エピローグ

 海原電鉄の駅の一つ「沼の底」其処から続く一本道のをたどると其処に、白い
壁、草葺きの屋根の農家のような家が有った。その家にやたらと頭のでかい老
婆・・・銭婆と言った。
 銭婆は、椅子に座って編物をしていた。その横では、仮面の男・・・カオナシ
が、三人分のお茶の準備をしていた・・・三人分である。
 カオナシが、お茶の準備をし終えると、外の門にぶら下げてあるカンテラが、音
を立てて揺れ出した。
 「どうやら来たようだね。」
銭婆がそう言うと、程なくドアをノックする音がして外から声が聞こえた。
 「銭婆様、神楽です。」
神楽がそう言い終わると、カオナシが素早く扉に所に言ってドアを開けた。
 「お邪魔します。久しぶりだなカオナシ。」
神楽がそう言うと、カオナシは嬉しそうに頷いた。
 「遠い所から良く来たね。まずは、お茶にして一休みしなさい。話しはそかでも
良いだろう。」
ハイ。と言ってから席に付く神楽。カオナシは、三つのティーカップに紅茶を注い
でから席に付く。そして、三人は取り留めの無い話しをしながら、カオナシが作っ
たお菓子に舌鼓を打った。

 三十分ぐらい立っただろうか、神楽が突然話題を変えて告げた。
 「銭婆様。例の件ですが・・・一応、心当たりのある所を調べてきたのですが、
やはりこの世界もあの一件の影響があるみたいで、空間の歪や結界の破損等
が、確認されました。」
 「やはりそうかい。アレだけの空間が突然、失われたのだから影響が無い分け
無いのだよ。」
 「ハイ。向こうの世界・・・人間の世界でも、本来別の空間に有るはずの隠れ里
が、通常空間に繋がって元に戻らなくなったり、汚れとは無縁の精霊界に人間
が紛れ込んだりして大騒ぎです。ここの世界もあのトンネルのような物が意味無
く出来たりして、確認はしてませんが、かなりの数の人間が紛れ込んでる様で
す。無論、見つけ次第、強力な結界を張ってきましたが。」
 苦労をかけるねと、神楽の労をねぎらう銭婆。それに対して苦笑する神楽。
彼女、神楽は銭婆に頼まれてここの世界の結界や空間の歪みを調べていたの
だ。仕事で、今回の事件には係れないと言うのは口実に過ぎず、仕事の方はす
でにほぼ終わっていた。暇なときに、様々なテーマで資料を集めて、ある程度要
点をまとめて書いてあるものが、十個ほどあって今回はそれを使ったからだ。
 道理で、しろがねのメンバーが何度電話しても連絡が付かない訳だ。

 それから、更に三十分間ほど少々深刻な話しが続いた。
 「それでは、私は帰ります。又、来ます。」
神楽が、席を立って扉の方に向かった。と、銭婆が呼び止める。
 「神楽ちょっとお待ち。言い忘れた事があるんだよ。」
何でしょうか?と振り返る神楽。
 「あんたがここに来る前に、少し占いをして見たんだが・・・あんたの所属するネ
ットワーク『しろがね』は、近い内に大きな事件に巻き込まれるみたいだよ。特
に、あの人間の娘、千尋とハクこの二人の命が非常に危なくなる。メンバーの一
人もね。注意するんだよ。」
 神楽は、解りましたと大きく頷く。そして、神楽は家の外に出て本来の姿になる
と、銭婆とカオナシが手を振って見送をうけて、人間の世界へ戻るべく時計台目
指して、飛び立っていった。





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