夢大和フォトギャラリー



四国八十八ヵ所《伊予の国》歩き遍路の旅
空海の史跡と自然を訪ねて

第3回 44番〜51番

        礫岩峰

       6月1日 JR内子駅〜宿(内子町路木)  歩行距離 12.5km『歩行地図』クリックして下さい
       今回は列車を利用、新大阪駅を7時35分発内子到着11時49分。昼食は列車内で済ませ12時に歩き始める。前回散策
      した内子の町並みを懐かしく眺めながらルート379号に出て小田川沿いを歩く、蒸し暑いが時折川を渡る風が心地良い。
      畑や家々の庭先は色んな花が咲き蝶が乱舞している。小田川では今日が鮎釣りの解禁日、多くはないが釣り人が楽しんで
      いる。姿は小振りだが急流にもまれて美味しいと釣り人。379号は歩道が広く歩き易い、だが歩行者に全く会わず。
       内子町大瀬本町の町並みでは、立派な木の看板が各商店にかかっている、話し合って在住の大工さんが作られた、「愛媛
      新聞」取扱店の看板(写真)も立派で名札の棚があって新聞が入っている、遠方の学童が自宅に持ち帰るとのこと。
       2件の店先で鯖を炭火で焼いていた、内陸部の為古くから焼き鯖が持ち込まれていたとの事、田植えの忙しい時期でよく食
      されるらしい。
       千人宿大師堂辺りで手押し車を押している老人から「自販機でジュウスでも」と120円のお接待、限りある小遣いの内からだ
      ろう、私になど勿体無いが有難く頂くことにした。
       今夜の宿の夕食メニューが変わっていた、豆腐・湯葉・油揚げ・蒟蒻のみの料理、途中で覘いた遍路無料宿泊所では食べ物
      無しだよ、少し物足りないが何時しか料理を期待している贅沢心を諌め「菩提の道場」の意義をかみ締めることにする。

       6月2日 宿〜44番大寶寺〜宿(久万高原町東狩場)  歩行距離 25.1km『歩行地図』クリックして下さい
       宿を7時5分に出てルート379号を進む、7km程で上田の渡しに着く、山間をうねる様に道路がそして田渡川の流れが下る、
      川の瀬音に気持を集中して歩く、瀬音がどんどん胸に入ってくる、躍動感が湧いてきた、遍路路は軽い登りだが快調に進んで
      いる。落合トンネルを抜けて県道42号へ、渓谷沿いとなって瀬音はサラサラと軽妙な音に変わる。
       10時半に「鴇田峠遍路道大寶寺迄7.8km」の石柱、其処から山道に入る、10分程で心臓が早鐘を打つ、標高570mの下
      坂場峠を越え少し下った後に標高790mの鴇田峠に12時着、一歩一歩の重かったことエネルギー吸収をと昼食休憩、逆打ち
      のお遍路さんが「岩屋寺さんはもっと大変ですよ」と言って軽やかに下っていかれた。
       峠を下って途中久万高原町の町並みが眼下に見える、13時50分に44番札所大寶寺山門に着く、山門両脇に大きな草鞋が
      あり歩き遍路の無事を祈る。樹齢1000年近い杉の大木、根元は二抱えもある太さで苔がびっしり、傍の石仏が小さく見えて
      可愛い(写真)
       大寶寺は菅生山の山中にあり、僧堂は老樹に囲まれ幽寂の趣と頂いた資料にあるが正しくそう感じる。霧雨煙る境内を想像
      し暫し佇む。昨日お接待頂いた老人の健康をも念じた。
       標高560mの大寶寺から山道を登り標高715mへ、そこから下って今宵の宿「狩場苑」さんへ15時50分着、今日は疲れました。
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       6月3日 宿〜45番岩屋寺〜宿(久万高原町入野)  歩行距離19.1km『歩行地図』クリックして下さい
       高原特有の朝霧、7時45分出発、気温16度、歩きには好都合な朝だ。
       ドリンク調達の為に県道12号を進み古岩屋から八丁坂入り口に戻る、岩石や朽木の多くが苔をまとった谷川沿い、静かでコロ
      コロと聞こえる流れの音に心が洗われる。そびえ立つ円錐形礫岩峰(これが四国カルスト奇峰か)の中腹に不動明王が祀られて
      いる(写真)、45番岩屋寺に踏み込んだ思いが増す。
       9時10分に八丁坂を登りだし「南無大師遍照金剛」と心で唱えながら0.7km標高730m(+160m)の峠の茶屋跡へ、風が抜け
      て心地良い。
       尾根伝いに軽い登り下りを快適に進む、純白の幽霊草(銀竜草)を発見(写真)僅か10日程の命を輝かしている。
       下りに入って三十六童子の行場に、礫岩峰が四方八方に聳え立ちその中に童子像が祀られている異様な雰囲気に圧倒される。
      一段と下って逼割禅定に、岩の裂け目を鎖と梯子でよじ登る山岳修験者の行場、望めば修行が許されるが見上げる高さと急角度
      に、高度恐怖症の自分には無理。
       随分と道草したが11時10分やっと岩屋寺の山門をくぐって大師堂に到着、本堂も含めて礫岩峰に囲まれ正に山岳霊場の雰囲
      気、見上げれば見上げるほど胸に迫ってくる、この臨場感をカメラに収めるのは困難、暗い洞窟を手探りで入っていく「穴禅定」を
      経験し、再度360度見渡して神仙境を思わせる岩屋寺を脳裏に埋め込んで後にする。
       古岩屋への道も渓流沿いを歩く、所々に白や黄色の草花が群生し奥上高地の梓川上流を思い出す、朝に通らなかった東狩場
      の山道を通り12号に出て久万町へ、16時に今宵の宿「やすらぎの宿でんこ」に入った。念願だった岩屋寺を存分に参拝出来たし
      その道中遍路道にも満足、風呂を頂いて心地良さに酔う。

