西成ボディ


1.序


 心に残る西成の方は西成スピリッツに任せて、こっちの方は現在の西成、今の西成、生きている西成を書いてみようと思います。


2.飛田

 家を出てまず向かったのが「上海園」西成というところは中華料理屋の多いところでして、質がとても高いです。何軒かいきつけはあるのですがこの日行ったのはここでした。なにを頼んでも量が多い店で、だいたい普通の店の1.25倍ぐらいあります。女性なら一品で十分。男だと一品だけなら微妙なところです。おすすめはなんといっても皿うどん。あげそばの細い奴ですな。皿の上に山盛りで、はりはりとしたクリスピーな揚げ麺の上に野菜たっぷりのあんがかかっています。これを端から崩してやっつけるわけです。あとは食っても食っても減らないちゃんぽんと、焼飯です。ここの焼飯は塩系でも醤油系でもなく、しいていうなら「焦げ系」です。なんか米の一粒一粒が焦げてる感じなんですよね。胃袋に自身のある人は五目焼飯に挑戦してみて下さい。具がたっぷりと入って、てっぺんには生卵の黄身がトッピングしてあります。見るからにうまそうで、実際もトロリとしておいしいです。で、この日食ったのは皿うどんとごはんと野菜スープでした。ごちそうさま。
 さて、ここへ載せる為に、旭ポン酢を2本も抱えて荷物重たい重たいなってるのにわざわざ遠回りして行って来ましたよ飛田。もちろん100%冷やかしです。ホンマにヤってきたんならこんなところにのせられまっかいな。空調病院という怪しげな真っ黒な建物を右手に、ずーっとまっすぐ行って信号のある交差点を渡らずに遊郭の中へ。

「にいちゃん付けて付けて〜」
「にいちゃん、これ、ほれ、付けたってよちょっとだけ」
「にいちゃんおいで〜こっち来(き)いな〜」

遣手婆がにぎやかに声を掛けてきますがこっちは100%冷やかし。中にいる
妓の顔だけチェックしてどんどん先へ。人があまりあるいていませんなあ、ま、このあたりははじっこやし、と始めは思っていましたが中の方へ入っても人の増える気配なし。金曜の晩でっせ。店はどこもかしこも全開なのに客はほとんど歩いていません。お陰でこっちへの呼び込み攻撃が激しくなるばかりでした。妓は綺麗な人結構多いですよ。びっくりするほど綺麗というか、ときめいてしまうような妓もいます。少ないながらも周りにいる客はほとんど本気で買いに来てる訳で、冷やかし上等の僕などは何となく優越感というか、冷静に周りを見られるのでちょっと高見にでもいる感覚でしたね。そう、難しいレースだと判断し「見(賭けないこと)」してレース見ると周りにいるおっさん達が真っ赤になってギャーギャーいうてるのが面白く冷静に見られるでしょ?あれと丁度同じ感覚ですわ。いうても

参加してる方が面白いに決まってるんですけどね

 ちゅうわけで飛田行ってきましたけど花の金曜夜の花街なのに人いませんでしたねえ。店は開いてるのに、大丈夫なんかいな飛田。こうなったら嫌々ながらちょっと飛田救済の為に立ち上がらんといかんな!

ま、どこを立ち上げとるんやっちゅう話ですが。



2.近年のたこ焼き考
 たこ焼きの元祖というのは、知っている方も多いと思うが、西成は玉出にある「会津屋」である。元々は橘(花園町に近い)にあった。近所だったので子供の頃はごくたまに連れて行ってもらった。子どもながらに「ここのたこ焼きは他とは全然違う、おいしい!」と思ったものだ。醤油で完全に味付けされているからそのままで十分おいしい。どうしてもソースを、というひとは備え付けのソースをほんの少しつけるといい。風味が変ってこれもひとつの食べ方だ。ただし、確かにおいしいが味に比例して値段も他と比べるとやや高い。ごくたまに、というのはその頻度を表している。高いからおいそれと連れて行ってもらえるわけではなかったのだ。さて、現在その会津屋は変らぬおいしさをキープしつつ現在に至っているわけだが、その値段は15個500円である。100円分に換算すると3個100円である。
 この会津屋はとてもおいしいことはおいしいのだが、人にたこ焼き屋を紹介する場合、僕は会津屋ではなく、花園町の「一富久」という店を紹介することにしている。というのは、ここのたこ焼きは「普通のたこ焼き」なのに、おいしいからである。会津屋のたこ焼きというのは、絶対によそでは味わえない、会津屋にしかない味なのだが「一富久」のそれはソースをふつうに付けてたべるいわゆる「ベタ」なたこ焼きなのである。それなのにおいしい。ソースをつけてもいいし店内メニューの「ねぎのせ(単に小口切りのネギがたくさんのっているだけ)」を三杯酢で味わってもメチャうまい。究極の「普通のたこ焼き」なのである。例えれば会津屋のたこ焼きは「天才」一富久のたこ焼きは「秀才」と言えるかもしれない。この両方を人に紹介することもあるのだが一富久の方が評判が良かったりする。よく知っているたこ焼きに近いというのが影響しているのだろうか。値段だがここは12個で300円。100円分に換算すると4個100円である。
 さて、西成というところは大阪の代表的な下町なだけあって、そこらへんにたこ焼き屋が林立している。いわゆる「窓があればたこ焼き屋がある」という状態である。だからという訳ではないのだろうが、ある程度の相場というか経済意識というのができていて、先ほど紹介した2店
を凌駕する味を出せないのは分かっているから、それ以上の値段はつけないのである。味と値段の格付けとして、

たこ焼きの元祖    3個/100円
究極の一般たこ焼き  4個/100円

この値段は侵すべからざる領域なのだ。つまり、自分の店のもつ実力、人気と相談して値段を設定する。

多少腕に自信のある店 5個/100円
普通の店だと     6個/100円

中には別に悪い味でもないのに7個/100円という驚異的な値段を設定している「かしはら」というありがたい店(ここはお好み焼きも安い)もあるが、大体平均して5.5個/100円というのが西成の相場なのではないだろうか。

 僕はそういう意識を持ち越したまま高槻へ来てしまったので、たこ焼きを食べられなくなってしまったのだ。なんでって、そんじょそこらで喫茶店が片手間でやっている店が平気で

8個/300円

などという馬鹿げた値段を付けているからだ。会津屋のレートを上回っている。それがまた潰れもせず、これまたうれしがって食うとるんだわ高槻市民が。これは高槻に限ったことではない。派遣社員という生活上色々な町へ行くが似たような値段設定である。頭に来る。バブルがはじけ、20年かそれ以上前の時代程度まで物価が下がっているというのに、たこ焼きだけはバブル絶頂期からまだ更に値上げを続けているのだ。経営者は笑いが止まらないに違いない。たこ焼き屋は全てぼっていると言っても過言ではない。
これは怒り持て立ち上がるべき事象である。みんなでたこ焼き食わないでおこう!
 高槻に越してから、僕のたこ焼きエンゲル係数はほぼ0になってしまった。世間の反省を問う。


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