邪念入りプレイ記録 その10

7日後のロッカ
7日後のエスカーレ
「クァン・リー降臨」


会話ばっかり記録してます。バトル無し。(笑)
省略したくなかったので。




7日後のロッカ
「ついに7日になってしまったな…」
ロッカの食堂。重苦しい空気の中、ウルクが言葉の先陣を切る。
「あのエボルの言ってた、『クァン・リーの降臨』ってやつは本当に起きるのか?エスカーレにいるって話だが、どこにどうやって隠れてるんだ?そんなもの、どこにも見当たりやしねえのに」
「確かにな…そんな変なバケモノなり、機械がいれば、すぐにわかるはずだろうに。それに降臨したら、いったい何が始まると言うのだ?さっぱりわからん…」
ブランドルの疑問にジェイドが追って答える。
「ねえ、だいたいクァン・リーって、本当に悪いやつなの?そいつが何をするのか、ぜんぜんわかんないよ?」
ミャムの疑問ももっともで、ルティナもそれに続く。
「クロイツはそいつとまだ戦うつもりらしいが、だが、どうやってだ?まず見つけなくては戦えはしないぞ」
そして、エヴァンの言葉が決定打。
「行ってみなけりゃわからないな。エスカーレに行って確かめるしかない!」

さらに各人と雑談。
まずはジェイド。
「『世界を統べる』か。つまり…世界のすべてを統一することを定められた存在なのか?クァン・リーは…」
「そうなんじゃないのか?クロイツもバカなもんを欲しがったモンだぜ!そんなもの…人間に扱えるわけがないぜ!」
渋い顔のエヴァン。
「む…しかし、納得がいかん!人間どころか、世界のすべてを統一するなどと、そのような絵空事を実現できるわけがない。だいたい、意味がわからん!世界というものは元来調和のとれたもの。これ以上どう『統べる』というのか…!?」
「それをやっちまうのがクァン・リーなんだろ?なんせ『究極の生命』らしいからな、やつは…。…そいつがなにをする気なんだか知らないが、勝手なことはさせないさ。させてたまるもんか!」
強い口調のエヴァンに、同調するジェイド。
「究極の生命などと、ハッタリに惑わされるものか!なんとしてもその真実の姿をこの目で見届けてやる!」

ミャムちゃん、相変わらず重苦しくありません。
「ねえねえ、50年前からクァン・リーはエスカーレにいたってこと?あの街のだれかが…クァン・リーってこと?」
「そんなのわかんねえよ…人間の姿をしてるかどうかもわかんないし、エスカーレに行って確かめるしかないさ!」
ミャム、笑って言う。
「あたし、クァン・リーが人だったらいいなぁ。50年も街で暮らしていたら…もしかしたら、すっかり人間になっちゃってるかもしれないモン。フツーに50歳のオジサンになっててさー、悪いことをしようなんて思わなくなってるかもよ。だったら、あたし…いいなぁ」
その言葉に和むエヴァン
「…ああ、そうだな。そうだといいな。だけど『もしかしたら』ってこともある。準備だけはしっかりして行こうぜ」
「ん。わかってる。言ってみただけ。ホントはもう戦いたくないけど…でも、なにもしないのはもっとイヤなの」
…やっぱりチームで唯一の癒し系だよ!

ティト、まだ不安そうだね。
「これからエスカーレに行くつもりなの…?」
「…ああ、すぐにでも出発するぜ。ティトも準備だけはしておいてくれ!」
「今度はなにが起きるのかな…精霊暴走よりひどいこと…なのかな。きっとそうだよね…」
暗い表情のティトに返す言葉が思いつかないエヴァン。
「ティト…」
「…ふふ。そんな心配そうな顔をしないでよ。ぼくは大丈夫。もう怖いなんて言わない…」
ティト、笑ったよ。なんか強くなったね。
「エスカーレに行くときはぼくも連れてってよ。何ができるのかわからないけど…ぼく、最後までこの目で見たいんだ!」

カーマイン姐さんもちょっと落ち込み気味でしょうか?
「ね、クァン・リーってヤツは、生物の究極の進化形態ってヤツでしょ?いったいどんなカッコしてんのかしら…?そもそも本当にエスカーレにいるの?いくら探してもそんなやつはいなかったわよね。ねえ、本当に今日が『降臨の日』なの?」
「おいおい、いっぺんに聞かれたって答えられねえよ!ま、ひとつずつ聞かれたって一緒だけどさ…」
「…そうよね。聞くだけムダよね。アタシたちって、ホントにまったくなんっにもわかってないんだもんね…」
あれ、なんかいつもより元気ない?
「アタシたちのやってたことって、なんだったんだろうね?なにもかも50年前に決まっていたなんて…」
「なんだよ、らしくないぞ。やることはまだ残ってるんだぜ?ここで弱気になってどうするんだよ?」
「うん、わかってる…言ってみただけよ。そうよね。これからが本番よね。強気ね、強気…よし!」
やっといつものカーマイン姐さんに。
「エスカーレへ…行こっか!今までだって、なんとかなったんだもの。今回だって、ハッピーエンドに決まってるわ!」

