FIG. 9 の中段 2枚の写真

これらの新しい穴を開ける際の注意点は以下の 3つです。
A) ノイズや発振を起こしにくい位置関係に電源トランスと真空管を配置すること
B) 後から取り付ける回路部品との相対位置を考え、配線材がなるべく最短となるようにすること
C) 音質の観点とノイズの観点から回路部品の配置が最適になるような位置関係であること
 FIG.9 の下段の写真

Chasssis hole rework

3. 回路ボードの製作 FIG.10

部品を載せる回路ボードの設計と製作をしました。

1) ボードの素材は Fender アンプの修理に使うものと同じものを使います。

2) Champ AA764 回路のレイアウトを設計します。
 Trillium amp のジャックとポットは通常の Fender と左右逆の順番に付きます。
 フェースプレートの文字(Volume , Treble, Bass)をそのまま生かすには、
 回路部品のレイアウトも逆向きに設計する必要があります。

3) レイアウト図を元に、ボードを切断、穴あけした後に、ハンダ付け用のリベットを打ち込み、
 回路ボードを完成させます。
 ボードの下部にある半円形のスリット部分に真空管のソケットが収まるようにしています。
 ソケットと回路部品間の配線材の長さを短くし、発振やノイズを低減する工夫です。

Circuit board manufacturing

4. 真空管ソケット、ジャック、ポット、ランプの取りつけ FIG.11

1) アンプの操作パネルに近い場所にブラス棒でグランド・ポイントを作製します。Ground Point
  真空菅用の元穴は薄いブラス板で塞いでシールドします。Hole Mask
  真空管ソケット 12AX7用、6V6用、5Y3用をそれぞれ取り付けます。Tube Sockets

2) 操作パネルにジャック、ポット、パイロットランプを取り付けます
  ポットは CTS ではなく、Tokyo Cosmos (日本製のポットの中で高品質)を取りつけています。
  理由はTrillium のノブの穴の軸径がインチではなくミリ穴であるためです。
  ノブをインチ軸の別のものに変えてしまうと外観のバランスが崩れます。
  美しい外観をそのまま保つためオリジナルのノブの軸径を生かす工夫をしました。
  パイロットランプも US 製の径の大きいものだとバランスを損ねるため、オリジナルの径に近い、
  小型のミニバルブにしました。
  ジャックは Switch Craft です。
 
3) Tokyo Cosmos のポットはシャーシーに取り付けただけではポットの内部はシールドされません。
  そのため、裏蓋にグランド線をハンダ付けし、シールドします。
  ポットのシールド用グラウンド線は 1) で取り付けた Ground point に接続し、シールドを高めます。

Assemble tube socket, jack, pots and pilot lamp

5.回路ボードの取りつけと回路部品の取り付け FIG.12

回路ボードをシャーシーに取り付けます。四隅にスタッドを立て、回路ボードを浮かせて取り付けます。
次に回路ボードに部品と配線材を取り付けます。
アルミ電解コンデンサーは Sprague ATOM
デカップリング抵抗とSG抵抗は Ohmite セラミック・コンポジション
信号回路の抵抗はカーボン・コンポジション
高圧のかかる配線材は1000V 耐圧のベルデンのテフロンワイアー銀メッキ線
信号回路の配線材は短芯の布巻き線

チャンプ AA764 そのままの音質を引き出すと共に、耐久性と安全性を向上した部品選択です。

Circuit board installation and parts mounting

6. マーキュリートランスの取りつけ FIG.13

まず電源トランス ( PT ) を取りつけます。 MercuryMagnetics FBFCP-M240
次に出力トランス ( OT ) を取り付けました。 MercuryMagnetics FBFCO

Transformer installation

6.スピーカーケーブルの作製と取りつけ FIG.14

WE 復刻版 AIW スピーカー・ワイアーを使い、スピーカーケーブルを作製し、取りつけました。
2本のワイアーを撚って作ります。
端子部には 3M 端子を使いました。
ジャック部には Fender と同じ F-Cap を使いました。

Speaker cable assembly and replacement

7. 最終組み立て FIG.15

出来上がったシャーシーをキャビネットに取りつけ、バックパネルを取りつけて完成です。
元々はシャーシーとキャビネットは木ネジだけで留められていました。
重量の軽いトランスが付いていたため、それで十分でした。
しかし、今回はブラックフェース用のしっかりしたトランスに交換しました。
重量が増えた分、木ネジだけでは外れる可能性があります。
そのため止む無くボルト留めにしました。
追加したボルトは最小限の2本にとどめ、外観に与える影響も少なくする工夫をしました。

試奏を行なうと、 Champ AA764 の音質を再現しつつ、スピーカーx2個とそれを繋ぐ WE スピーカーケーブルの効果により、豊かで厚みのある、ふくよかな音圧が得られています。

final assembly

ギターアンプ 修理内容に対するお客さまのご反応

以下はお客さまから頂戴したメールの抜粋です。
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大変満足しています。
トレブルが良い具合に効きますね。ギラギラせず甘く響きますね。
低音もこもらずスッキリ出るようになりました。
フロントピックアップ好きな私には満足なアンプとなりました。
また何かありましたらよろしくお願い致します。
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