「犯罪件数」の嘘
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毎日新聞 04217
http://web.archive.org/web/20040217001719/http://www.mainichi.co.jp/eye/kishanome/200202/22.html
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犯罪の「認知」とは、告訴・告発、110番通報などによるもので、
全体の8割が被害関係者からの被害届。
これらを「発生原票」というものに記載すると犯罪統計で認知に計上される。
ところが、これまでは警察署で被害届を受理しても、すべてを発生原票に記したわけではなかった。
書き込むかどうか、警察官の判断が介入したのだ。

申告内容が不確か、被害が判然としない――など理由はさまざま。
中には、正当な理由とは受け取れないものも交じるようになっていた。

関西のある警察署の刑事課長からこんな話を聞いた。
新米だったその刑事課長は、これまでのやり方を変えて被害届をなるべく忠実に発生原票に記した。
ある日署長に呼びつけられ、その理由を尋ねられた。
「管内の犯罪状況を客観的に把握するため警察官の恣意(しい)性を排除しました」と答えると、
署長はこう怒ったという。
「署の検挙率を下げるつもりか。君には警察幹部としての管理能力がない」。
検挙率至上主義がはびこってきた証拠だ。(中略)

従来の統計は、捜査側の都合に合わせたものだったのだ。

大阪府警の内部文書によると、警察改革要綱が発表された翌月の00年9月、
刑事部長名で「犯罪として問えるものはすべて受理し犯罪統計に上げること」との通達を出した。
そして明らかにその月から刑法犯認知件数が増加した。

年間ベースで比較できるようになったのは、01年が最初の年。
前年に比べ、大阪府警分だけでも四国4県分以上に相当する数が増えた。
車上狙い約64000件(41%増)▽部品盗約21000件(約52%増)
器物損壊約15000件(約240%増)――が増加の主要因で
ほとんどが被害届による認知。
従来のやり方では、計上されないものを多く含んでいた。
府警幹部はこの差を、警察の「不良債権」と呼んだ。

全国の都道府県警察は同様の作業をしているのか。
前年比増加率は、富山(同47%)をトップに
大阪など6府県が30%以上。
10
%を超す「激増地域」は計23府県だった。
残る24都道県はひとケタの伸びか減少で、東京は微増。
改革提言前の98〜99年の全国の平均増加率が約6%だったので、
これまで通りの変動だったと言える。
警察改革の足並みが乱れていると感じるのは私だけだろうか。

(
引用終わり)

この記事を掲載した毎日新聞と記者氏に感謝する。
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普通、前年度比30%を超す自治体が6府県、10%を超す自治体が
23
府県もあればそこになにか事情があると思うはずである。
その事情が上の警察庁の通達である。

全国紙と在京マスコミは、警察庁の通達後も「不良債権」を清算しなかった警視庁の怠慢を
指摘しなければならなかったはずであるが、そうしなかったばかりか逆に、
積極的に情報公開をした大阪の「犯罪件数」が全国最多になったことだけを大騒ぎしたのである。






07
112日追記
参考資料
平成19年 110番受理件数
警視庁(生活安全関係・刑事関係)   337,230件(「交通関係・地域関係」項目は除く)
大阪府警(防犯関係・犯罪関係)      164,841件(「交通関係・災害関係・その他は除く)

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/bunsyo/toukei19/pdf/kt19d007.pdf

http://www.pref.osaka.jp/attach/5406/00019343/19syuyosesaku.xls  ページ最下部 100公安委員会 110番内容別受理件数 






06
51日追記
上に書いた警察庁の通達は、全国的にはまだ浸透していないようだ。
警察の「不良債権」はまだ大きく残っているのである。
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http://www.eonet.ne.jp/~0035/hanzaijuri.jpg
警察の告訴対応まだ不十分
犯罪に巻き込まれた人が警察に捜査を求める告訴については、埼玉県桶川市の女子大生殺害事件で、
警察が告訴を放置して批判されたことをきっかけに、警察庁は平成12年に適切に処理するよう全国の
警察本部に指示しました。
日弁連が、被害者を支援している弁護士を対象に、その後の状況についてアンケート調査をしたところ、
回答した321人の53%にあたる171人が、警察の対応が良くなったとは「まったく感じない」か「あまり
感じない」と回答し、まだ改善が見られないと感じている弁護士が半数以上いることがわかりました。
回答した弁護士の多くは、告訴を拒まれた経験があるということで、中にはその後被害が拡大したケースも
報告されています。
日弁連は「厳しい批判を受けたことを警察が十分反省して被害者の声にきちんと耳を傾けるよう働きかけて
いきたい」と話しています。

