Boundless future
〜ガウリイサイド〜 1

油断した。
不覚をとった。
近づいてくる気配の中に見知ったものが有って、敵意が感じられなかったからなんて言い訳にもならない。
現に今オレはリナと引き離されようとしている。
「リナっ」
オレは拘束する腕を振り払おうとするが、幾ら暴れてもビクともしない。
幾ら二人がかりでも相手が人間ならば振り払う自信はある。
だが相手は人型を取ってはいるが感じる気配は人ではない。
ドラゴン。
人間とは比較にならないほどの力を持つ種族。
そのドラゴン達が一体なんの用なのだ?
ギリリと食いしばった歯が鈍い音を立てる。
こんなやり方はあの黄金竜―――ミルガズィアさんらしく無い。
と言うことはそうせざるおえな状況だと言うことだろう。
また何かあったのか?
だがそれなら何故オレをリナから離そうとする?
話し声が聞こえない位置まで離されたのはオレに聞かせられない話をしているからなのか?
ふと、ミルガズィアさんと話しているリナの表情が変わった。
他の奴等には判らなくてもオレには判る。
あんな・・・何かを我慢するような表情はリナには似合わない。
リナの傍に行かなくては。
「離せっ!リナ!!」
だがオレの意志とは関係無くミルガズィアさんの合図によりオレはリナから離されていく。
「リナっ!」
何故オレを見ない?
何故オレを呼ばない?
リナはさっきから一度もオレの方を見ようともしない。
何かに怯えるようにオレから顔を逸らす。
何故だ。リナ。
突然ミルガズィアさんと周りのドラゴン達が何か唱え始め、リナを取り巻く空気が変わる。
まるで細い鎖のようにキラキラと光る粒が連なってリナの姿を覆い隠していく。
「っ!?」
「勝手にリナさんを隠されると困るんですよ」
オレが警告するよりも早く強い波動と共に聞きたくも無い声が聞こえた。
何でこんなややこしい時に出て来るんだよ!
それでもその所為でオレを拘束していた力が緩み、その隙を逃さず腕を振り払った。
「リナ!」
ゼロスが何かをしているのは明白。
リナを包んでいた金色は見る影もなく歪んでいる。
それはまるで破裂寸前の風船に似ていたが構うもんか。
オレはリナに向かって一直線に走り出した。
「リナァ!」
突然起こった閃光がオレを飲み込み、そこで記憶は途切れた。
最後に見たのは泣き出しそうに歪んだリナの顔。
何があったのか知らないが我慢するな。
オレが・・・
 
 
     続く


2002/9


← 戻る  進む →