ステージは上手くいくのでしょうか?
舞台に最初に現れたのは、見慣れた街角の風景でした。
大勢の人が行きかう賑やかな通り。
角々では大道芸が披露されていました。
和谷や伊角たちがその芸を思いっきり披露していました。
少しすると、伊角が舞台の真ん中に立ち、口上を述べました。
「遠い昔から、ここでは、ステージを崇め、最高の芸を捧げることが、ならいとなっていました。
この国の王は、ステージを守る祭司でもありました。
しかし、あるとき、国王は気付きました。
代々伝わる大切な守りが曇っていることに…。」
伊角が下がると、座間が舞台に登場します。
和谷はすれ違いに呟きました。
「あんたがこんないい役で出るなんて。」
「端役の小僧が。 ほざくな。 私はステージを極めた男だ。」
座間はそう言って、ぎろっと、和谷を睨みました。
舞台の上で、座間は、老いた役者を演じていました。
「私は世界中を捜し求めてきた。ただ、最高のステージを作りたいと…しかし、私は疲れた…」
流石に一派をなすほどの男でした。
存在感は圧倒的でした。
舞台裏では、和谷が、まだぶつぶつ言っていました。
「座間がステージを求める求道者の役なんて、何だかなあ。」
「僕は、どちらかというと、緒方さんが、守護神の役だということこそ、ミスマッチな気がしますね。」
芦原があけすけに言いました。
「おい。芦原。今だけは大目に見てやるが、これは俺にぴったりな役どころなんだ。いいか、俺はヒカルの守護神だからな。」
緒方は、しつこく間もなく出番となるヒカルに念を押しました。
ヒカルはかなり緊張していて、上の空で頷きました。
「でも芦原さんの言うことも一理あるかもですね。」
アキラはそういって緒方を見ました。
烏帽子を被った緒方は、只でさえ背が高いのに、ひどく目立ちました。
「緒方さんには、魔法のランプの巨人とかが似合いそうなきがしますね…。僕は。」
「ふん。諦めの悪いことだ。いいか。俺はヒカルのパートナーなんだ。」
「それは単にこの芝居の中だけですよ。」
アキラと緒方は、舞台の袖で、睨みあっていました。
なんだか前途多難な芝居の始まりです。
こんなで、上手くいくのでしょうか?
ヒカルは、言いました。
「止めてよ。 そんな言い争い。俺、せりふ忘れそうだよ。」
「大丈夫だ。俺は守護神なんだから、お前がとちったら、助けてやるぜ。」
「緒方さん。ヒカルはとちったりしませんよ。」
「ふん。アキラ君は座間の弟子の役をしっかりとするんだな。」
そうこうしている内に、ヒカルの出番となりました。
ヒカルは深呼吸をすると、つぶやきました。
『サイ。 じゃあ、行って来るから…。』
ロイヤルシートにいるサイにはその声が聞こえました。
『ヒカル、どこにいようと私はあなたの守護妖精ですからね。
でも舞台を作り上げるのはあなた自身なのです。』
その声が届いたのかどうか、舞台の上に出たヒカルは。何故かとても落ち着いていました。
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