アキヒカ三銃士




24




     


ヨウキのプライベートルームに着くと、みんなは、早速話し合いを始めました。

「実はね。」
さっきは、サイに悪かったかな。という思いがあったので、ヒカルは、サイが言った事を思い出しながら話始めました。

「祭りの日に俺たち、ステージで、芝居をしたらどうかと思ってるんだ。」

地下迷宮のことで頭がいっぱいだったアキラは、少しむっとした様子で、今はそんなことを話す時ではないのにと思いながら言いました。
「ヒカル。 君はまた唐突に、そんなことを言い出す。」

サイは、芝居の話を始めたヒカルの気持を察したようで、進んでアキラにその意味を説明しました。
それは、準備を急がなければならないし、とても重要なことでもあるのだと。
アキラはサイの話に、じっと耳を傾けました。

伊角は、年長者らしく、落ち着いてこれからの段取りを整理しました。
「一つは、地下牢から、あの方をお助けすること。
もう一つは、そのあとどうするか。
ヒカルが今言ったのは、後のことだな。」
ヒカルは、分かって貰えて、嬉しそうに頷きました。

「なあ、どうしてだと思う? 座間たちは、この迷宮を自由に出入りできるんだ?」
和谷のその言葉は、みんなが疑問に思っていたことでした。

「迷宮の出入り口は、一つじゃないのよ。 おそらく。」
奈瀬が言いました。

「言い伝えでは、王の避難通路は代々王様にだけ伝えられていますけれど、でも双子ならば或いは…。」
ヨウキの言葉でした。

「じゃあ、王様に取って代わった彼が? 今その人はどうしてるのです?」
「国内視察ということで、旅に出ています。
私の近くにいれば、すぐに見破られてしまうと思っているのでしょう。
祭りが終わるまでは、見つからないようにと。
あと3日ほどしたら、戻って来る筈です。」

サイの話を聞き終わったアキラは、決断を下しました。
「一度、僕たちは、和谷君たちの隠れ家に戻ろう。 いつまでもここには、いられない。」
そう言ってから、
「姉さん。 一度僕たちは戻ります。 迷宮を歩く準備も要りますし、必ず連絡に来ますから。 気をしっかり持ってください。」

ヨウキは、無理に微笑を浮かべて、明るく頷いて見せました。



前の道を辿り、ヒカルたちは祠の外へ出ました。 それから、城の裏門の近くを伺っていると、急に背中で、声がしました。

「和谷君。」
驚いて振りかえると、陸力がいました。
それからすぐに、「隠れて。」と一言。
皆が慌てて臥せると、警備の者が近くを通り過ぎていきました。

「話は後だ。 まずは安全なところへ。」


隠れ家へ着くと、陸力は早速説明してくれました。
裏門の井戸の近くに大木があって、その根元に秘密の入り口がある。
そこから行くと、簡単に地下牢へ行けると。

「僕たちは三人組なんだ。 今僕の代わりに王世振が牢にいる。
僕たちは雑技団で、縄抜けや脱出のマジックをやることもあるんだ。
あの地下牢を脱出するのは容易なことだ。
ただあの囚人の仮面を外すのはなかなかできない。」

それから、主の楊海公に言われていることを、そっと、皆に耳打ちしました。

「そうか。では、これで、第一の案件は解決できるな。
もう一つの方をヒカルに説明してもらおう。」
伊角は言いました。

「僕から話そう。 ヒカルは順序だてて言うことは苦手だろう。」
アキラのその言葉に、ヒカルは少しむっとしましたが、黙っていました。
確かにサイの話を説明するのは骨が折れましたから。

「あの方を助け出したら、僕たちは皆で、芝居をする。
それは、ある国の物語。
でも今起こっていることを暗示しているんだ。
そして、それはゴ石の物語でもある。

ゴ石は二つある。
二つ合わさって初めて力を持てるのはなぜか。
その力はどんな力なのか。
それは、権力とか富とか栄光とかじゃないんだ。
そういうものではない、もっと素晴らしい力。

その本当の意味を皆に知ってもらう物語を芝居にする。
それを知ったら、皆きっと、この馬鹿げた争いをやめるに違いない。
そういう話だ。 台本はここにある。」

いつの間にと思いつつ、ヒカルがサイを見ると、サイは 『私は手際がいいのですよ。』と威張って言うのでした。

アキラは。芝居のあらすじを簡単に話しました。

「じゃあ。決めよう。 二組に分かれる。 
まずは、陸力に案内してもらって、あの方を救い出すこと。
次に、その芝居の準備とリハーサルだ。」

あかりと奈瀬と伊角と和谷は、早速、芝居の準備に取り掛かりました。
ヒカルとアキラは、二人で陸力の案内で、地下牢へと出かけることになりました。
 




24話はさびる様担当でした。そしてカーニバルに向けて始動。
どんなお話になるのかな〜。次回からカーニバル編へ

目次へ

25話へ