アキヒカ三銃士




32




     

翌日昼前には、皆、オチのステージに集まって、出番に備えていろいろ準備をしていました。

緒方は、鼻歌を歌いながら、ステージのある場所へとやってきました。

「緒方君。 何か嬉しそうじゃないか?」
桑原本因坊はそう、声をかけました。
「そうですか。」
緒方は、今日は、全く言い返さず、にこやかで気分がよさそうでした。

余裕で去っていく緒方を見て、本因坊は呟いたものでした。
「つまらんのう。 いかんな。 あやつは貫禄がつきおった。 まずいことよ。 からかう楽しみが減ってしもうたわい。」


緒方のご機嫌の原因はスーツのポケットに入れているサイでした。
サイは少し顔を出してあちこち眺め回していました。
ヒカルに見つからないようにと、パッと隠れられるようにしながらでしたが。

『あんなに。 まったく、私が目を話すと、すぐに…。』
サイの呟きに緒方は言いました。
『どうしたんだ?』

そういってサイの指す方を見ました。
アキラがヒカルにぴったりとくっ付いていました。

『許せません。 私というものがいながら…。』
『おいおい。 サイ。 今は私の守護妖精だろうが…。』
『いいえ。 妖精は一度に一人の守護妖精にしかなれないのです。
あなたはゴキブリがどうのといいませんでしたか?
衣装箱の私に…。失礼ですよ。』

サイが拗ねて見えたのが、緒方はいたく気に入ったらしくて、ポケットに手を突っ込みサイに触りました。
『触らないで下さい。私に触っていいのはヒカルだけですからね。』

『いいじゃないか。 俺はあんたがひどく気に入ったんだ。 もうゴ石もヒカルもどうでもいい。 あんたが、俺といるなら…。」
からかうように、緒方は、しつこく、サイに迫りました。

『いいですか。 私が見えても駄目なのです。 私はヒカルの守護妖精なのです。 ヒカルが立派な役者になるように導く役目を負っているのです。』

サイが力んで説明するのを緒方は呆れて眺めました。少し溜息をついて言いました。
『判ったから、そう、力むなって。 今は平穏じゃないか。 アキラ君がヒカルと一緒にいてくれて、俺はサイと一緒で…。 何もかもぴったり上手くいっている。
まあ、その話は、この芝居が終わった後だな。』



その時、ドアが開いて、この豪勢なステージの主のオチが現れました。
サイはポケットにすっぽり隠れ、ボタン穴から様子を見つめました。

「皆さん。芝居は夕方からです。
今日は天気がことのほか良いようです。
それぞれに点検を済ませて、出番に備えて下さい。
間もなく、ヨウキ様ご一行もお出でになることでしょう。」

そこへ、召使が、大急ぎで、オチの元へやってき て、告げました。
「ヨウキ様がご到着されました。」


ほどなく、ヨウキは、座間と御器曽に見張られるように、一緒に現れました。
辺りを見回し、アキラたちを見つけ、ほっとしたように、ちょっと、微笑みました。

それから、皆に向かって挨拶をしたのでした。
「皆さん。 立派にステージを勤められますように。 芝居の成功を祈っております。」と。
 



32話はさびる様担当でした
オガタのポケットに入るサイなんて・・・。可愛すぎる〜
しかも釦穴から覗いてるなんて。
まさかオガサイが読めるなんて感激〜←元はと言えば私が振ったのでした(爆

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