アキヒカ三銃士






     
アキラは、ヒカルに助けられ、ふらふらしながら立ち上がりました。
「良かったな。 偶然、通りかかったんだぜ。 大丈夫か?」
手を差し伸べてくれたヒカルに「ありがとう。」と言いかけ、
アキラは気付きました。 
さっきの舞台を見て、ずれた笑いをした少年でした。
でも良く見れば屈託なさそうな顔をした子で、
それほど悪い人間じゃなさそうでした。

「君は」 
そう言いかけ、この街ではあまり見かけない服を来たヒカルに
聞きました。
「君はどこから来たの。」
「俺、ここから二つ山越えた葉瀬村から来たんだ。
ちょこっと、ステージに出てみたくてさ。」

その言葉がアキラの気に障ったようでした。
今さっきヒカルに抱いた好印象は消えてしまいました。

「ちょこっとだって!
君は、ステージの神聖さを知らないんだな。
忍耐・努力・辛酸・苦渋…はては絶望まで乗り越えても、
ステージに立てるものはごく僅かなんだ。
ちょこっと何て。 君は一体何ができるんだ。 
さっきだって君はずれていたし。」

アキラの早口でまくし立てる呪文のような言葉に
ヒカルはついていけませんでした。
目を白黒させながら。
「なあ。 お前。 すげー早口。 まあ、そんだけ喋れるんなら、
大丈夫みたいだな。」
そう言った時、「アキラー。次の公演の時間が来るぜ。」と、
探しているような芦原さんの声が聞こえました。
「君が何ができるのか、今度あったら是非教えてもらいたいよ。」
そのまま、アキラはその場を去りました。

「ヒカル。あの子をすっかり怒らせてしまったみたいですね。」
「なんであんなに、むきになるんだろう?」
サイはちょっと、くすりと笑いました。 
二人があまりに対照的に見えたからです。

「なあ。サイ。 これからどうしよう。」
「そうですね。 メインステージをちょっと見てみたいですね。
今はどこにあるのでしょうか。」
二人で、きょろきょろと通りをうろついていたので、ヒカルは、
どんと、人にぶつかりました。

「おい。 いきなり人にぶつかってくるなんて。」
相手は痛そうに言いました。
「ご、ごめん。」
相手の持っていた荷物が尖っていたので、ヒカルは腕に傷を
負ってしまいました。

「大丈夫か?」
相手は目ざとくそれを見つけ心配そうに言いました。
「うん。 大丈夫。 このくらい。」 

ぶつかった相手のつれの男が言いました。
「和谷。こいつ。家まで送っていてやろうよ。 お前、家どこなの?」
「俺、今日この街へ来たんだ。 役者になろうと思って。」
ヒカルは、正直に答えました。

「この街へ来る奴はたいていの奴がそうさ。 
お前誰かの紹介状を持ってる?」
「ううん。」
ヒカルは首を横に振りました。

「こいつ。悪い奴じゃなさそうだしさ。 伊角さん。どうかなあ。
今日は、俺たちのところへ泊めてやろうぜ。」
「そうだな。 悪い奴に騙されることが多いからな。 
お前みたいなおのぼりさんは。」

和谷と伊角と名乗る二人はヒカルの腕にハンカチを捲いて、
手当てをしてくれて、道々、教えてくれました。
この街はステージの街といわれて、メインステージを目指すものが
街のあちこちにある芝居小屋やライブハウスで腕を磨いているのだと。
「見所のある奴を引く抜くスカウトがあちこちいるんだ。 ステージに
立つ前に、まずライブハウスでやるのすら、大変なんだぜ。」

「和谷たちは何をしているの?」
「俺たちは、アクロバットミュージック。」
「??何? それ?」
「皆と同じことをしていたら、目立たないだろ。 
だから色々考えるのさ。 
たいていは二人で、ストリートでやってるんだよ。
時々はライブハウスにも出ることがあるけれどな。」

そういう話を聞いて、ヒカルには、やっと、”ステージに立つ”という
ことがとても大変なことなのだとわかったのでした。





4話はさびる様担当。
ヒカルとアキラの衝撃的な出会いでした〜
ここから愛がめばえていくのね・・・(違うって)
ところでアクロバットミュージックってどんなんでしょう。
想像してみたんですが・・・・(??)



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