アキラは地図を広げました。
「ヒカルここがT国だ。T国へ行くには二つのルートがあってね。街道沿いを進む方法と、そしてこのT国と この国を跨ぐ鋒山山脈を超えていくルートだ。」
それをきいてあかりは表情をこわばらせました。
「アキラ様ひょっとして・・・。」
あかりはアキラに言われても様が抜けるのには当分かかり
そうだった。
「あかりさんが察したとおりです。僕は山岳ルートから T国へ向かった方がいいと考えています。」
ヒカルは二人の様子からその山がどんな所なのか何となく想像できました。
「ひょっとしてかなり危ない場所なのか。」
アキラとあかりが同時にうなづくとヒカルは首を振りました
「オレは反対だよ。そんな危ない所にあかりを連れていくなんて。安全な街道を進む方がいい。」
「ヒカル私のことは・・・」
あかりが何か言おうとする前にアキラがそれをさえぎりました。
「僕は危ないのはむしろ街道沿いのほうだと思ってる。 あそこには座間派の貴族たちや御器曽の手下たちの
管轄する領土がある。下手をすればT国にたどり着く前に僕たちはみんな・・・。」
その続きを言わなかったアキラの言葉をヒカルは飲み込みました。
頼みの綱のサイを見ましたがサイも何かじっとアキラの言ったことを考えているようでした。
その時突然扉があいて和谷と伊角が現れました。
「なら、第3のルートを使うっていうのはどうだ?」
「君たちは・・?和谷くんに伊角さん・・!!」
「あなたたちも知り合いだったの。」
「知り合いでは・・それよりヒカルこのことは誰にも言わないといったはずだ!!それなのになぜ彼らが知ってるんだ」
アキラは今にも机を叩きそうな勢いで立ちあがったので和谷が二人の中を割って入りました。
「アキラ落ち着けよ。俺たちは何もきいちゃいねえよ。ヒカルわりいな。
お前らとは離れてって話だったけど、やっぱ黙っていられなくなってな。ダチや・・・それに・・・。」
和谷は少し照れくさそうにあかりの方を見ると・・・
「あかりさんが危ねえ目に会うなんざほっとけるわけねえからな。」
小さな声でつぶやいた和谷の肩に伊角はそっと手をおきました。
「取りあえず事情は俺たちは聞かないから。 なんだか知らないけどお前たちが抱えてる問題は この国全体を巻き込んだ問題じゃないのか?
オレたちはそれがわかっていながら知らぬフリなんて出来ない。
アキラ オレたちにも何かやれる事はないか?」
「伊角さん 和谷ありがとう。なあアキラ 伊角さんと和谷にも力になってもらおうぜ。」
アキラは小さくため息をつくともう1度地図に目を落としました。
「それで・・・和谷くんのいう第3のルートというのは、海岸ルート。それとも海路をつかうルートなのか?」
アキラが伊角や和谷の事を仲間として認めたと言う事だということがヒカルにはわかりました。
「海岸ルートじゃねえよ。それだと時間がかかりすぎるだろう。2週間じゃ到底間に合わねえ。海路だよ。」
「海路か・・。」
アキラはまた腕を組んで考え込みました。
「アキラ何か問題があるのか。」
「ヒカルは知らないかも知れないが海路は天候に左右されるんだ。時化があるときは船はでない。
特に今のような季節の移り変わり目にはモンスーンがこの国にはよく来るんだ。」
「だったらこういうのはどうだ。二手に分かれていくってのはよ。」
和谷の提案に伊角が頷きました。
「なるほど、それはいい考えだよな。オレと和谷とあかりさんで海路ルートを。」
「オレとアキラは鋒山山脈ってことか。」
まあサイもだけどなって、ヒカルがサイに合図を送ると
微笑返してくれた。
「いいだろう。」
アキラはようやく立ち上がりました。
「この方があかりさんも安心だし、僕もヒカルとなら遠慮なくやれる。」
窓の外東の空はうっすらとしらんでいました。
東北には高くのびる鋒山山脈。
「ヒカル鋒山山脈は険しいですよ。」
サイの言葉にヒカルはわかってると頷きました。
「それがわかっているなら鋒山は私に案内させてくれませんか。」
「サイお前あの山登ったことあんのか。」
「遠い昔ですけどね。」
そういったサイの横顔はヒカルが初めてみたぐらい
真剣な眼差しでした。それはホンの一瞬の事でしたが・・・
「アキラ様 ヒカル向こうで必ず・・」
「おう、伊角さん和谷 あかりのこと頼んだからな。」
「任せとけよ。」
こうして5人と一人の妖精のたびは始まったのでした。
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