ブランドル…何か考え事してる。
「おまえ、どうするよ?もし10年もかけてやっと掘り当てた宝箱が、いざ開けてみたら『ハズレ』って紙切れ1枚だけが入ってたら…」
「なんなんだよ、それって何のたとえだ?ん?もしかして…クロイツのことを気にしてるのか?」
「…あの人は『力』を手に入れるために、なんもかも犠牲にしてきたんだろうさ。自分も他人もなにもかもな…。それがどうだ?やっと望みがかなったかと思えば、宝箱は50年前から空っぽだったわけさ」
「そんなこと聞きたかねぇよ!」
即ツッコミのエヴァン。
「…ああ、わかってるって。中佐のやったことは許されるこっちゃねぇ。今のはホンのひとり言だ。忘れてくれ…」
忘れろって…。ブランドルもクロイツのことを整理するのは重荷なんだね。上官だったしね。
「おうエヴァン、そろそろ行こうぜ。遺跡からはなにが飛び出したんだか知らないが、始末はおれたちでつけようぜ!」

ウルクも相変わらずのストーリーテラーだね。(笑)
「きょうで7日目か…。あっという間だったな…」
「…ああ、きょうがエボルの言ってた『クァン・リー降臨』の日だ…」
「なんの手がかりもつかめぬままその日が来たか。…まあやるべきことはやった。そう思おう。今さらどうあがいても始まらぬ…」
うーん、仕方ないよね。本当に何があるのか情報無し。
「そうだな、なにが起こるかなんてわからない。けど…逃げるわけにもいかないんだ」
「さて…わしらはこの結末を確かめねばならん。何にしても最善を尽くすことだ」

ルティナも変わらず、てか変わりようが無いけどね。
「さて、いよいよか…。それでおまえ、これからどうするつもりだ?」
「どうって…そりゃエスカーレに行くさ!今日は7日目なんだ。エボルの言葉が本当なら、クァン・リーが姿を現す日なんだからな!」
何か言いたげなルティナ。
「…おっと、わかってるさ。『クァン・リーを見つけて、それでどうする?』って言うんだろ?そいつがホントに現れるのかとか、どういうカタチをしているのかとか、わかんないことだらけだってな。けどそいつがもし悪いことをするんなら…、おれは全力で戦うぜ!もちろん、あんたたちといっしょに、だ!」
「…わかった。ひとまずはおまえの言う『悪いこと』の基準があたしと同じであることを願っている」
相変わらず言葉は慎重だね。でもルティナもやることはエヴァンと一緒なんだよ。(笑)
「こうも予想外のことが続くとは…いや、すべて古代人の決めたとおりなのか?結局はおまえのカンを信じるほかないだろうな」


ロッカの村ではみんなのんびり。
ウェイトレスのウェンディちゃんは大あくび〜。
「あ、エヴァンさん。いつの間に〜?ごめんなさい、ウトウトしちゃいました〜」
「ん、いいよ別に。用があるってワケじゃないんだ。気にせずノンビリしててくれよ」
「ふぅ〜最近軍人さんも来なくなったし…なんだか平和ですね〜」

道具屋の奥さん、洗濯日和ですねっ!
「きょうもいい天気ですね。これまでは『暴走の月』に入ってそれどころじゃない時期だったのにねぇ。みんなエヴァンさんたちのおかげよね。こんな日がこれからもずっと続くなんて、ふふ…なんだかウソみたい…! …?どうしたの?なんだか元気ないわねぇ。あ、もしかして、あたし、うるさかった?」
「…あっ、ち、違うって!そんなことないさ。ちょっと考え事をしてただけさ」
「いいえ、いいのよ。でも…ホントに最近元気ないわね。なにか困ったことでもあったの…?」
うーん、なんて言ったらいいんだろ?
「…なんでもない。いたって順調さ。あとちょっとで、ぜんぶ終わるんだ。だからもうちょっと協力してくれよな」
「協力?もちろんよ。できることがあったら、なんでも言ってね。なんだってやりますからね!」
ありがと、ホントにいい人だなー。

道具屋のガキンチョ、いつも通り遊んでるけど…。
「兄ちゃんたち、このごろおかしいぞ、なんでずーっと村にいるんだ?なあ、悪いヤツってもう捕まえたのか?」
簡単に説明できない事態なんだよなー。
「ん?…実はきょうが約束の日ってやつなんだ。悪いヤツとの…さ」
「約束?なんだソレ?捕まえるって約束でもしたの?…変なの」
「50年前からずっと決まってたことらしいな」
ホントに変なの…。

ジアステにも話してみたり。
「なんじゃなんじゃ、元気のないツラをしおってからに…」
「そうはいっても…これから何が起きるのかわかんねえんだぜ?」
「そんなことはあたりまえじゃ!次に起こることがわかるわけはないのじゃ!自分の目でしっかと確かめるしかないのじゃ!」
「ああ、…そうだな!おれたちは確かめてくるさ!」
こんな適当なおっさんにも励まされるなんて〜。
「次に起こることがぜんぶわかったら、つまらんではないか!」
あれ?(笑)

装備室の管理人、情報をくれる。
「警戒中のエスカーレに行こうっていうなら、列車が動いてないから、自分の足で行くしかないよ、気をつけて!」
そーなんすか。

外の地導師のおばちゃん
「また遺跡でなにか起きましたね…。地脈が乱れてしまって、ジオゲートは向こうから開けないと使い物になりませんね」
ああ、またっすか?(泣)

