Boundless future 〜ガウリイサイド〜 2 |
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「起きろ」 う・・・ 「起きろ、人間の男」 っっ・・・リナっ!?? ガバリと飛び起きたオレはミルガズィアさんと正面から当たりそうになって、すんでの所でそれは避けた。 あぶなー・・・ いやそうじゃ無くて・・・ 「リナ!リナはっ!?」 「・・・落ち着け、人間よ。 リナ=インバースは我らの仲間が探索に当たっている。 まずは落ち着くことだ」 ミルガズィアさんは襟元を締め上げかねないオレの腕を避け、続ける。 「あの状態の結界に近づくとは、まったく幾らあの娘を助けるためとは言え無茶をするものだ。 腕が取れかけていたのだぞ?」 「・・・」 今なんか変なことを聞いたような・・・ オレは自分の両腕を見たがちゃんと両方揃っている。 「・・・私が治しておいた」 「そりゃサンキュ・・・って違う! 大体あんたらがリナに何かしようとしたのが原因だろーが!! 一体リナを捕まえて何をするつもりだったんだ! 事と次第によっては幾らあんたでも許さない」 オレは目の前の長老を睨み付けた。 ドラゴン族がリナに何をしようとしたか知らないが、それさえなければこんな事には・・・ 「・・・ガウリイ=ガブリエフよ」 ミルガズィアさんは殊更声を張り上げたりはしなかった。 ただ重みを増した声がオレの怒りを封じ込める。 「よく聞くがいい。 あの娘はお前には言うなと言ったが・・・こうなった以上仕方があるまい。 お前には話を聞く権利があるだろう。 そして・・・聞いた上でどうするか決めるがいい」 「それであいつ、この間から様子がおかしかったんだな」 ミルガズィアさんから話を聞いたオレは何より自分自身に腹が立った。 リナの様子がおかしい事に気が付いていたのに、リナが自分から話すまではとのんびり構えていた。 ドラゴン達に捕まった時といい・・・ 平和ボケと言われても仕方がない。 「・・・それでどうするつもりだ」 黙ってオレの様子を見ていたミルガズィアさんが不意に口を開いた。 「どうって・・・早くリナを見つけて・・・」 「違う。子供のことだ」 ミルガズィアさんの鋭い視線。 魂までも見透かされるのでは無いかと思うほどの。 普通の人間ならそれだけで震え上がって何も言えなくなってしまうだろう。 しかしそれに負けるわけにはいかない。 オレはミルガズィアさんの視線を受け止めキッパリと言い切る。 「リナも子供もオレが守る。」 「しかし・・・」 「別に魔王の破片だと決まった訳でも世界を滅ぼすって決まったわけでもないんだろ?」 「・・・だが魔族はそれでは納得しまい。 子供だけではなくあの娘の命も危険に晒す事になる。勿論お前自身の命もな」 「そんな事今更だ。 リナが魔族に狙われたことが無いと思ってるのか? だからってオレはリナと別れようと思った事なんて無いし、リナを結界に閉じこめたからそれで良い、なんて思ったこともない。 あいつは言ったんだ。 1パーセントでも可能性が有ればそれを信じて戦う、と。 もっとも今は混乱して忘れちまってるみたいだけどな」 オレは軽く肩を竦めて見せる。 リナが混乱するのも分かる。 いきなり世界がどうのと言われれば仕方がないだろう。 しかもあいつは魔王の覚醒に2回も立ち会っている。 冗談だと笑い飛ばすには些か重すぎる。 それでも。 それでもオレは忘れない。 あの時のリナを。リナの言葉を。 何事も諦めたりしないその魂を。 「・・・全く・・」 「長老」 ミルガズィアさんが何かを言いかけたとき、まるでタイミングを計っていたかのように男が近づいてきた。 男はオレを気にしながらもミルガズィアさんに何かを耳打ちする。 もしかしてリナの居場所が分かったのか? ジリジリとあせるオレを意にも止めず何やら話し込んでいたミルガズィアさんがやっとオレの方を向いた。 「リナの居場所が分かったのかっ?!」 「残念ながらその逆だ。 結界の魔法を追った先にあの娘の姿はなかったそうだ」 「!!」 「・・・取りあえずあの娘を見つけないことには子供も何も有ったものではない。 ひとまず協力しあわんか?」 勿論オレに異存がある筈も無かった。 続く |
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