きっとここがその地下牢への通路なんだと皆が察した時です。
カツンと音がしました。
「ヨウキ様!」 「姉上!」
二手に分かれた通路の一つにヨウキが立っていたのです。
伊角と和谷 奈瀬が慌てて叩頭礼をしようとしたのを
ヨウキは止めました。
「いいのです。普通にしてください。それよりも
アキラ あかり・・・それに・・・ヒカルさん。
無事戻ってきてくれたんですね。」
再会を喜ぶ間もなくアキラは言いました。
「姉上、実は・・。」
アキラは今までのことを話すとゴ石をヨウキに手渡しました。
「では、あの方はこの迷宮のどこかにいるかもしれないと
いうのですね?」
「迷宮・・・・?」
ヒカルの問いにヨウキは頷きました。
「ここは代々王家に伝わる避難通路なのです。」
ヨウキの話はこういうものでした。
ここは賊の侵入時に王が避難するために作られた
通路なのだと。
この迷宮は入るはたやすいがでるは難しい迷宮で道を知らなきものが入れば2度と抜けることが出来ないのだとも・・・
それを聞いて一同は顔を曇らせました。もし間違った通路を進んでいたらもう2度と地上には戻れなかったかもしれないのです。
「じゃあ・・。姉上がここにこられたのは・・?」
「あかりに以前ここの話をしましたから・・・。
外の警備が厳しくなってることを知ってひょっとすると
ここから入ってくるのではないかと思って待っていました。」
ヨウキは暗い通路を見回しました。
「そしてこの迷宮のどこかにあの方がいらっしゃるのかもしれないんですね。」
「姉上はこの迷宮の中をご存知なのですか?」
アキラの問いにヨウキは首を振りました。
「残念ながら・・。ただここに嫁いだ日にあの方から言われたのです。
もし何か身に危険が迫ったらこの通路から逃げろと。
正しき道は唯一一つだけだと。とにかくすべての角を右に進めと・・・。」
ヨウキはそれだけ言うとそこに崩れ落ちました。
「ヨウキさま!!」
あかりが駆け寄って支えるとヨウキはすみませんと
詫びました。
「心細かったんです。私一人で。もし2度とここから出られなかったらどうしようかと。・・・・でも私はあなた方に会いました。そしてあの方はきっともっと今辛く孤独でらっしゃる。」
アキラもヨウキを支えると立ち上がりました。
「・・。一端部屋に戻りましょう。姉上には今は養生が必要です。
どうか今後の事は僕たちに任せてください。」
アキラが笑顔でヨウキを励ますと一同はヨウキの部屋へと向かったのでした。
ヒカルは部屋に向かう最中サイに聞きました。
『なあ〜サイ、お前妖精なんだろ?だったらここの迷宮の中の事とかわかんねえの?」
『無茶を言わないでくださいよ。ヒカル。そんな事わかるわけないじゃないですか』
『ちぇっ役にたたねえんだから・・・。』
サイはむっとしました。今まで散々助けてきたのにそれは
ないだろうと。
『ヒカルそんな事いうんだったら私はアキラの元に行きますよ。』
『行きたきゃアキラの所にいけよ。オレだってせいせ
いする。』
サイはアキラにも見えるようになったというのに相変わらず
ヒカルにべったりでした。
どうもサイはアキラとは相性があわないようなのです。
ヒカルもそれを知っていたのであえて意地悪を言ったのです。
二人の会話を聞いていたアキラがヒカルに言いました。
「君たちはこんな時だっていうのに相変わらずだな・・。」
「だってさ・・。」
アキラは全く・・とため息をつくとヒカルに言いました。
「ヒカル 歌を歌ってくれないか。この間旅の途中で歌って
いた曲を・・・」
あの時は敵に見つかるかもしれないとアキラはヒカルの曲を止めました。
でも今はアキラはヒカルの明るい歌声がどうしても
聞きたくなったのです。
ヒカルは歌を歌いだすとアキラが口笛でそれに応えました。
和谷と伊角が手拍子でリズムをとると薄暗い通路は灯りがともったように皆の心に希望が湧いてきたのでした。