そーゆーわけで。エリアマップからエスカーレへ…



7日後のエスカーレ
最初にエヴァンが立ってるのは、下町側の駅前。

駅の出口前すぐの場所、警戒中の兵士。
「あやしいやつはいないか…そう思ってジロジロ見てると、街の人に嫌われるし、どうしたものか…」
「疑いの目で見ずに、ふつうにやればいいだろ!50年前からいたハズのクァン・リーが、すぐに見つかるってもんでもないだろうさ!」
「ジロジロ見てても、いつもと同じ人と風景以外ないしな…」
…そうなのね。やっぱりいつもと変わらないエスカーレなんだね。

都会に憧れてるお嬢さん。
「ねえねえねえ!いったいなにが起きるっていうのよ!クァン・リーってなんなの?」
「クァン・リーだって!?あんたどうしてその名前を知ってるんだ?」
「クァン・リーって名前なら、みんな言ってるよ。でも…なんなの?怪獣の名前だとか、死神の名前だとか、そうじゃなくて伝染病の名前だとか、みんな言うことバラバラなの!」
あーそういうウワサになってんのか。
「クァン・リーがなんなのか、おれにもよくわかってないんだ。たぶん歓迎したくはないヤツなんだろうけど…」
「正体もわかんないんじゃ、よけい怖くなるじゃない…」

駅前のもうひとりの兵士。
「クァン・リーだかなんだか知らないが、こんなに警戒しなくちゃいけないシロモノか?これじゃ戦争が始まるみたいだよ」
「あの遺跡の中で育てられてたんだ…。クァン・リーがどんな力を持ってるにせよ、戦争くらいに考えてた方がいいな…」
「クァン・リーか…。突然だし、変じゃないか。なんで50年前に姿を現さなかったんだ?」
姿を現さなかった…のかな?今となってはそれも疑問…。

駅前のおっさん
「いったい、いったい、いったい、うううっ、なにが起きるんだ…頼む、教えてくれ!」
「なんだよおっさん、ちょっとは落ち着いたらどうだよ?」
「これが落ち着いていられるか!あんたは知らんかもしれんが、もうすぐ大変なことが起こるんだぞ!」
いつも以上にオロオロしてるね。
「なにが起きるっていうんだ?おっさんはどこまで知ってるんだ?」
「それは、つまりだな…説明のしようもないくらい、それは大変なことが起こるんだ!」
「それってつまり…なにが起きるかわかんないまま、とりあえず騒いでみてるだけなのかよ?」
「し、失礼な!何が起こるかくらい…わ、わからないがとにかく大変なんだ!ああどうしたらいいんだ…何が起こるかわからんが、とにかく心配だ…」

エンシャントギアオブジェの前に、ディーネがいる。
「クロイツ中佐は、もう総指揮官からは解任されたけど、行方知れずのまま…」
「あいつがどこに行こうと、そんなのはどうでもいい!今はクァン・リーだ…。やつはどこにいるんだ?」
「クァン・リーがこの町の中にいるとは思えないし、それにこのエスカーレにクァン・リーはほんとうに現れるのかしら…」
探しても出てこない…のね。今は平和すぎるエスカーレ。

T字路の角で警戒中の兵士。
「街中の人間がクァン・リーについて勝手なことを言っているんだ…。いい加減なことからゾッっとすることまで」
「たぶん本当のことを知ってるのは誰もいないんだろう…。」
ん?あれ?
「待てよ?確か変なことを言ってるのもいたな」
「見えないだけでいるに違いないとか、50年前に何か見たとか、遺跡で取りつかれたとか…」
そんな人が何人かいたねぇ?

民家1のお嬢さん。
「うちのおじいちゃんたちって、ホントにすごいのよぉ!怪物が来るとか戦争になるとか、そんなウワサばっかりなのに、すっごく落ち着いてるんだから!」
「何が起きるのかわかってないだけだろ。おれもわかってるわけじゃないけど…」
「どっか逃げたほうがいいんじゃない?いくらそう言っても、おじいちゃんたちぜんぜん動かないのよ」
「逃げたほうがいいかどうかだって?それもさっぱりわからないな!用心することに越したことはないだろうけど…」
「おじいちゃんたちが言うには、『なにが起こるにしても、それが運命』だって。なんかカッコよかったわぁ。おじいちゃんやおばあちゃんのためにも、悪いことは起きないといいんだけどね…」
ああ、それは確かにカッコイイや。何も起きないといいよね…。

ひなたぼっこのおじいちゃん。
「これはよくいらっしゃったのぅ。さあゆっくりしていきなされ!」
「のんきだな…。そうのんびりしてられる状況じゃないと思うけど…」
思わぬ歓待だなぁ。
「どうしたんじゃ?暗い顔をされているようじゃが、何か心配ごとかの?」
「うん、まあ、ちょっと…。あのさ、じいさんは心配…してないのか?街の連中が騒いでるからさすがに知ってるだろ?なんかあるかもしれないってさ」
「おう、知っておるさ!しかし騒いだところで、なにが変わるわけでもないじゃろ?たとえなにがあっても、わしらはここでこうしておる!それがわしらの生き方じゃ」
おじいちゃん、やっぱりカッコイイよ。

ひなたぼっこのおばあちゃん。 「こんにちは。きょうは雲が出ていて少しお天気が悪いようですねえ」
「よくそんなこと気にしてられるなぁ…。大変な時だってのに」
深刻な顔から、一転、笑ってみせるエヴァン。
「ばあちゃんに言ってもしょうがないかな?」
「いいんですよ、なにも言わなくて。私たちのことを気にして声をかけてくださったんでしょ?でも心配はいりませんよ。私なら、おじいさんがいればなんの不安もないんですから」
「そうか…。そうかもしれないな。ま、大丈夫さ!おばあちゃんたちが困るようなことは、絶対に起きない…いや、おれたちが起こさせないからさ!」
「あなたが言われるなら、心配はないでしょう。おじいさんと二人、ここでのんびりしています」
ありがと、ばーちゃん。がんばるからさ。
「お天気になるといいですねえ。なんだか空が暗いような気がして…」

