高気圧酸素治療
原理
ヘンリーの法則に基づき、患者を密閉した空間に収容し大気圧よりも高い気圧環境下で純酸素を吸入することによって結合型酸素だけでなく溶解型酸素を増加させ、低酸素症を迅速に改善する。
装置
| 第一種装置 | 第二種装置 |
収容人数 | 患者一名のみ | 複数患者及び医師その他医療スタッフ |
装置本体 | 円筒形或いは楕円型で内部は単室構造 | 鋼鉄製円筒型で内部は主室と副室に分離 |
加圧 | 純酸素又は圧縮空気 | 圧縮空気 |
医療機器 | 心電図と脳波のみ | 殆どの医療機器使用可 患者はマスク、酸素テント、人工呼吸器など により酸素投与 |
適応疾患
救急的適応疾患 | | | | | | | | | | | | | | | 非救急的適応疾患 |
| @ 急性一酸化炭素中毒その他ガス中毒 A ガス壊疽 B 空気塞栓症又は減圧症 C 急性末梢障害 (凍傷、熱傷、末梢血管障害) D ショック E 急性心筋梗塞その他急性冠不全 F 脳塞栓、開頭術後の意識障害、脳浮腫 G 重症の低酸素性脳機能障害 H 腸閉塞(イレウス) I 網膜動脈閉塞症 J 突発性難聴 K 重症の急性脊髄障害 | |
@ 放射線又は抗癌剤治療と併用悪性腫瘍 A 難治性潰瘍を伴う末梢血管障害 (バージャー病など) B 皮膚移植 C スモン D 脳血管障害、開頭術後の運動麻痺 E 一酸化炭素中毒後遺症 F 脊髄神経疾患 G 脊髄炎又は放射線壊死 |
※ | 救急的適応であって発症の日から1週間を越えたもの |
管理・保守
≪始業前点検≫
@ | 装置本体(火気、危険物、窓ガラスのヒビの有無などの点検) |
A | 電気系(アース、コード、コンセント、通話・通信状態、点灯、消灯の点検) |
B | ボンベ室(残圧、圧力調節、作動、フィルタの目詰まりなどの点検) |
C | 加圧試験(気密性、換気弁の作動性の確認) |
≪治療前点検≫
@ | 装置内部、周囲、設置場所の状況を再点検し、火気、危険物のないことを確認 |
A | 通話装置の作動状況を再点検し、装置内部の非常用警報ブザーの作動性を確認 |
B | 空気系、酸素系の供給圧を再点検し必要があれば、ボンベを新しいものと取り替える。 |
≪患者の点検≫
@ | 耳抜き(外耳道と中耳の圧力差をなくす)の要領を説明 |
A | 患者の着衣は、合成繊維を避けて木綿製品としできれば防炎・不燃性加工を施したものに変更 |
B | マッチ、ライター、カイロなど発火源となる物品、破損したら火傷の原因となる湯たんぽ、 圧力暴露によって破損するおそれのある腕時計、ラジオなどの電気製品、その他の引火性物質の装置内への持込を禁止する。 |
C | 自動注入器については、機械式動力源を使用したもののみ使用可能 |
D | 体外ペースメーカーは圧力により破損するものがあるので注意。埋込み式は一般的に問題なし |
操作
≪操作者≫
1名以上の技士が1台のタンクを受け持つ
≪加圧≫
毎分0.08MPa(0.8kgf/cu)以下で、患者の状態や加圧に順応しているかを確認しながら加圧する。
≪滞在時間(減圧開始〜最高治療圧力下まで)≫
60分
≪減圧≫
毎分0.08MPa(0.8kgf/cu)以下で行う。体内窒素は殆ど洗い出されているため急速減圧による減圧症の発症の可能性はないが、圧力変化に伴う鼓膜、中耳、内耳、肺などに対する障害いわゆる気圧外傷のおそれがある。減圧時間は、2気圧で15分(計75分)。3気圧で30分(計90分)
合併症
@ 圧力外傷 A 酸素中毒 B 窒素酔い
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