その晩、オチのお屋敷はカーニバルの前夜祭の華やかな
パーティが開かれましたが緒方は興味がなかったのでサイをパーティから連れ出しました。
「サイ、お前その服を脱げ。」
部屋に戻った緒方からいきなりとんでもない事を言われたサイは怒鳴りました。
「何を言ってるのです。あなたと言う人は破廉恥な。」
顔を真っ赤にして怒るサイを緒方は笑い飛ばしました。
「お前の体など興味あるわけないだろ。服の寸法を測るだ
けだ。」
サイは抵抗しましたが、緒方がどうしてもと言うのでやむなく 服を脱ぎました。その間 緒方は席を外していました。
「脱ぎましたよ。」
サイが振り向くと囲いの中に小さな桶風呂とバスタオルが用意されてました。
「こんな事をして私の気を引こうとしてもダメですからね。」
文句を言いながらもまんざらでもないサイでした。
風呂から上がると今まで自分が着ていた服はなくかわりに服が数着置かれていました。
新調された服の中にはタキシードも・・・。
そしてその奥に1枚の舞台チケットが用意されていました。
これは明日の舞台のチケット・・・しかもロイヤルシートなんて。
ヒカルではこんな気遣いは出来ないと、ちょっぴり緒方に揺れるサイでした。
そして舞台当日・・・・。
サイが緒方から贈られたチケットは舞台から右斜め横に作られた最上級の貴賓席でした。 サイがそこへ行くと先客が居ました。
それは鉄仮面をつけたあの男だったのです。
舞台裏ではいまや遅しと開演を待つ役者が一同に集まっていました。
オチに桑原 コウヨウ、座間に御器曽、アキラ ヒカル そして伊角や和谷の顔もそこにはありました。
先日まで敵だった座間や御器曽も今日は役者として同じ舞台に立つ仲間です。 もちろん本当の仲間になったわけではないんだけど・・・。
一同の下へ緒方がやってきました。
その瞬間ヒカルは目を奪われました。 緒方がサイの服を着ていたからです。 もちろん大きさは違うのですが。
呆然とするヒカルを前にアキラが言いました。
「緒方さん。あなたの役は守護神のはずでは・・?」
「ああ。そうだ。昨日古い文献を調べたら守護神の衣装がのっていてな。それを元にすぐに作らせた。」
勘のいいアキラはすぐに気づきました。
「・・・あなたの所にいるんですね。それは彼の意思なのですよね?」
「さあ。なんの事だか。」
白々しく緒方はそういうとヒカルをちらりとみました。
ヒカルはその時緒方をサイに重ねていました。
『サイ この舞台で皆の心を一つにしたい。敵も味方も なく観客と一緒に舞台を作りたい。 そしてこの国の王を取り戻すんだ。みんなで力を合わせて・・。
俺に、俺たちにできるかな。
(あなたなら出来ますよ。)
ヒカルにはサイがそういったように聞こえました。
舞台の始まりを告げるアナウンスが流れるとアキラがヒカルの手を取りました。
幕は今上がったのです。
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