階段の所で遊んでいる女の子。
「どうしたんだお嬢ちゃん。大丈夫かよ、顔色が悪いぞ?」
「あのね…ええと…よくわかんないんだけど…。…コワイのよぉ…。オトナのひとたちが言ってたよ、なんかひどいことが起こるって。あたしはコワイのよぉ…。それになんか頭が痛いの。ズキズキしてやな感じがする…」
どうしたんだろうね。でもホントに何が起こるかわかんないし。
「カゼでも引いたんじゃないのか?悪いことは言わないから、家に帰ってた方がいいぞ?」
「うん、そうする…だいじょうぶ、もうちょっとしたらおうちに帰るから」

港の前で警戒中の兵士。
「住民の安全を考えて、万全の警戒態勢をとらせたものの、いったい何を警戒すればいいのやら…」
うーん、どこから来るかもナゾだしねぇ。
「わからないな…。何も起きないってことだけは無さそうだけどな」

港の前のおっさん。
「なあなあ兄ちゃん、教えてくれよ。頼むよ、頼む!みんななにを騒いでるんだ?」
「おっさんはなんにも知らないのか?まったくノンキというかなんというか…」
「う、そうなんだよ〜。みんなオレのことがキライなのかな?なんにも教えてくれねえんだよ〜。なにが起きるんだ?ん?ひょっとしてこの世の終わりってヤツか?」
「終わりなんか来ねえよ!本当になにが来るかはわからないけど…。終わりになんかさせてたまるかよ!」
「へへへ。ホントかい?オレ、あんたのことを信じるぜ!」
さんきゅ。
「そういや、この前からずっと海の色が灰色に見えるんだよな…不吉な前兆…ってヤツかなぁ?」

市場…には人が全然いないぞ!?
はしけ前の疑り深いおにいさん。
「ちょっとあんた…あの話ってホントのことなのかよ?クァン・リーってヤツのことだけど」
「ん?クァン・リーがどうしたって?」
「おいおい隠すなよ、白々しいぜ。あんた、クァン・リーのあの話だよ。クァン・リーって化け物がもうすぐ現れる。で、そいつはなにに化けているのかわからないっていうんだろ?て、ことは…誰かに化けてもうこの街にいるって、そういう可能性もあるわけだろ?」
「どこで仕入れた情報なんだか…。だとしたらなんだよ?」
「だったら…つまりだな、あんたがクァン・リーってことも…。いや、なっなんでもないんだ!」
あははは。疑り深いねえ。でもホントかもしれないし。
「つまり、このオレがクァン・リーって可能性もあるわけだよな…。いや、それはないよな、さすがに…」

はしけ前で警戒中の兵士。
「まったくここは危険だといっても、どうしても動いてくれやしない。まったくガンコな人が多くて困りますな」
「人間は自分が生まれ育った場所が好きなんだよ。訳のわからないことで、どっかに行けって言われても、納得できないのさ」
そうなんだよね。軍隊は仕事だけどさ…住んでる人たちにはね…。

魚屋のおばちゃん。
「はぁ、ホントにまいったよ…。街がたいへんなことになって、商売どころじゃないよ、まったく」
「まったくだな。街には兵隊がうろついてるし、この場所もなんかさびしくなったな…」
「ウチの息子も実家に帰したんだ。軍隊はなんにも言わないけど、なにが起こるかわからないし…。あたしはとりあえずこうやって商売を続けてるけど、いつまでできるんだか」
「大変だな、いろいろ…。でも悪いことはいつまでも続かないよ、きっと!」
「そうだよね!そう思ってもうちょっとがんばろうかね」
気を取り直して商売!だけどやっぱり元気にならないね。
「なんかね、最近頭痛がひどいんだ。カゼを引いたわけでもないのに、変なんだよねえ。なんか嫌な感じばかりするのさ…」
…また頭痛か。どういうワケだろう?

港の桟橋の兵士。
「まったくガンコなヤツばかりだ。ここはただでさえ波で危険なのだと言っても、まったくわかってくれないんだ」
「何が起きるのかハッキリしてないんだ。ムリに立ち退かせることもないんじゃないのかよ?」
「こんな船の上がそんなにいいのか…よくわからんヤツだ」
軍人さんも悪くしようとして言いたいんじゃないのはわかるけどね…。

港の桟橋の漁師さん。
「う〜ん、漁には出られるようになったものの、客がろくに来てくれないってのは困ったもんだよな…」
「何が起きるかわからないって不安の中じゃ、食欲も湧かないってことなのかな…」
「クァン・リーとかいう怪物が来るとか、地震が来るとか、騒ぎになっちまってるせいだな…」
「何が起きるのか、何も起きないのかも…。どうもそうは思えないんだ」
「まあどうでもいいことさ!こちとら漁師なんだ!漁に出られるなら、漁を続けていくだけさ!」
うん、ムリせずがんばって。日々の生活も大事だし。

