体外循環
血液希釈
| ≪長所≫ | | | | | | | | | ≪短所≫ |
| ・ 血液粘調度の低下 → 末梢循環の改善 ・ 輸血量の削減 → 輸血製剤の節約、輸血合併症の回避 ・ 尿量増加 → 腎不全の防止 ・ 血液破壊、蛋白変性の減少 |
| ・ 酸素運搬能の低下 → 代謝性アシドーシス ・ 膠質浸透圧の低下 → 浮腫 ・ 末梢抵抗低下による血圧低下 |
≪希釈率≫



低体温
≪目的≫
末梢組織の酸素消費量の減少による脳を中心とする全身諸臓器の保護などにより、人工心肺の安全限界を広げる目的で送血温度の冷却を行う。
≪欠点≫
| @ | 血液粘調度の上昇 →血管抵抗の上昇など |
| A | 交感神経の刺激 →末梢血管収縮 |
| B | 血液pHの上昇(アルカローシス)や血液希釈による酸素解離曲線の左方移動 →組織での酸素放出低下 |
| C | 血液凝固異常 →血液凝固能の低下による出血傾向 |
| D | 寒冷凝集反応 →溶血 |
至適灌流量
≪条件≫
| @ | 高血流になればなるほど障害が増大するため、必要最小限の流量を流す |
| A | 末梢循環抵抗を術前と同様の状態に維持する |
| B | 生体の酸素需要量を満たす灌流量 →静脈血酸素飽和度70%を維持 |
≪灌流指数(C.I)≫
目安(体表面積によって異なる)
| 成人 | : | 2.3〜2.5 l/min/u |
| 小児 | : | 2.4〜2.6 l/min/u |
| 乳児 | : | 2.4〜3.0 l/min/u |
≪注意点≫
| ・ | 灌流指数は目安であり、個々の症例によって対応しなければならない |
| ・ | 体温が低下すればするほど至適灌流量は、低下する |
| ・ | 体表面積が大きくなればなるほど、流量は減少する |
| ・ | 解剖学的シャントなどにより組織への酸素供給に関与しない送血量(無効送血)が存在する |
血液凝固
@ ヘパリン
≪作用≫
アンチトロンビンV(ATV)の存在により抗トロンビン作用を発現
≪投与量≫
全身投与 : 3mg/kg(0.3ml/kg) 活性化凝固時間(ATC) : 400秒以上
≪半減期≫
1〜2時間
≪問題点≫
・ 持続投与によるヘパリン抵抗 ・ ATVの減少による抗トロンビン作用の低下 ・ ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の発現
A 硫酸プロタミン
≪作用≫
ヘパリンの拮抗剤
≪投与量≫
ヘパリンの1.5倍量投与
≪問題点≫
・ 血圧低下
血管拡張作用(ヒスタミン分泌促進) 軽い心筋収縮抑制作用
・ ヘパリンリバウンド現象
プロタミンとヘパリン複合体は不安定であり、低体温時ヘパリンは脂肪組織に蓄積 → 複温により再放出、出血傾向遷延
体外循環の開始
≪開始直前≫
| ・ | ACTが400秒以上 |
| ・ | 送脱血カニューレの接続の完了 |
| ・ | 充填液温が35〜36℃ |
| ・ | 予定送血量に見合う酸素ガスの吹送 |
≪開始≫
| @ | 術野に合図して送脱血チューブ鉗子をゆっくり解除 |
| A | リザーバーの液面とCVP(中心静脈圧)維持したまま灌流量(送血量)を上げる |
| B | 灌流圧・回路内圧に異常なく予定送血量まで上がれば、術野に報告 |
体外循環中の監視項目
| 項目 | 設定・目標値 | | 項目 | 設定・目標値 |
| ACT | 400秒以上 | | pH | 7.4±0.05 |
| 酸素濃度 | 100% | | PaO2 | 100〜200mmHg |
| 灌流指数(CI) | 2.2〜2.5l/min/u | | PaCO2 | 40±5mmHg |
| 灌流圧 | 60〜80mmHg | | SvO2 | 70%以上 |
| 中心静脈圧(CVP) | 5〜10cmH2O | | BE | 0±1 |
| 尿量 | 1ml/kg/hr 以上 | | Ht | 20〜25% |
ウィーニング
≪手順≫
| @ | CVP(中心静脈圧)を上昇させ(脱血量減少)、血圧が出ることを確認 |
| A | CVP(中心静脈圧)を維持したまま灌流量(送血量)をゆっくり減少 |
| B | 血行動態が安定していれば、C.I.0.5〜1.0まで減少 |
| C | 血行動態が安定していれば、ポンプ停止 |
≪離脱中止≫
CVP(中心静脈圧)が正常上限値にもかかわらず血圧が低い →心機能低下
・ 対策
| @ | 薬剤(カテコラミン)投与 |
| A | IABPの挿入 |
| B | VADの装着 |
事故
@ 空気混入
≪原因≫
| ・ | 脱血回路からの空気混入(カニューレの挿入状態など) |
| ・ | 脱血量の急激な減少による貯血槽の貯血量低下(脱血カニューレの折れ曲がりなど) |
| ・ | 左心ベントポンプの逆回転 |
| ・ | 左心ベント挿入部から心内への空気の吸引(必要以上にベントポンプの回転数を上げるなど) |
| ・ | ベント回路からの空気逆流(ポンプ逆回転など) |
| ・ | ローラーポンプチューブの破損 |
≪対策≫
| @ | ポンプ停止 |
| A | Trenndelenburg体位の確保(頭を低位にする) |
| B | 送血カニューレの脱去 |
| C | SVC(上大静脈)への逆行性送血 |
| D | 低体温 |
A 溶血
≪原因≫
| ・ | 人工肺などの異物への血液接触 |
| ・ | ローラーポンプの圧閉度の調節不良(不完全圧閉の方が、逆流を生じ溶血し易い) |
| ・ | ローラーポンプによる圧迫 |
| ・ | 心腔内血液吸引の過度の陰圧吸引(陽圧より陰圧のほうが溶血し易い) |
| ・ | 熱交換器における血液と温水との温度差の増大 |
| ・ | 大量輸血 |
| ・ | 気泡型肺の使用 |
≪対策≫
ハプトグロビンの投与
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