SWEET HOME 1



※SWEET HOMEを読み進められる前に・・・。

 このお話は当初【天空の破片の番外編】と言う事を明かさないで
 単体としてお披露目しました(笑)
 なので現在【天空の破片の番外編】の中に置いてますが
本編とは少し違った風味になっております。  


   

ヒカルは重い気持ちで受話器を握り締めた。

「もしもし塔矢ですが。」

穏やかな塔矢の声に余計に気持ちは沈む。
いいにくい・・・

「あの・・俺だけどその、今日どうしても予定が
入ってお前の部屋にいけなくなったんだ。ごめん」

「進藤 予定って?君はまた僕との約束を反故にするつもりなのか!!」


耳もとで怒鳴られて思わず受話器を遠ざける。

「だって、しょうがないだろ。お袋 急用が出来て“サイ”の事頼むって。」

弟の“サイ”の名を出すと余計に塔矢の機嫌は悪くなる。
それはわかっていたが事情が事情だけにどうしようもない。

「わかった。君との約束を僕はもう期待しない。それじゃあ。」

「塔矢ちょっと待てよ。」

言った傍から塔矢にガチャンと電話を切られてヒカルはため息をついた。


弟のサイとは歳が19も離れている事もあって
ヒカルにとっては目に入れても痛くないほど可愛い弟だった。

しかもヒカルに懐いていてヒカル自身親ばかならぬ兄バカで。

 だがヒカルだって今日は塔矢に会うのを楽しみにしていたのに。
ヒカルは大きくため息をついた。

今日塔矢との約束を破ったのは確かにまずかった。
もう3週間以上もも二人で会ってはいないのだ。
そうでなくてもお互い忙しくてそうそう会えないのを
何とか合わせて取った休暇だったのに・・・。

ヒカルは傍らに座ってブロックで遊ぶサイに話しかけた。

「さい 兄ちゃんとでかけよっか?」

「にーにとお出かけ?」

「そう 碁の強いお兄ちゃんの所だけど行くか?」

「行く! 行く!」

「よし。じゃあ準備してくるな。」

リュックにサイの荷造りをはじめる。

子連れの荷物は結構大変だ。

サイは2歳半を過ぎて昼間のおしめはいらなくなってきたが
それでも夜のおしめはまだ外れていない。

着替えに、おやつにおもちゃにお気に入りのタオル 人形etc
それに自分の着替えも入れると半端じゃない。

最後にお袋への置手紙をおいて準備完了。





「サイ出かけるぞ。」

「うん。」



少し紫がかった瞳とストレートの髪が揺れる。

正真正銘 サイと俺は兄弟だけど全く容姿に
似ている所はない。

こいつの容姿はまるで・・・そう佐為なんだ。



5月の風の強かったあの日 突然消えてしまったあいつ
あの時は神様なんていないと思ったけれど。

今は信じられる気がする。



 

小さな温かい手を握りしめるとサイがうれしそうに笑った。





     
      


目次へ

2話へ