アキラと緒方はヨウキに事の次第を話しました。 ヨウキの表情はみるみる蒼白になりました。
「そんなことが・・。」
「姉さん。」
アキラがヨウキに駆け寄った時です。 あかりが部屋に突然入ってきました。
「ヨウキ様大変です。」
普段何の礼も取らずに入ってくる事などないあかりが 血相をかえていました。
「緒方様にアキラ様も・・?」
本来ヨウキの部屋にいるはずのない二人にあかりはうろたえました。
「あかりさん。城に戻っていたのですね。」
あかりが頷くと緒方が即しました。
「それで、一体何が大変なんだ。」
あかりは緒方に一礼をしたあと、戸惑ったようにヨウキ を見ました。
「あかり構いません。話してください。」
「陛下が・・・国内視察されていた陛下が行方不明になられたと。
陛下に付き添われていたものが戻ってきてそのことを知らせに来ました。」
「なんですって。」
ヨウキは辛そうに伏せて胸を押さえました。
どちらが本物の王であろうとなかろうと陛下が行方知れずというのはヨウキにはつらい事でした。
「姉さん・・。」
アキラはヨウキを支えて緒方を睨み付けました。
「あの方がいなくなって打つ手が無くなった座間が強行手段にでたと言う事ですか?」
詰め寄るアキラに緒方は険しい顔をしました。
「それは違うだろうな。座間が手を下すには早すぎる。先ほどのあの慌てぶりを見ても今回の件は座間じゃないだろう。
オレが思うに地下牢から逃げたあの方と、消えた陛下とは何か関連があると思うな。
まあこれはオレの憶測だが・・・。 それであかりといったな。他に何か情報はないのか?」
「詳しい事は私も・・・ただ陛下がおられなくなったのはオチ様の館をでられたあとだったとか・・。」
「オチだって!!」
思わずアキラは大声を上げて立ち上がりました。
ゴ石のことと言い今回の事といい彼はきっと何か知ってる。
アキラはそんな気がしたのです。
「姉さん。僕はオチの所に行きます。彼の所に行けば 何か手がかりがあるような気がします。」
緒方が眼鏡のフチを揺らしながら言いました。
「アキラくん。次はヘマをするな。オレは助けてやれんぞ。」
「ええこれ以上貴方に迷惑はかけませんよ。」
部屋を出ようとしたアキラに緒方が言いました。
「それと・・・。お前を助けることを条件にヒカルという坊主にオレの舞台に来るように言った件だがな・・・。」
アキラは驚いて緒方を見ました。
「チャラにしといてやる。フェアじゃなかったからな。」
ヒカルが緒方とそんな約束をしたのかと思うとアキラは
はらわたが煮え返りそうになりましたが、今はそんな事よりあの方を助ける事の方が最優先です。
アキラは緒方に深く礼をするとオチ邸へと急ぎました。
オチの邸は城からそれ程離れてはいませんでした。
向かう途中の芝居小屋はどこもカーニバルの準備に追われて華やかでした。
特にオチ邸にも近い 彼の所有のステージは緋国でも最大規模の設備と施設をもった舞台で華やかさも一段と際立っていました。
アキラが邸につくとオチがすぐ出迎えました。
「オチ君、君に聞きたいことがある。」
アキラは普段の体裁も取れない程懸命でした。
「質問にもよるけど、陛下のことだったら僕は知らないね。」
アキラにはそれが【僕は知ってるよ。】と言っているように聞こえました。
実際・・。
「陛下がおられなくなったなんて、ただ事じゃないよ。国も取り繕うのが精一杯って所だろうし。全くこの時期に困ったものだよ。カーニバルだって近いと言うのに。」
オチの口調は全く困ったと言うかんじではなくむしろアキラには彼がこの状況を楽しんでいるように聞こえました。
アキラはたまりかねて越智を睨みつけました。
「オチくん。君は本当に陛下の居所に覚えがないのか?」
「ないね。」
即答でした。がアキラは確信近くオチが陛下の居場所を知っていることを感じとりました
「僕にも言えない・・というんだな。」
「あなたはうぬぼれていませんか?」
「自惚れだって?」
アキラがオチにそう問い返すとオチは忌々しげにため息を つきました。
「今はあなたと言えど何も話す事などありませんよ。」
「それはつまり君は知っているという事だな。」
「そう思いたければどうぞ。」
オチは冷たくそういい置いてからそれとは別に・・・と
話を切り出しました。
「アキラ先生 この件とは別にあなたにお願いしたい旨が あります。」
アキラは彼にに何か別の意図があるような気がしました。
「僕でできる事なら。」
「今 あなたの舞台ではカーニバルの準備をしてますね・・・ 伊角に和谷・・そしてこの間のあのヒカルという子供も・・。」
子供と言うならオチだって十分に子供だとアキラは思ったが もちろんそれは口にはしなかった。
「僕の舞台で演じてみませんか?もちろんキャストも内容も あなた方の自由で結構。 最高の設備と最高の舞台をご用意しますよ。」
アキラが返答に困るとさらにオチは続けました。
「すでに僕の舞台はカーニバルの日のチケットはソールドアウトです。 しかもカーニバルの当日はあの座間も御器曽もヨウキ様
も来られる。」
「オチ君!?」
アキラはオチを見ました。言葉はさめてはいましたがその瞳は アキラに何かを訴えていました。
「僕とあなたが組めば最高の舞台になりますよ。」
アキラは熱いものがこみ上げてきました。
「それで君はその舞台で何を演じるんだ。」
オチはアキラのその質問を愚問だと笑いました。
「僕はどんな役でもこなして見せますよ。
たとえ囚人でも、国王でもね。」っと。
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27話緋色担当でした。
オチアキぽくなりましたね〜いや故意にしたんですが・・・
次回お話が戻って来た時にはあの方を登場させたいと言う野望があります。
彼の出番はあるかな〜←というのをさびる様にリクエストしてみました〜(笑)
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