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近似誤差の推定(Error Estimates for Fits)

ハイパボリック・フラグをつけた H a F [efit] は、 a F と同じように近似計算を行いますが、 各係数を普通の数ではなく誤差型式で報告します。 先の 2つのデータ行列(13 のと 14 のと)を H a F で直線近似すると、 次のような結果になります。

3. + 2. x
2.6 +/- 0.382970843103 + 2.2 +/- 0.115470053838 x

前者のデータは直線に完全に一致するので推定誤差はゼロです。 2番目の例で誤差はゼロではありませんが、 データが直線にかなり近いため、誤差はそこそこ小さいです。

近似計算の入力データに誤差型式を含めることも可能です。 データ群は全部誤差型式にするか、 全部普通の数値にするかどちらかでなければなりません。 誤差型式はデータ行列のどの行でも使うことができますが、 一般的には最後の行(訳注: 従属変数)で使います。 最後の行が誤差型式 y_i +/- σ_i である場合の χ^2 は次のようになり、推定誤差の大きなデータ点は近似演算にあまり寄与しません。

        N    y_i - (a + b x_i)
χ^2 =  Σ {-------------------}^2
       i=1         σ_i

誤差型式がデータ行列の他の行に存在した場合、 当該データ点に関する誤差全部が(訳注: 誤差伝播法則により)結合されます。 すなわち、各誤差の二乗和の平方根をとり、それを当該データ点の σ_i とします。

a FH a F の両方とも入力行列中の誤差型式を許容しますが、 誤差解析に関心があるのなら推定誤差を出力する H a F を使うべきでしょう。

入力値に誤差が含まれていても、 全ての σ_i が同じ場合は、 すぐ判るように、 結果の近似曲線は誤差が無いときと全く同じものになります( χ^2 が一律に 1 / σ^2 になるだけで、最小になる位置に影響は有りません)。 しかし、H a F が報告する各係数の推定誤差は違ってきます

これらの誤差がどこから来て、どう解釈されるべきかという議論は、 統計的回帰分析の教科書を調べてください。

-*- ちょっとひといき -*-

インバース・フラグを付けた I a F [xfit] は、 より多くの情報を提供します。結果は次の 6 項目のベクトルです。

  1. 係数やパラメータに誤差型式を伴うモデル関数。 これは H a F が生成する結果と同じです。
  2. モデルのパラメータ値の「行」ベクトル。 これらは多項式係数やパラメータの数値表現で、 I a F コマンドの最後のプロンプトで現れるパラメータと同じ次数です。 d 次多項式の場合、このベクトルの項目数は M = d+1 で、 定数項が最初に来ます。
  3. 近似から計算される共分散行列 C。 これは M×M の対称行列で、対角要素 C_j_j は、各パラメータの分散 σ_j^2 です。 他の要素は共分散 σ_i_j^2 で、両パラメータ間の相関を示します。 (この数値群は 線形相関係数 r_i_j であって、 σ_i_j^2 / σ_i σ_j と定義されます。)
  4. M 個の「パラメータ変換式」(後述)のベクトル。 パラメータ変換が不要の場合、これは空のベクトルになります。 これまで説明した多項式近似や多変量近似では常に空になります。
  5. 近似において上述の定義式によって計算された χ^2 の値。これは近似の良さの目安になります。 χ^2 ≒ N - M ならば、統計学者はそこそこ良い近似であると考えます (繰返しますが N はデータ点の数で、 M はパラメータの数です)。
  6. 近似成功率 Q で表現された近似品質。 これは自由度 N - Mutpc 確率分布関数(訳注: χ^2 分布の上側確率)から計算されています。 値 0.5 なら良い近似を示唆しますが、 教科書によってはしばしば Q = 0.1 か、 ひどいのになると 0.001 が許せる近似と書かれています。 特に χ^2 統計は、 ユーザー入力に含まれる誤差を普通の(ガウス)分布に従うと見なしていますが、 もしそうでなければ、低い Q で満足しなければなりません。 Q 値が計算されるのは、入力に推定誤差を含んだ場合に限ります。 そうでない場合、Calc は Q として記号 nan を報告します。 なぜならこの場合、入力に含まれる元の誤差を見積るのに実質的に χ^2 値が使用されたので、信頼性テストに使う余分な情報が残っていないからです。


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