タル酒屋の客引き。
「お願いしますよぉ〜、寄ってってくださいよぉ〜。お客が減って困ってんですからぁ〜」
「おいおい、よしてくれよ!もうそんなヒマなんかないって」
「安くしときますから、ね!変なウワサが広まったもんだから、常連以外お客がゼロなんですよ」
「変なウワサってなんだよ?どういう話になってるんだ?」
「ク?クァンンカン?とかいう怪獣が、街を襲ってくるとか?いや、よくわかんないんすけど」
そりゃ面白いウワサだなぁ。他のウワサも聞いておきたいぞ。
「さあさあ!エスカーレいちばんの優良店!こんなときこそ楽しんでいきましょうよ!!」

タル酒屋、店内。
タルガールも相変わらずだわ!
「は〜い!エスカーレで1番の社交場、タル酒屋へようこそ〜!ごゆっく〜り楽しんでいってくださいね!」
「とてもそんなことをしてるヒマはないんだけど…ま、ちょっとくらいならいいか…」
「お客さんも大物ねぇ〜。外じゃ死ぬの生きるの大騒ぎだっていうのに、こんなところでノンビリなんて」
「ホントに生きるか死ぬかってことになるのかサッパリわかってないんだぜ?用心はしてるつもりさ」
「あなたが来たおかげで、店がもうかるからいいんだけど、せっかくだしゆっくりしてってね」
うん。さんきゅ。
「怪物だかなんかが襲ってきてもしみんな死んじゃうんだったら、それまで楽しんでないと損だものね」

店のマスター。
「いらっしゃいませ、どうぞごゆっくり」
「ごゆっくりって言われても。こんなときだってのに、よく商売を続けてられるなぁ…」
仕事っぷりをしげしげと見つめてしまうエヴァン。
「どうされました、お客さま?私の顔になにかついてますでしょうか?」
「いや、なににもついてないけど…あんたもクァン・リーの話は知ってるだろ?それなのに、ずいぶん落ち着いてられるよなぁ」
「はいお客さま、そんなウワサは聞いておりますよ。しかし不安な顔で商売はできません。こうしてカウンターの中にいる以上、常に変わらずサービスをいたします。それが私どものモットーでございます」
いいね、そーゆーの。
「ご注文がお決まりでしたら、いつでも声をかけてくださいませ」

タルガールに憧れるよっぱらいのおっさん。
「えへへ、もう開き直ったぞ、オレは!悩んでたってしかたないやね。ここは一発ぱーっと騒がないとな!」
「確かになんだかわからないもんを怖がっているより健康にいいかもな!」
あははは、そんなモンですか?
「ところでよ、そのクァン・リーってのはなんだ?外国の軍隊とかなのか、やっぱり?」
「なんだよ、おっさん、そんなことも知らないのかよ?」
「知らないから聞いてるんだって。教えてくれ、なんなんだ?」
「だから、それは…。よくわからねえんだよ。だからおれも困ってるんだ…」
「正体がわかんねえなら…えへへ、やっぱ飲むしかねえか!」
わかっててもわからなくても飲むクセに。

隣のおばちゃん
「うちの父ちゃんにゃホントにあきれたよ。町中が大騒ぎになってるのに、こんなところでノンキにしてるなんてさ!」
「まあ…それだけ神経がズブトイってことで…頼りがいがあるってことじゃないの?」
「クァンなんとかが来たら、人間もイヌもネコもみーんな食われちまうんだろ?やっぱり好みってのがあるから、あたしみたいな美人から食われるんだよ。あー怖いったらありゃしない」
「美人ねえ…いろんな美人がいるもんだよな…いや、なんでもない!」
「あれ?あんた、なに?変な顔してひとのこと見て!失礼な男だねー」
ああ、ゴメンよ。しっかし自信たっぷりなんだよね、このおばちゃん。
「世界が滅んでもあたしはやめないよ。うちの父ちゃんがシッポを出すまで、永遠に見張っててやるからね!」

酔っ払いすぎのお兄さん。
「…ひっく。…っく。がんばれ…も、もうちょっとなんだ」
「おいおい…大丈夫かよ?なに青い顔して気張ってんだよ?」
「金が無いから帰るに帰れなくてずっと飲み続けて…あれから何日たったかなあ」
「おい、ホントに大丈夫なのかよ?顔が真っ青だぞ。医者に行ったほうがいいんじゃないのか?」
「へへへ。問題ない、問題ない。このオレにもとうとうツキが回ってきたんだ。もうすぐこの街に大地震が起きるんだって?えへへ、そのスキに逃げ出せば…オレの勝ち…だな」
踏み倒し狙いか…余裕あるなぁ。(笑)
「うぅ…がんばれ、あともうちょっとのハズなんだ…うっぷ、早く家に帰りたいなぁ…」

タルガールに憧れてるお兄さん。
「タルガールってホント、ステキです。あの美しい姿…。た、たまらない!怪物が来る前に、この気持ちを伝えなきゃ…」
「夢中になってる人間にゃ怪物も怖いもんじゃないってことか…あきれたもんだなぁ」
「ああ、でもでもでも!いざとなってもやっぱり勇気が出ない!教えてください!ボクってダメな人間なんでしょうか?」
えと、
「あっ!答えないでください!ダメなんて言われたら、また勇気がなくなってしまいます!」
「どっちでもハッキリしろよ!」
「この気持ちを伝えるのが早いか、この街が滅んでしまうのが早いか…ううう、悩むなぁ」
悩んでなさい。(笑)

そして、じいさん。50年前のことを思い出そうとして、いつも思い出せなかった人。
「…やっと思い出したよ。キミは『クァン・リー』とはなんだか知りたいのだね?」
「おっさんは何か知ってるのか?クァン・リーってのはなんなんだ?そしてヤツは何をする気なんだよ?だいたい50年前からヤツは何をしていたっていうんだ?誰がそんなことを知ってるっていうんだよ?」
「すばらしいことを…ヒトにはなし得ないことをするために、彼の者クァン・リーは姿を現すのですよ。
『クァン・リーとは、ヒトビトと世界を導く存在なり。満々と霊力を貯えたる存在なり』!」
それって…遺跡の石碑に…。
「…あれ、わしは何を言ったんだ?何を教えてあげていたんだっけ?わしは妙なことを話してなかったか?」
なに!?勝手にしゃべらされた?

