・・・Happy together!
・・・part2〜羊師弟の恋愛困難、あるいは、こんなん〜
・・・vol.1
シオンからの急ぎの呼び出しにより、早朝から聖域に向かったムウが、帰ってこない。連絡ひとつ寄こさず遅いので、立て込んだ話でもしているのだろうと、あきらめて。
ひとり分だと作るのも食べるのも味気ない夕食を早めに切り上げ、本を持ち込んで時間をかけて入浴したつもりでも、なかなか進んでくれない時計の針を見ては、溜め息ばかりついている、夜。
アリエスの聖衣に向かって「ムウのバカ」と悪態をついても、帰ってくる気配のなさに、本当に立て込んでいるのだろうと、今度こそあきらめて。
夜半を過ぎて、館の最上階。ムウの寝室のベッドに潜り込んだ。
「......冷たっ」
指先が冷たすぎて、爪に血が通わなくて、寝付けない。
ひとりでは大きすぎるベッドを左から右へ、右から左へと、転がってみる。冷たい。寂しい。
凍えるのはジャミールの気候のせいだけではないと分かっていたけれど、どうしようもない。
眠れない。
嫉妬している。
師弟なのに。
お願い、誰も、自分から、あのひとを、連れていかないで。
嫉妬している。
自信がない。
眠れない。
世界で一番好きだと、愛していると、満たされ、欠けることのない心。
毎日くちづけを受け、毎夜、愛されなかった場所などない身体なのに。
ひとりになった途端に、馬鹿な考えがもたげてくる。体内に巣くう、病魔のように。片隅から広がる、闇のように。
「....................」
だんだん眠るのが、恐くなって。
もともと建設的な性格ゆえ、腕立て伏せか腹筋でもして気を紛らわせようと、弾みをつけて起き上がろうとした瞬間。
ドサッ!!!
「なっ、ム、ムウっ!?」
前触れもなく空中から落ちてきた、慣れた重みが全身を圧迫した。
ただし、顔をしかめずにはいられない、酒そのものよりも酒臭い、匂いを発して。
Happy Together! part2/vol.2
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