第1話〜プロローグ

 光が空を漂っている・・・
天より下り来て、輝くものといえば、ひとは、たいてい、美しく優しく、救いと導き
をもたらすものを思い浮かべるに違いない。
 この光も、導くものには違いない。しかし、この光は、優しさとは縁が無い。救
いの中でももっとも残酷な、死という名のそれからすらも、遠くへだった場所に居
るのだ。
 この光は、かつてはとてつもなく巨大な輝きの一部だった。畏れと厳しさと戒め
をもって世界を従えんとした。慈悲なき力、罰し律するもの・・・
 しかし、それは否定された。慈悲もなく、贖罪と断罪だけを言いあて赦す事を
知らぬものは、拒否されてもう一つの輝きへと、取って代わられた。

 だが、巨大な光は、かつて世界の多くの人々を支配したのだ。それを恐れる
心、憎む心、従い服する心は、いまだ多くの人間の心の奥に潜んでいる。
 光は砕け散ったが、全てが消え去った訳では無かった。世界を圧えつけてい
た強い力の消滅は、激震を招いた。その揺れは、昼と夜の境にひびを入れ、人
と人では無い者達の境界までも歪ませていった。
 人間の強い想いによって生まれる異形の命をもつ妖怪と言う者達は、より安
易に生まれ不安定なまま世界に解き放たれる・・・。 そして、醜い傷跡を残して
いく。

 その光は、愛や優しさ、慈しみや笑い、喜びだけでなく、憎しみや悲しみ、怒り
や嫉妬、人間の心の奥深く渦巻く醜い心まで照らし出す。ぎらつく強い怨念の
光が、くっきりと、闇と言うなの影を描き出す。歪んだ愛と、恨みの共鳴・・・

呪いという名の光が今、地上へと降り注ぐ。復讐という名の種を送り出すために

          この光には、慈悲も救いも何も無い。あるのは・・・・・・・





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