(引用終り)
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06825日 追記
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日経新聞 011128日(共同通信記事)
http://web.archive.org/web/20020104123143/b2o.nikkei.co.jp/contents/b2o10/a10/20011228eimi003828.cfm
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犯罪都市」日本一、大阪が東京抜く・刑法犯件数で戦後初の”不名誉”

今年1月から11月までに警察が認知した刑法犯の都道府県別件数で、
大阪が東京を抜いて過去最悪となったことが28日、警察庁のまとめで分かった。
11
月末時点で大阪が東京を約3万件も上回っており、年間件数でもトップに立つのはほぼ確実な情勢。

刑法犯の年間の認知件数は戦後、東京以外の都市が最多となったことはなく、数字の上では首都を超えて日本一の「犯罪都市」となった。
ただ殺人、強盗などの凶悪犯は東京が大阪を約100件上回った。

警察庁は「車上狙いなど窃盗犯の増加が原因とみられるが、人口差からは意外な結果」としている。
東京の人口は現在約1200万人で大阪は約880万人。犯罪の発生件数は人口に比例するとされるが、
大阪は約320万人の人口差を覆す格好となった。

警察庁によると、11月までの刑法犯は、大阪が約298000件で東京は約268000件。
大阪が前年同期より約73000件増えたのに対し、東京はわずかに2900件増だった。

刑法犯のうち、大阪は車上狙いや自転車盗などが大幅に増えた影響で、窃盗犯全体が約6万件増の約254000件となった。
東京の約218000件を大きく上回り、東京を抜く要因となった。
東京はピッキング対策などで侵入盗が激減し、窃盗犯全体でも約2200件減少した。

年間の都道府県別刑法犯の件数は、警察庁に統計が残っている1946年以降、昨年まで東京が常にトップで大阪は2位を続けた。
東京は57年から毎年、20万件台前半を維持。ここ10年間は25万件前後で推移し、昨年は約29万件に達した。

大阪は70年代半ばまで、東京のほぼ半数で推移したが、89年に初めて20万件を突破してからは高水準を保ち、
昨年は初めて25万件を超えていた。〔共同〕

(引用終り)
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この日経の記事の発見で述べたいことは二つある。
一つは比較的良心的と思われた冒頭の毎日新聞の記事にもごまかしがあったことである。

冒頭の毎日新聞の記事
>全国の都道府県警察は同様の作業をしているのか。
>前年比増加率は、富山(同47%)をトップに大阪など6府県が30%以上。
>10%を超す「激増地域」は計23府県だった。
>残る24都道県はひとケタの伸びか減少で、東京は微増。
>改革提言前の98〜99年の全国の平均増加率が約6%だったので、これまで通りの変動だったと言える。

しかし日経記事によると、実際は、東京は前年度比わずか1%、件数で2900件しか増加していなかったのだ。
それを毎日記事は56%の伸びであるかのように印象操作しているのである。

では、なぜ、こういう印象操作をしたのだろうか。

大阪が前年度比30%、件数で73000件増加した年に、
東京は前年度比1%、件数で2900件しか増加しなかったのである。

各紙の記者は、特別な理由がないのにこういうことがありえたと本気で思ったのだろうか。
毎日の記者は、これはあまりにも不自然だということで警察庁の通達の記事を書いたのだろう。
ここまでは良心的である。

ただ警察庁の通達があったにもかかわらず、東京の増加率が1%だったのでは、
逆に警視庁の隠蔽体質を強調するだけである。

そこで、毎日の記者は、東京の前年度比増加率が56%であるかのように印象操作せざるを得なかったのだろう。


二つ目は、もう一度、関係者に問いかけたい。

大阪が前年度比30%、件数で73000件増加した年に、
東京は前年度比1%、件数で2900件しか増加しなかったのである。

警察庁の通達に敏速に反応したか、通達を無視したか、という特別な理由がないのに、
普通にこういうことがありえたと本気で思ったのだろうか。

警察庁の通達に敏速に反応したか、通達を無視したか、
その違いが犯罪認知件数に大きく影響したという、特別な理由があることを知らずに、
普通にこういうことがありえたと思った。    新聞記者失格

警察庁の通達の影響は知っていたが、それによってせっかく大阪が「犯罪日本一」になったのだから
この際、大阪の「「犯罪日本一」だけを強調して書いてやれと思った。    人間失格

あなたはどちらですか?

                                                                        戻る