お正月 わたみつ編
元旦の三橋神社は驚くほど人がいた。そりゃあ住宅街のど真ん中に大昔から存在しているのだし、11月の七五三の頃にも週末は親子連れが多かったけれど。
社務所にはおみくじを引く人の列があるし、焚き火には昨年の御札が放り込まれてるし(ダイオキシン問題はいいのだろうか?)、遊具の辺りにも小さな子供が遊んでいるし。
鳥居のそばで待っていると、美鶴が遠くから僕を見つけてちらっと手を振った。僕は嬉しくなって美鶴が近くに来るのを待った。
「あけましておめでとう、美鶴!」
「まだお前一人だけか?」
「さっき宮原がきてたんだけど、去年の御札を持ってくるのを忘れたって家に取りに帰っちゃった」
「小村は?」
「遅れるってメールが来たよ」
先にお参りしちゃおう、って境内に入る。
手を洗って、お賽銭入れて、鐘を鳴らして、ニ拍手一礼。おみくじを引いて互いの運勢を覗き込んで笑って、結び糸に括りつける。
こんな風にふたりで三橋神社に詣でるのは5回目になる。ずっと願い事も同じ。
恋人、になってからは2度目か。
「人が多いね」
焚き火の前で友人たちを待ちながら、手は繋がず、かわりにぴったり寄り添った。
「今年もよろしくね」
「ああ。…亘、なんでこんなに近寄るんだ」
「だって…いろいろ…したくなっちゃった」
「バカ。万年発情期め」
悪態をつきながら、それでも美鶴だって嫌そうじゃないよ。
「僕の家はお母さんがいるし、美鶴の家は叔母さんがいるんでしょ?神社でできるかな?って思ってたのに、こんなに人がいっぱいなんだもん」
「ホント、バカだな。外で、なんて俺は嫌だからな」
わかってるよ、って言いながら考える。いつになったら、美鶴が欲しいときにすぐに手に入れることができるんだろう。
「ねえ美鶴、あと少し、僕らが大人になったら、ふたりで一緒に暮らそうね」
美鶴が、口元を手のひらで覆って隠してしまった。笑ってる、みたいだけど。
「なんだよお前、それって…」
頬から耳辺りまで、熱を持って赤くなっていく。美鶴が言いたいことの続きがわかって、僕もなんだか顔が熱くなってきた。
「なにやってんの?お前ら」
「わあああっ!カッちゃん!」
慌てて飛んで離れると、真後ろにカッちゃんがいて、少し後ろで宮原が額を押さえてた。焚き火に去年の御札と破魔矢を放り込みながら、僕ら、特に僕に向かって、
「人前では自制!新年早々、見てる方が恥ずかしいんだよ…」
宮原もあてられた感じで手のひらで顔を仰いでる。カッちゃんだけは楽しそうに宮原を小突いて遊んでる。
「まあまあ。オレんち、今親が正月旅行に行っちゃって留守番なんだ。新年会しない?おせち食い放題だぜ」
「おせち食い放題!?」
僕と、ヒソカに美鶴も身を乗り出した。
「ついでに店の酒も出せるぞ」
「酒!?」
嬉しそうに表情を変えた宮原を、僕は忘れない。(後で突っ込もうと思う)
新年会編へつづく。