民家2の、失業者のおっちゃん
「はぁ…、オレはついてないよ。せっかく牧場の仕事が決まったのにさ。列車は軍が専用にしちまって乗れやしない!」
「それじゃ引越しもできないか…どうすりゃいいんだろうな。軍が警戒を強めるのもわかるけどな…」
「いやいや、引越しどころじゃねえ!ウワサで聞いたんだぜ。なんかとんでもないことが起きるって!あんたはなんか知ってるのか?また大きな戦争でも始まるのか?それとも伝染病のたぐいでも広まってるのか?」
「わかってりゃ教えてやりたいけど…ホントのところは誰にもわかってねえんだよ。何かが起きてみなけりゃな…」
「そっか…そうだよなぁ。妙なことを聞いてすまなかったな。なにが起こってもよ、母ちゃんと息子だけはオレは絶対に守り抜いてみせるよ!」
うん、頼んだよ!がんばってくれよ、おっちゃん。

失業者の奥さん。
「まったく軍隊はバカばっかりだね。旅行は禁止だなんて、横暴もいいとこだよ!怪物が来るとか変なウワサのせいなんだろ?」
「いや、軍の連中がバカばっかりなのはホントだけど…怪物の話はただのウワサってわけじゃないんだ」
エヴァン、笑ってるけど、怖がらせちゃダメだよ。
「え?それじゃホントに怪物が来るのかい?信じられないよ、そんな話」
「怪物かどうかもわからない…なにかが起こりそうなんだよ。心配するほどのことじゃないかも知れない…」
「ウワサはホントなのかね?あんたはウソを言ってるように見えないけど…。うーん、つまりあたしたち一家はどっちみちついてなかったってことなんだね…。失敗したみたいだね…。どうせ引っ越すならもっと早く済ませとけばよかったんだ」

そのコドモ。
「なあ兄ちゃん…。引越しが急に取りやめになっちゃったんだ。父ちゃんは牧場で働くって言ってたのに〜」
「父ちゃんが悪いってわけでもなさそうだぜ。軍が列車の出入りを制限してるせいだな」
「よくわかんないぞ!なんで列車に乗れないんだ?父ちゃんまた悪いことしたのか?」
…また?ってどういう意味だ?(笑)
「おまえの父ちゃんは悪くないよ。ノーチス軍の連中がゴチャゴチャ言ってるだけさ。心配するなよ、きっともうすぐ牧場に行けるからさ。父ちゃんのこと信じて待ってろよ!」
「わかったよ。オレ父ちゃんのこと信じておとなしく待ってる!牧場へ早く行きたかったのになぁ。引越しっていつできるんだ?」
うーん…早くできればいいけどさ…。

軍施設裏口。
いつもの見張り。
「通してもらっていいか?」
「おお、おまえか…。中に入ってもかまわないぞ。ここの警備は用心のためでしかなくなったからな…。この設備のほとんどはもう意味がないからな」
そうなんすか。じゃあ入らせてもらいます。アカピーマン234号以下数名。

えっちらおっちら荷物運びの兵士。
「えっちらおっちら…疲れるけど、こうしてれば怖い考えにならなくていいや。疲れるだけのことにもとりえはあるな…」
「スゴイ気の散らし方をするもんだな!…それだけ街のみんなは不安を抱えてる、そういうことか…」

戦闘機の整備兵。
「おれたち整備兵には警備の任務は来ないけど、何をすることもできないな。戦闘機ももう無くなっちまったし…」
「…ずいぶんあきらめがいいもんだな。それで怖がってないんだったら、いい覚悟だって言ってやれるんだけどさ…」
「探すっていったって…50年前からずっといるのに見つからないヤツなんてまるでナゾナゾだよ」

もうひとり戦闘機の整備兵。
「おれたちは整備兵だから、警備の配置には回されなかったけど、みんなピリピリしてるな…」
「何が起きるのかわからないんだから、それもしかたないだろうな…」
「何が起きるんだかわからないじゃ、おれたちは何もできやしない。でも何かできないかって考えちまう…」
兵隊さん、一般人を守るつもりはあるんだなぁ。

爆弾点検の兵士。
「なんともわけのわからないことだな。いったい本当に何が起きるっていうんだ?あんた知らないか?」
「きっとロクでもないことさ。何だかわかってたら止めてやるんだが…」
「クァン・リー…か。いったい何のことなんだ…?」

