アキヒカ三銃士




10





     

「2週間ていうとあまり時間が無いよな。すぐにでも発たないと。」
ヒカルの言葉にあかりが頷きました。
「T国までは、5日くらいかかるの。 往復で10日はいるわ。」

「俺、ちょっと、和谷たちに断ってくる。2週間、留守にするって。」
「理由は言わないで。」
「判ってるさ。」

ヒカルが、夜遅く、突然現れたのにびっくりした和谷と伊角でした。
が、ヒカルが、あかりのために、しばらく留守をするというと、
「どうせ、俺たちもしばらく、ストリートに立てないし。 
一緒についていく。」と言うのでした。

「でも俺。あかりともう一人、アキラっていうのと一緒に出かけるんだ。」
「アキラだって! あのアキラか?」
「あのアキラって?」

「お前、そうか。知らないんだな。アキラっていうのは、塔矢派の塔矢行洋の息子で、王妃様の弟なんだ。」

「有名なのか?」
「本当は、ステージで充分やれる実力の持ち主なんだよ。
天才らしい。」

「でも、オヤジの七光りみたいなものは嫌なんだろ。 
それに今の座間派との争いも嫌ってさ。
一人で小さな小屋を立ち上げて頑張ってるんだ。」

「俺、あいつ苦手なんだ。 
一緒にでなく、お前たちの近くにこっそり付いて行くよ。 
何かあったらすぐ助けに行くぜ。
おまえのためじゃなくて、あかりさんのためにな。
例の件だろ。目的は言えないんならいいよ。聞かないよ。」
「ありがとう。」

「いい仲間がいますね。ヒカルには。」
あかりとの待ち合わせの場所へ急ぎながら、サイは言いました。
「うん。俺。和谷も伊角さんも大好きさ。」

さて、とある街角。
待ち合わせの場所です。

「ヒカル。」
あかりがそっと、暗がりから、声をかけました。
「こちらがアキラ様よ。」
「様はやめて下さい。旅の間は余計に。呼び捨てでいいですから。」

「アキラっていうの、お前か。俺、ヒカル。」
早速呼び捨てにして話しかけたヒカルですが、顔を見てびっくりしました。
アキラと呼ばれた方もヒカルを見て、一瞬、絶句しました。

「これは驚きの展開ですね。」
サイがわくわくしたように、呟きました。
あのヒカルが、初めて入った芝居小屋で出会った主役の少年。
「君がヒカルか…」
少し険しい、とげとげした様子で、アキラが言いかけた時です。

「二人とも、顔見知りなの? 良かった。」
そういうあかりの前で、けんかはできません。
「うん。」「ええ。」と、あいまいに頷く二人でした。

あかりが、ちょっと、離れた隙に、ヒカルは、言いました。
「なあ。この前のこと。俺が何ができるか知りたいって…。 
あれは当分なしでいいか? 俺、今は何もできないんだ。」

そう屈託なく率直に言うヒカルが、アキラには新鮮でした。
アキラの周りは少しでも力があることを
見せびらかせたい者ばかりがいる競争世界でしたから。

アキラは自然に言っていました。
「うん。今は仲間だね。僕の姉のために手伝ってくれることを
感謝するよ。よろしく。」

サイは、感心しました。
アキラが、素直で礼儀正しいということもですが、
ヒカルが人の心をほぐす力を、
生まれつき持っていることに改めて気付かされたからです。

「この才能をどうやったら、ステージに結び付けられるのでしょうか。
私を引き寄せた力を…。」
サイは考え込みました。

その時あかりが戻ってきました。
「じゃあ。 早速出発しましょう。アキラ君もヒカルも。 いい?」
二人は頷きました。
「じゃあ。行こう。」
「ええ。 一人はみんなのために みんなは一人のために。」
あかりがそう言って、微笑みました。

2週間の危険な任務が、始まりました。







10話はさびる様担当
危険な任務ですと(笑)。さびるさまよくぞここで振ってくれました!!
空想(妄想;)が広がっていくのをやめられないのですが・・。
私を止められるのはさびる様だけです(笑)


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