St. Valentine's Day
〜カノジョの場合〜
2話

ジェットコースター、バイキング、ゴーカート、ループコースター、フリーフォール。
ガンガン乗り物に乗って回って、結局先にギブアップしたのは男性陣の方だった。

「次はアレね♪」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。
もうお昼だし、一回休憩しよう」
腕時計に視線を落とせば確かに12時を回っていた。
もうそんな時間なんだ。
あたしはアメリアに目配せする。
あたしがアメリアの家に泊まったわけ。
いい物あるんだから。
男二人を待たせて出入り口のコインロッカーまで荷物を取りに行った。
「ジャーン♪」
「わ、どうしたんだそれ」
「あたしとアメリアで作ったの。ねー?」
アメリアがぎこちなく頷く。
アメリアが手伝ったのは卵をかき混ぜるとかサンドイッチを切るとか、最後にお弁当箱に詰めるとか。
そんな所ばっかりだったけど、二人で作ったのは間違いないし。
嘘は言ってないよね。
そのうちあたしがビシバシ扱いてやろ〜っと。
さすがに外は寒いので、建物の中の休憩所でお弁当を広げた。
「「うまい!」」
男二人が口を揃える。
えへん、あたしが作ったんだから当たり前。
って言ったらダメなんだよね。
「ゼルガディスさん。熱いコーヒーと、お茶もありますよ」
「じゃあ、お茶を貰おうか」
「はいどうぞ」
ほのぼの〜とお茶を飲む二人を後目に、あたしも目の前のおかずに箸を伸ばした。
う〜ん、我ながらデリシャス♪
次は唐揚げさんとハンバーグとほうれん草のおひたしと卵焼きとサンドイッチにおにぎりさん、と。
ヒョイヒョイと取っていくと隣から抗議が入った。
「あ、ちょっと待てよ。それはオレが・・・」
「何言ってるのよ、早い者勝ちよ!」
防衛する箸をかいくぐり、目当てのコロッケを奪い取る。
あたしの攻撃を凌げるやつなんてそういないのよ。
「それなら、こうだ!」
「あ、そんなことする。じゃあ、こうよ!」

多い目に用意していたはずのお弁当はあっという間になくなった。
だって今日初めて知ったんだけど、ガウリイがまたよく食べるんだ。
あたしと同じくらい(もちろんあたしのほうが少ないけど)食べるやつ、家族以外で始めて見た。
それにこれだけ美味しそうに食べてくれたら作った甲斐があるってものよ。
あたしは思わず嬉しくなった。
「まだ、デザートもあるわよ」




お弁当を食べた後はスケート。
いやー、笑った笑った。
お腹が痛くなるまで笑っちゃった。
だって、アメリアってば滑るのは上手いくせに曲がれないんだもん。
さすが、一直線娘の面目躍如だわ。
笑うあたしをアメリアは涙目で見てたけどいいじゃない。
ゼルに手を引っ張って貰えるでしょ。
その点あたしはバッチリ。
バックもクロスも思いのまま。
でも、ガウリイの方が早くて上手かった。
長い髪をなびかせて、スイスイと滑っていく。
ムカ。
あたしがガウリイを抜かすと、ガウリイが又抜き返す。
ゆっくりと滑るアメリアとゼルの横をすり抜けて、いつの間にか二人で競争。
逃げるガウリイを追いかけての鬼ごっこは結局ゼルの一喝でお開きとなった。
余りのスピードに周りの人たちが怯えてたらしい。
ゴメーン。




そんなこんなで冬の日は短い。
つるべ落としに日は暮れてあたりはあっという間に薄暗くなった。
「最後にアレに乗りましょう!」
アメリアがビシリと差したのは―――観覧車。
あんたってば本当に高いところが好きねぇ・・・
でもちょうどいいかも。
アベックが目立つ行列に混じって並び、次はあたし達の番になった時。
あたしはガウリイの腕をぐいっと引っ張った。
「あたしたち次のに乗るから、アメリアとゼル、二人で乗りなさいよ」
我ながらナイスアイデア〜♪
幾らWデートって言っても、アメリアとゼル、ちっとも二人っきりになれないもんね。
驚いた顔をするアメリアに「頑張りなさいよ」と目で伝える。
あたしってばいい先輩よね。


その時あたしはちっとも気づいてなかった。
お間抜けにも気がついたのは次の観覧車に乗ってから。
これってあたしもガウリイと二人っきり!?
うわー、何か緊張してきた。
バイトの時に二人っきりになったことは何度もあるけど、やっぱりそれとは違うよね?
茜色から薄闇へと変わっていく空。
園内はそこかしこで、イルミネーションが瞬き、赤青黄緑と光が踊る。
どこか暖かな眼差しであたしを見ているガウリイに心臓が跳ねた。
だって、こいつってば綺麗な顔してるんだもん。
スッと通った鼻梁に澄んだブルーアイ。
モデルと見まごうばかりの均整の取れた身体。
見かけだけじゃなくて、運動神経がいいのもわかった。
うあ、いかん。
顔が火照ってきた。
ここは一つ。
あたしは気を紛らわせようと、口速にガウリイに話しかける。
「ゴメンね、強引に引っ張って。
あの二人を、二人っきりにさせたかったからさ」
「いいさオレもリナと二人っきりで話したかったから」
!!
今、なんて・・・
思わず赤くなるあたしにガウリイは、『バイトしてた時から気になってたんだ』って笑ったのよーー!
もちろんあたしは大パニック。
こんな事言われるとは思ってなかったし、ガウリイのこと嫌いじゃないし・・・って違うー。
あんまり混乱するあたしを見かねてか、ガウリイがあたしの頭をポンポンと叩いて落ち着かせる。
「返事はいつでもいいから。
ゆっくり考えてくれ・・・」
「う、うん」





To be continued...

2001/2

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