救急危機 08年6月3日
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毎日新聞 08年1月23日
救急搬送:11病院で受け入れ断り95歳死亡 東京・清瀬
東京都清瀬市で今月8日夜、自宅で具合が悪くなった無職の女性(95)を清瀬消防署が救急搬送中、
近隣の11病院から「満床で対応できない」などと受け入れを断られ、通報から約2時間半後に死亡して
いたことが22日、分かった。 (中略)
受け入れを断った病院の中には、生命に危険のある患者を処置する3次救急医療施設も含まれていた。
公立昭和病院(東京都小平市)もその一つ。
総務課によると、病院では夜間と休日、循環器集中治療室(CCU)など7科で医師が1人ずつ当直している。
女性の受け入れ要請時、CCUで心不全の女性の処置中だった。「順番を待てば命にかかわる」と判断し、
他の病院への搬送を求めたという。
同課は当直体制をとる医局の医師不足などを挙げ「受け入れたくても受け入れられない状況がある」と説明する。
長男は「まさか自分の身に降りかかるとは思っていなかった。関西などで問題になっているのに
連携体制は全く改善されていない」と話している。
(引用終り)
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この東京在住の長男の
「関西などでは問題になってるのは知っていたが、まさか自分の親が・・・」という感覚は正しい。
なぜならば、救急拒否が社会問題としてクローズアップされてから、この記事の時点まで
マスコミが一貫して救急拒否の舞台としているのは関西であるから、
東京在住者にしてみれば、これは関西の問題であり、
東京は関西ほど酷くはないのだろうと思っても不思議はないからである。
時系列で見てみよう。
発端は、「奈良の妊婦 病院たらいまわしで流産」(07年8月29日)という記事であった。
続いて、07年9月7日付けで「大阪でも19病院拒否、自宅で出産」という1年前の出来事を掘り起こしてくる。
救急拒否が大きな社会問題として認識されたのは、この時期、07年9月の始めである。
冒頭の救急拒否が翌年の08年1月だから、その間、東京マスコミが地元の東京の実態を取材する時間は充分あった。
しかし、現在に至るまで、東京マスコミが東京の救急の実態を詳しく報道した形跡はない。
善意の読者・視聴者にしてみれば、
東京マスコミが地元の問題として東京の救急を報道しないのは、
東京の救急拒否は深刻ではないからだと思い込んでも不思議ではなく、
だから、冒頭の長男の嘆きと驚きも理解できるのだ。
東京マスコミが東京の救急拒否を大きく報道しないのは、
実際に東京の救急拒否が関西に比べて大きな問題ではないからだとすれば、
ここで取り上げる問題ではない。
ところが、またしても実態は、東京マスコミが伝えるそれとは大きく異なっていた。
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朝日新聞 08年03月11日
救急搬送10回以上の断り 昨年1074件、東京が6割
救急車で運ばれた患者が医療機関でなかなか受け入れてもらえないケースが各地で相次いでいる問題で、
総務省消防庁は11日、都道府県を通じて調べた実態調査の結果を公表した。
昨年1年間に全国で救急搬送された重症以上の傷病者(転院搬送を除く)約41万人のうち、
搬送を10回以上断られた事例は1074件あった。
このうち東京都が6割近い614件と突出。埼玉県、大阪府、千葉県、奈良県と続き、
首都圏、近畿圏の都市部の深刻さが改めて浮かび上がった。(中略)
東京都以外で多かったのは、(2)埼玉129件(3)大阪71件
(引用終り)
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実態は、10回以上の救急拒否に遭った件数では、東京は大阪の9倍近くあったのだ。
これだけの差があると、関西の報道を受けて真面目に東京の実態を取材していれば、
必ず、これはただ事ではないということが分かったはずである。
分かっていて、救急拒否の問題は関西がメインだと開き直って印象操作していたのか、
真面目に取材すらしていなかったのか、どちらなのだろうか。
さらに驚くべきことに、この傾向は全国の数字が判明した後でも続いている。 【注1】(ページ最下部)
総務省消防庁の発表を受けて、日本テレビはこういう番組を作った。
発表の日の特集
ACTION 「救急の危機」 第1回 急患を受け入れられない 中河内救命救急センター
5月5日の特番
開局55年 報道特別企画ACTION 「日本を動かすプロジェクト」第2弾!
上の5月5日の日本テレビの特番(テレビブログ)の該当部分の