情熱大陸 7





 「僕とのペアを解消して君は誰と組むつもりなんだ!」

 突然ヒカルから切り出されたパートナー解消は納得行くものではなかった。

 「伊角さんだよ。」


 アキラの予感が的中する。
以前バイオリン科のミニコンサートで伊角が彼の伴奏を担当していたから。

 
「なぜ今更そんなことを言い出すんだ。」

 コンクールの選考まではわずか3週間しかなかった。
 今更パートナーを解消なんて無理な話なのだ。

 
「俺は自分の力でコンクールに出たいんだ。塔矢わかって欲しい。」

 「どういうことだ?」

 僕が学園でどんな風に噂されているか知っていた。
 まさか進藤まで僕をそんな風に思っているのかと思うと腹立たしさで煮えくり
 返りそうだった。

 
「緒方先生に言われた。塔矢と組んだら誰だって選抜されるって。
 お前はそれでいいのかって。先生だけじゃねえ。和谷にも言われたんだ。
 俺が塔矢に媚びてペアを組んだって学園中で評判になってるって」。

 
「君は本当にそう思ってるのか?」

 進藤は歯を食いしばり何かに耐えていた。彼もまたただの風潮の犠牲者なのだ。

 
「思いたくねえよ。思いたくなんてなかったさ。でも実際どうだよ。
 お前は俺とのペアを条件に俺の体を・・・」

 「それは違う。」

 咄嗟にそう返していた。

 だが、あの時・・・君が伴奏を頼みに来た時確かに僕はそう言ったのだ。
 パートナーとして君のすべてが欲しい・・・と。

 
「何が違うんだよ。」

 
「ペアの事とは関係なかった。君だって知ってたはずじゃないか。
 僕は君が好きだって事を。それを知っていて君が持ちかけたんだ。」

 
「結局 お前が俺に惚れてるのをいいことに俺が漬け込んだって事じゃねえかっ・・・ってあっ」

 
僕は無理やり進藤の口をふさいだ。
それ以上は聞きたくなかった。
 
進藤がそんな人間でない事は僕が一番知っている。
同時にそんなデマに振り回された君が許せなかった。
 
ただ純粋に惹かれただけなのに。

 
「許さない 君のパートナーは僕だけだ。ぺアの解消なんてしない。」



 僕は進藤を激しく抱いた。
 彼が許しを請うまでぺアを解消しないと言うまで許すつもりはなかった。


 
だが・・君は結局 それを口にせぬまま僕の腕の中で意識を手放した。

 
まるで僕を放棄するように・・


再編集2006年11月

                                    

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