軍研究所には、スペクトがいる?
「スペクト…おまえこんなところで何をしてるんだ?」
「何もしてはいない。何もできはしない…。もうワタシにできることは何もないのだ…。クァン・リーの出現も近いしな…」
「おまえにはわかってるんじゃないのか?クァン・リーはどこにいるんだ?なにかてがかりは無いのかよ!」
「人間には思いもよらないところにいるだろう…50年も前からこの街の中にいるのだ。街の人間に聞いてみるといい。ワタシよりも知っているものがいるハズだ…。クァン・リーもキミが探してくれるのを待っているのかもしれない…」
う、そんな…。やっぱりそうなのか?
「ワタシはどこからも、誰からも必要とされず、何をしたらいいのかさえもわからないのだ。あとは静かに消えるとしようか…」
ええ?まだ消えないでください!(とお願いしてもダメ…)

土竜の巣にあった精霊獣を眺めて。
「こいつは土竜の巣にいたんだろうな…。遺跡の奥に行くほどモンスターは強力になった…。つまりクァン・リーの強さは…」

中央施設前の科学士官
「…みなクァン・リーをなぜ怖れるんでしょう。あなたは怖いですか?」
「おまえは知っているってのかよ?ヤツがなんだかわからないから、怖いに決まってるじゃないか!だいたい古代文明の願いってのはなんだよ?クァン・リーは何をするつもりなんだ…きっとロクでもないことに決まってるけどな!」
「いいえ、世界すべてを変えることです…これまで願っても得られなかった理想へと、ヒトを導くことこそクァン・リーの使命です。
『クァン・リーとは天使にして悪魔なる存在なり。調べに心紡ぎ合わせる存在なり』!」
また?心紡ぎ合わせるって、どういう…。
「変だな…まるで自分が自分でなかったような?いったい何が起きたんだ…」
え?この人も操られてた?

高原地区へ向かう…と、直接通れたよ。
門番兵士。
「ここ、通ってもいいのか?軍の施設だろ?」
「もう通行制限の必要も無いらしいのさ。この先に用があるんなら、別に通ってもかまわんぞ」

カギの無い家のおっちゃん?じゃなくて、兵士?
「できるだけ外出は避けて、家の中にいてください。きょうは何が起きるかわかりませんよ」
「それはわかってるんだ…。けど、ここまで関わったからにはおれも最後まで見届けなくちゃいけない!」
ネコ?いないぞ?避難したのかな?

展望台にいる兵士。
「まさかクァン・リーは海の中に50年もかくれていたんじゃないだろうな。うう、なんか海の中ってやつは恐ろしいもんだ」
「いや、ヤツはかくれているんじゃない。そんな気がする。どこかからこっちを見ているような…」
「クァン・リーはどこにいるんだ?目の前にいるが見えないのか?それとも…ああ、さっぱりわからない!」

いつも男の子と家の奥さんがいた場所には、兵士がひとりだけ。
「クァン・リーってなんだろう?そこらに生えてる草がそうなのか?それとも人間そっくりなのか?」
「そんなことは誰も知っちゃいないさ。ヤツが姿を現すまでは…ああ、くそっ!」

高原地区の民家。
メイドさん。
「よけいな口出しとは思いますが…ご主人様にはあまり声をかけられないほうがよろしいのでは…」
「ああ、わかってるよ。あれ?ここの奥さんはどうしちゃったの?いつも家の前にいたよな?」
「奥様でしたらからだの具合を悪くされて、特別列車でご実家に戻られました」
「そうか…いろいろ大変なんだな」
「はい、少し前まではとても幸せなご家庭でしたのに、運命というものは皮肉なものです」
運命か〜。
「ご主人様もおかわいそうです…。あんなにつくされていたノーチス軍に見捨てられてしまうなんて」

イライラ頂点、科学士官。
「…なんということだ、まったく信じられん!」
「あー、もううるせえな!目の前にいるんだ。そんな大声出さなくても聞こえるって!」
「声も大きくなるぞ!クァン・リーが来るのだぞ!なにが起こるのか予想もできん!すべてをこの目で見て、観察・記録・研究せねばならんのだ!それなのに、それなのに…。軍研究所にはあいかわらず立入禁止だ!いったいどうなってるんだ!この私をバカにして…」
「まったくあきれたおっさんだな。クァン・リーが来たら、のんびり研究どころじゃないだろ?」
「ふんっ!なにが起こっても、私は研究をあきらめん!たとえこの命がどうなろうと、だ。うぅ…私に研究をさせてくれ!施設の機材がどうしても必要なんだ!」
おお、学者バカじゃん。スキだねぇこういうヒト…。
「クァン・リーの出現…いったいなにが起こるのだ?なんとしてでもこの目で見てやるぞ」

そして、男の子。
「…お兄ちゃんもクァン・リーを探しているの?なんで見つけられないの?」
「クァン・リーはどこにいるんだ?究極の生命だっていうなら、なんで隠れている必要がある?遺跡で産み出されたクァン・リーは、とてつもなくつよいハズだ。それなのに…さっぱりわからない。なにをしてるんだ?」
「クァン・リーを探す必要はないんだ。あの子はずっと目の前にいたんだ。そしてヒトとはなにかを知ろうとしていたんだ。
『クァン・リーとは、すべての世界を変える存在なり。世界至高の力を持てる存在なり』!」
遺跡の…まただ。
「クァン・リーはおまえたちを待っている。高原地区で、おまえとおまえの知り合いを…」
え?まだ繰られてる?



