お正月 新年会編





「あけおめー!」
「今年もよろしく!」
「うおっしゃー!乾杯ー!」

 三つのお猪口と、ひとつのジョッキ入りカルピスソーダがぶつかった。それぞれにひと口ずつ飲んで、愉快な気分を交換しあう。
 高校生はお酒を飲んではいけません。そんなことわかってる。わかった上でこっそりやるのが楽しいんじゃないか。

「なんだこれ、すっと飲めるよ?」
「上善如水(じょうぜんみずのごとし)。甘口だろ」
「美味いな」

 ひと口のんで気に入った芦川が手酌で注いでいる。仄かに香るアルコールに、三谷は飲めない自分を残念に思った。昨年末、母に貰った一杯のワインでひっくりかえってしまったくらいだから、日本酒なんてとんでもない。
 かわりにおせちの蓋をあけて、小皿を並べる。

「美味そう〜僕、カッちゃんとこの田作りと黒豆と栗きんとん、大好き!」
「小さいのばかりだな」
「レンコンも食えってば。オレが焚いたんだからな」
「エビとカズノコ…ローストビーフも入ってる」

 高校生男子4人の箸が一斉に重箱に襲い掛かる。すぐに無くなってしまうかと思えば、ぎっちりみっちり詰め込まれている祝い料理はなかなか重箱の底を見せない。
 ある程度食べればペースを落として、アルコールの力も借りたお喋りが弾む。普段口数の少ない芦川美鶴が口元を緩めてニコニコ笑ってるなんて、あまり見られるもんじゃない。眼福。お正月ありがとう。
 小村がひとりで留守番の理由は、小村の小母さんが年末に商店街のくじ引きでペア温泉旅行を当てたからだ。店の休める正月の初めに出かけていった。もちろん一人息子も連れて行くつもりだったのだが本人が遠慮したんだから、今頃は仲良く…喧嘩してなきゃいいけど。
 喋っているうちに芦川はさらにひとり手酌を続けて、一合空けてしまった。カラの徳利を宮原にぐいっと差し出す。

「何?続きいれろって?」
「おいおい、ペース早いだろ」
「ムリしないでよ、美鶴」
「へいき。日本酒ってこんなに飲みやすかったんだな」

 …小村と宮原は顔を見合わせた。確かに上善は飲みやすいけれど、アルコール度数は普通の日本酒なのだ。

「次、梅里にしよう。辛口。ペース落とさなきゃマズい」

 一升瓶から徳利に酒を移している間に、美鶴は、はふぅとあくびをひとつ。瞼が重そうになってる。

「眠かったら隣の部屋行けよ。客間なんだけど宴会用だし、座布団いっぱいあるから」
「うん、やっぱり、酔った」

 自覚があって自分で限度がわかってやめられる、なかなかいい酒飲みだ、芦川美鶴。
 小村のベッドから毛布を一枚奪って、廊下を挟んだ向こうの部屋へ消えていった。
 二本目の徳利を互いに注ぎながら、談笑の続きを始める二人に、三谷は気がかりひとつで入っていけない。

「大丈夫かな…」
「心配性だなぁ三谷は」
「それよか、オマエは平気?」

 小村がイタズラっぽく笑う。

「な、なんで?」
「カルピスソーダ、プラスチューハイなんだ、それ」
「三谷!?」

 アルコール入り、と聞いただけでヨレヨレ三谷亘。ばったり床の上に伏せて、気分悪そうに胸を押さえてる。

「はぁ〜〜〜、カッちゃん…酷いよぉ」
「オマエ、本当に下戸なんだ!ごめんごめん」
「僕も、隣行って休んでくるぅ…」

 ほとんど地を這うように、三谷も芦川の後を追った。
 ニコニコ笑って見送る小村に、宮原は全く酔いの無い視線を向けた。

「謀っただろ?」
「わかるぅ?三谷のジョッキにチューハイなんか入れてねぇんだけど」

 一瞬の間の後、二人は爆笑した。

「次、何飲む?ブランデーかウィスキーか」
「ウィスキーがいいな。水割りで」
「響がありますぜ、ダンナ!」

 隣の部屋でヒメがはじまったかどうかは、酔っててわからなかった。
 …ということにしておこう。


(実はこっちの部屋でもザワザワしたのでわかりませんでした)




おわり。










飲んだくれせっくる!!

響ウマー!好きー!
サントリーの山崎工場に見学に行ったら飲ませてもらえるの。タダで!笑

すいません、未成年の飲酒はダメですよ。本当にダメですよ。

2007.01.03


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