・・・Happy together!
・・・part2〜羊師弟の恋愛困難あるいは、こんなん〜
・・・vol.3





こんなに酔った、もとい、酔いつぶれたムウは見たことがない。

泥酔状態のムウから目を離すのは大いに不安だったが、ふたりきりで館に住んでいるのだ、これは仕方がない。
大急ぎで水や必要と思われるものを用意して、部屋に戻り。意識を呼び覚ましながら水分を補給させ、タオルで身体を拭いてから、急激な体温低下を防ぐために毛布でくるみ。
西洋の薬を好まないことは知っていたし、二日酔いはもはや既定の事実であろうが、少しでも痛みが和らぐならと、財団から支給されていた救急箱の中から選んだ薬を、その口に放り込んだ。

---ぜったい、理由を聞く!


妙に意気込んだ紫龍の、孤軍奮闘の酔っぱらい介抱から1時間ほどが経ち。


まだまだ熱をもった顔も、ある程度の色合いに落ち着きつつあるムウが、睡魔に襲われながらも義務感から、かろうじて出来事を告げようとするのだが。
いかんせん呂律がアヤシイ。

「ショ...ォ、...ぁ...」
「でょ...ぃ...ぅぃ...」

本人は、「シオンが」「老師に」と言っているのだが、これを聞き取れというのはムリな話だった。

傍らに立つ、紫龍はといえば。
普段の姿とは天地ほどに懸け離れた、ありえない状態のムウに必死になってる自分が、なぜだか無性に可笑しくなってきて。
ふっと、肩の力を抜いてみる。


気がつけば、少しも冷たくなくなった、むしろ、熱いくらいの指先。


ひとり寂しく放ったらかされていたのに、酔いつぶれて帰ってきた怒りと。
そんな危うい状態でも、自分の元へ帰ってきてくれた嬉しさと。
心配と安堵、すべてがごちゃごちゃになったけど。


やっぱり嬉しさが勝って、

---理由を聞くのは、明日でいいや。

そう思い直し、ムウの隣、ベッドの中へと滑り込んだ。


伸ばした足の間に、ムウの身体を挟んで自分のほうへ引き寄せる。
力が入らないのか弱々しいけれど、きゅっと腰を抱かれたから。胸の上で、優しく頭を抱き返した。

長い髪を払って、首の後ろに冷たくしぼったタオルをあてやると、気持ちよさそうに息をつき、顔をすり寄せてくる。

---手なずけるって、こんな感じかなぁ。

場違いな感想。

けれど、何者にも屈することを良しとしない、孤高に住むはずの気高き獣は、腕の中にある。
落ち着きを取り戻した鼓動が、ふたり、重なっていくのを感じながら、その音を愛おしむように、髪をなぜた。



あなたが、あたたかい。





→Happy Together! part2/vol.4
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