       6月4日 宿〜46番〜47番〜48番〜49番〜宿(松山市南久米町・東道後温泉)  歩行距離27.2km『歩行地図』クリックして
       下さい。

       何時何処で徳を頂けるやら・・・ 朝出発し遍路笠を忘れて宿に戻った折、食事中の車で遍路のご夫婦に「昼の食事でも」と千円
      のお接待を私に、「同じ遍路ですから」とお断りしたら「私も歩き遍路をした者で大変さを知ってますから」と、歩きも車でもツアーで
      も四国遍路に変わりないと思っているし、そんなに大変な事でもなく歩きならこその楽しみを味わっているくらいだ。結局はご夫婦
      の気持を無にしたくないし差し出していただいた気持が嬉しいし頂くことにした。幸運と言うか勿体無いというか心に沁みる物があ
      り、歩き遍路の有難さを味わいさせて頂いた。感謝です!!
       ルート33号を三坂峠まで、8時43分其処から遍路道は山中へ、標高710mから一気に290mに下る、楽だが足腰には良くない
      、途中で同年輩の遍路さんに軽く抜かれる、まるでと飛ぶように歩かれる、古岩荘から道後までの予定とか実に45kmを越えるぺ
      −スに驚きだ。スーパーマン空海さんはもっと凄かったんだろう。
       遍路休憩所「坂本屋」 さんに9時10分着、甘えてお茶を頂きながら江戸時代の納札を見せて頂く、 多彩な人々を接待し会話
       する四国ならではの老後の過ごし方楽しいだろうな!
       標高が下がるにつれ景色は田園に、じゃがいもの花が咲き、玉ねぎの収穫盛ん。
       網掛石もお参りし46番浄瑠璃寺に10時50分着、松山市内8ヶ寺の打ち始め、「仏足石」に裸足で立ち朝にお接待頂いたご夫
      婦の交通安全を願い併せてこの後の健脚を願った。47番八坂寺で愛媛大学生の歩き遍路実践学習一行に出会い48番西林寺
      までの4.5kmを同行、スタイル抜群の女教授とも語らう楽しい一時。
       49番浄土寺で本日の打ち止め、今宵の宿「そらともり」へ16時に入る。早速天然温泉に、色んな種類の温泉を楽しむ中で、この
      四日間酷使に耐えてくれた足腰に温泉を充分に沁みこませた、岩を伝って流れ落ちる湯の音に小田川・田渡川の瀬音、谷川のせ
      せらぎ音を思い出し、水が与えてくれる癒しに陶酔。
       この宿は温泉を主体としたホテル形式で遍路の泊まる宿ではない、洗濯は出来ないし朝食が7時からでは遅すぎる。良く調べな
      かった自分が悪い、しかしこの誤りが素敵なプレゼントをしてくれた、静かで快適な広い空間は何の邪魔も入らない、まるで静寂な
      自然の中に一人で寝そべっているような感覚、思い存分今迄の遍路旅を振り返ることが出来た。
       そこで気付いた事がある、「自分を見つめ直すと言う事は自分が感じた事、思った事を葛藤させてそれを記録する事から始まる」
      と、四国遍路のあちこちで自分の思いのあれこれを綴ってきた、この中に自分の我と言うか素性が現れている筈だ、この遍路が結
      願した時に如何なる自分を見出すのか!この宿はこんな大事を気付かしてくれた。
       以前に読んだ本でうろ覚えだがこんな事が書かれていた《 道を間違えることを恐れる事はない、間違えた道にはその道でしか
      出会えない感動の風景がある、だから決定事項にくよくよせず正解だと思え 》 と 遍路宿としては失敗したが結果は正解・正解
      大正解だ。
       夜も2時となり温泉家族風呂に入って休む。

       6月5日 宿〜50番繁多寺〜51番石手寺〜JR三津浜駅  歩行距離11km『歩行地図』クリックして下さい
       朝食は菓子パン・カロリーメイト・缶コーヒーで済ませて6時50分に出発、7時半には50番繁多寺を打ち終える。境内からは松山
      市内が一望、ここまで入梅したのに晴天続き、天候も下りかげんか市内がもやっている。納経帳を微笑んで返してくれた女性に爽
      やかさを頂いて51番石手寺に向かう。
       石手寺参道両脇に土産物店が並んでいる、仏壇清掃用の刷毛を作っておられたので声をかけその手捌きを写させてもらう(写真)
      朝の早くから賑やかなお参りで線香の煙が充満している、堂塔の殆どが国宝、国の重要文化財らしくその風格が境内を狭く感じさ
      せている。今回はこの石手寺で打ち止め、此処までの旅の無事に感謝し懇ろに参拝す。
       本堂横手から遍路道は山道となり、やがて観光客が大勢の道後温泉の街を通ってJR三津浜駅に10時半に着いた。
        JR松山駅に戻り大阪への帰路につく。大寶寺・岩屋寺の難所を打ち終えた安堵感、そして両札所の絶景の余韻が気持ちの良い
      疲れとなって瞼が閉じる。『菩提の道場』に入ってようやく「自分を見つめ直す事の手掛かり」を得たように思う一歩前進だ。


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 愛媛新聞取扱所  大寶寺の大杉と石仏  幽霊草
     
 坂本屋  石手寺参道の刷毛作り  
     
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