「クァン・リー降臨」
高原地区、軍入り口へ向かう道と駅へ向かう道とのT字路。
クロイツがひとり立っている。
「クロイツ!?おまえいったいどうするつもりなんだ?」
目を閉じて、腕を組んだままじっと立っている。
「待っている…」
「なんだと?」
目をカッと見開く。
「クァン・リーをだ!すべてオレから始まったのなら、やつはここに…オレの元に必ず来る!」
足元から煽り見上げる。
「オレは決着をつけねばならん。もしクァン・リーに屈することになれば、オレはオレでなくなってしまうのだ!やつはオレが倒す!」
組んでいた腕を解いて、ぐっ拳を握り締め、そしてまた腕を後ろに組みなおす。
「…オレがヤツに関わった時から、すべてそう決まっているのだ!」
「運命とでもいうのか?そんなバカなこと…」
空が暗くなる。
「うん?なんだ?」
クロイツも空を見上げる…。

暗い空。渦を巻く黒い雲。
渦の中心に緑色に輝く光が広がったかと思うと、すっと地上に向かって降りてくる。
みんなが空を見上げる。
その影が…みんなクァン・リーの紋章の影になってる!
軍中央施設の真上にその光の中心が届く。
エスカーレ下町のみんなは、駅前のエンシャントギアのオブジェの前に集まってくる。
影が、みんなの影が、緑の光の中心に向かって吸い上げられる!
吸い上げられた影は、まるで黒い竜巻のように軍中央施設の方向に向かって立ち上り、黒雲まで届くとその黒雲の中の緑色の光はさらに光度を増し、光る物体を形作る。
まるで小さな緑色の太陽のような。
「これが…クァン・リー」
そう呟いたエヴァンとクロイツの前に、それが降りてくる。
まぶしい光に包まれた中から…。
しなやかな腕、足、端正な顔?
少年?

光が消える。
そこに立っている、少年?クァン・リー?
「おはようみなさん。おはよう、ボクの世界…」
「こども?いや、違うのか?…こいつが、生きとし生けるものの頂点だってのか?」
戸惑うエヴァンに歩み寄る少年。
「ふふっ。ありがとう、感謝するよ。キミたちの願いが、ボクを産み出してくれたんだ」
「…おまえ、…何をする気なんだ…?いったい何をはじめようってんだ!?」
くるりと後ろを向いて、また降りてきた位置へとゆっくり歩いて戻る少年。
きつい口調で問い詰めるエヴァンに、おっとりとした調子でクァン・リーが答える。
「どうしたんだい?何を恐れてるの。ボクはすべての導き手として生まれた。キミたちの未来を現在(いま)と重ねて、そして永久の世界をもたらすために…」
そしてまたエヴァンに笑顔を向けるクァン・リー。
激するエヴァン。
「わからないぞ、クァン・リー!やっとこの世界は静かになったばかりなんだ!また新たな災害を起こそうっていうのか?」
「ふっふふふ…。心配することはない。すべてはキミたちの望むことさ。心安らぐ永遠の平和を約束するよ…。そのためにボクは生まれてきたんだから」
両手をひろげて、寛大なポーズの少年。
「クァン・リー!キサマの勝手にはさせん!」
クロイツが剣を抜く。
いつの間にか親衛隊もずらりと揃って同じように抜刀し、クァン・リーを囲んでいる。
「クロイツ!?」
「オレの名はクロイツ!先史文明の残した偉大なる遺産、クァン・リーよ!ノーチス軍はキサマを歓迎するぞ。その力が究極というなら、オレにこそふさわしい。キサマはオレのものとなるのだ!オレの下で、新たなる世界を築くのだ!」
「あっははははは!くだらないよ!」
一笑に付すクァン・リー。
「ボクは誰のものでもない。戦うことに何の意味がある?すべてはもう、ボクの手の中にあるんだよ」
「キサマのようなガキが何を言う!オレの刃の前にひざまずくがいい!ちゅぅあーーーー!!!」
ブチキレて、切りかかるクロイツ!
クァン・リーは、ゆったりとした動作でクロイツに向けて右手を上げる。
すると、クロイツが石のように固まって動かなくなる。
「アハハハハハ!本当にこっけいな存在だね!この男にはヒトの面白い特徴が出てる。ちょっとは役に立つかな?」
クァン・リーがまた右手を横に上げると、クロイツの姿が光に包まれ、ふっと掻き消える。
「クロイツ!?クァン・リー!おまえ、何をしたんだ!?」
再び激するエヴァン。クァン・リーの態度は変わらない。
「哀れだね、キミたちは。何を願っているのか、自分でもわかっているハズなのにね」
真正面から向かい合う二人。
「ヒトは進まなくちゃならないんだ。おろかな争いに嫌気がさしたから、ヒトはボクを生み出そうとしたのさ」

エスカーレ下町のエンシャントギアのオブジェが、今までに無い速さでグルグルと回転する。
その中央に、クァン・リーの姿が浮かび上がり、下町に暮らす人たちが周囲に集まる。
「キミたちは新たなる進化のときを迎えたのさ。永遠の平和、争いのない世界。ヒトが望んでも、絶対に得られない調和…。すべてはひとつになるべきなんだ…。ヒトとヒト、ヒトと動物、ヒトと自然…。新たなる扉を開き、ボクと共に未来を作ろう」
まるで、集まった人々への演説…。

エヴァンの目の前のクァン・リー。
どこまでも楽しそうに…。
「じゃあ、ここからはじめようか。ヒトの望み続けた理想を実現しよう。そう、世界は変わるんだ!」
クァン・リーがパチンと指を鳴らす。
エヴァンの目の前のクァン・リーから、影が…クァン・リーの紋章の影が伸びる、大きく広がる。
その影は、エスカーレ全体に広がる…。





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