Boundless future
〜ガウリイサイド〜 3

竜に戻ったミルガズィアさんの背中に乗せて貰ったオレはリナの痕跡が消えたと言う場所へと向かった。
勿論そのままでは飛ばされてしまうので、ミルガズィアさんが風の結界を張ってくれた。
かなりの、人では到底不可能なスピードで飛ばして貰ったが、それでも黄金竜の翼と言えども目的地に着く頃には日も暮れかかっていた。
「ここだ・・・」
それはオレとリナが最初に会った街道。
オレは感慨に浸る間も無く、ミルガズィアさんの作った魔法の明かりを借りてしゃがみ込み地面を調べる。
ミルガズィアさんの話によればリナは今魔法が使えない。
ゼロスに襲われればひとたまりも無い。
早くリナを見つけないと。
逸る心を抑えて注意深く柔らかい草の上に残る足跡を調べる。
リナはどちらへ向かっている?
多分小さいこれがリナの足跡。
それから・・・もう一つ足跡があった。
街道へと向かうリナの後を追うように続いている。
足運びから見てもそこそこ腕の立つヤツらしい。
まさかリナを狙って?
しかしリナの足どりに乱れはない。
歩幅から見ても走ったりしているわけでも無い所をみると大丈夫そうだ。
オレはリナの足跡が消えた場所、街道の端からミルガズィアさんを振り返った。
「さすがに街道でリナの足どりを追うのは無理だ。
オレとリナが居たのはこの街道のどちら側だ?」
ミルガズィアさんが左の方を差した。
普通に考えれば左の方だが・・・
オレは右の道を指さした。
「こっちへ行けば何がある?」
「アトラスシティ、ディルス・・・竜たちの峰(ドラゴンズ・ピーク)
「あんたらの巣が有るところか」
「・・・巣と言わないでくれ」
真顔で行われるミルガズィアさんの抗議はこの際無視する。
「両方に人・・は、やってるんだよな?」
「あたり一帯隈なく捜すように命じてある」
「・・・オレはこっちを捜す」
オレが歩き出したのは右の方。
どうしてなんて説明できないけどこっちだと感じたから。
そのまま駆け出そうとしたオレをミルガズィアさんが引き止める。
「待て」
「なんで止めるんだ」
「・・・少しは落ち着くがいい。
町の方には魔力探査に長けた者を向かわせている。
幾らお前の目が良いと言っても、野宿しているのか町に入ったのかすら分からない相手をどうやって捜す?
第一お前はずっと水も食べ物も口にしていないだろう。
少し休むといい。
それとも肝心な時に倒れるつもりか?」
「・・・」
オレはどかりと腰を下ろし携帯食を取り出した。
確かに闇雲に探して見つかるとは限らない。
オレは木に身体を預け、あたりが明るくなるのをひたすら待ち続けた。
 
 
 
 
結局オレがリナの情報を掴んだのはもう日も暮れ掛けようと言う時だった。
街道を歩いたのと、町で聞き込みをした所為で時間が掛かっちまった。
ドラゴン達は口を揃えてリナの魔力は感じなかったと言ったけれど、それでもと思って宿を回れば5軒目で当たりだった。
ドラゴン達が魔力に頼らず昨日廻っていてくれれば夜の内に見付けられたのにと腹が立ったけど、彼らも夜通し飛んで捜してくれたのだから文句も言えない。
そしてこれで3つほど分かった事が有った。
1つは何故だか今のリナの魔力を追えない事。
もう一つはリナがこっち方面へ向かったのは間違い無い事。
最後は・・・リナの傍に男が付いている事。
リナの事だから大丈夫だとは思うけど、リナに何かしてみろ魚の餌にもならないぐらい細切れに刻んでやる。
そう誓って街道を急ぐ。
日が昇ってしまえばドラゴンの姿では逆に目立ち過ぎてそう街道上を飛ぶわけにも行かない。
魔力探査が出来なくなった今、街道を歩いて探す他方法はない。
オレは街道を足早に歩きながらその姿を探す。
そうしてすれ違う旅人にリナの風体を話して尋ねればある商隊がリナらしき女を見たと言うことだった。
その母親はオレを見て何か察したのか柔らかく微笑んで「早く見つかると良いわね」と言ってくれた。
オレは3人の子供を連れた母親に丁寧に礼を言って又先を急いだ。
やがて二日目の日も落ちかけ、オレの苛立ちが頂点に達するかと思われた時、不意にミルガズィアさんが今来た道を振り返った。
まさか・・・
「乗れ人間!」
幸い、辺りは暗く人通りも無い。
ドラゴンに戻ったミルガズィアさんが翼を広げ、オレはその背に必死にしがみつく。
待ってろよリナ。
今行くからな!
 
 
     続く


2002/9


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