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UFOきゃっちゃー完結編


前編



     
研究会の終わった後 和谷は得意げに
ヒカルに話を持ち出した。



「進藤 オレこの間お前といったゲーセンで
レアなやつ取ったんだぜ。」

これなんだけどな。と言いながら和谷が取り出した
UFOきゃちゃーの人形にヒカルはうれしさと懐かしさ
がこみあげた。


佐為・・・。


和谷の手のサイズに収まるその人形は扇子を口に
あて優しく微笑んでいた。

これ この表情 オレと碁を打ってるときにいつも佐為が
してたんだ!!


ヒカルがその人形に想いを巡らしてると和谷が、でもな〜
っとぼやく。

「こんなやつヒカ碁に登場してねえよな?
着てる服も妙だし・・。
それともオレがしらねえだけで伊角さんは知ってんのかな。」

通りがかりで出てきたやつとか以前院生
だったやつとか・・TV盤のオリジナルキャラとか・・・。

和谷の一人歩きの想像にヒカルは噴出した。
すると不服そうに和谷がしかめっつらをした。

「何だよ。進藤お前知ってんのか。こいつのこと。」

「いや、知らねえけど。和谷よかったらその人形オレに
くれない。」

和谷はこんなもんどうするんだと言いながらもヒカルに
人形を差し出した。

手渡された人形を大事そうにしまうとヒカルは
もうここには用がないとばかりに駆け出した。


「和谷悪い。俺、用思い出したから先帰る!!」

「おい待てよ。進藤!」

和谷が呼び止めたがヒカルは振り返りもしない。

一体あいつは何なんだ〜とため息混じりに
ぼやくとヒカルは棋院の出口で
ようやく思い出したように振り返り大声で叫んだ。

「これありがとな〜今度楽平の人形とったら、お前にやるから・・・。」

「いらねえよ。そんなもん!!」

和谷の叫びは棋院に響いただけで走り去った
ヒカルには届かなかった。








ヒカルはそのまま棋院を飛び出すと塔矢の家を目指した。
目指すは塔矢が持つヒカルの人形。

あいつどんな顔するだろう。喜ぶかな?

叶わぬ自分の夢をヒカルはこの人形に
託すようにぎゅっと握りしめた。


塔矢の家に着くとそこでようやくヒカルはある現実と
ぶつかった。

なんといって塔矢から人形を借りればいいだろうか?

いろいろ考えてみたのだが妙案が浮かばない。
そうこう思案してるうちに後ろから突然「進藤君」
と呼び止められヒカルは慌てて振り向いた。

「お おばさん」

「ごめんなさい。随分お待たせしたかしら。」

「ううん。オレが勝手に来ただけだし・・・
それよりおばさん 塔矢のやつは・・?」

「アキラさんは指導碁に行っててね。
もうすぐ帰ってくると思うから進藤君上がってくださいね。」

明子に勧められ断ることも出来ず結局
家に上がるとヒカルは名案を思いついた。

「おばさん悪いけど塔矢の部屋で待たせてもらってもいい?」

あそこなら棋譜や碁盤もあるし・・なんて思いついたことを
言うと明子は笑いながらあんな殺風景な部屋でいいなら
と通してくれた。


ちょっと申し訳なく思いながらヒカルが塔矢の部屋に入ると
碁盤の前にぽつりと座ったヒカルの人形が目に入った。


それは塔矢の気持ちを物語ってるようで良心がいたんだ。


塔矢ごめんな。ちょっと借りてくだけだから。すぐに返すからな。

言い訳を言うように心の中で謝ってその人形を手にした時
部屋に近づく足音でヒカルはとっさに人形を鞄に入れた。


ノックの音の後 明子がお茶と菓子入れを持って入ってきた。


「進藤くん。ごめんなさいね。実はアキラさんから留守電が入っていて。
指導碁遅くなるようなの。ゆっくりしてらして構わないから・・」

「ううん。突然来たオレが悪いんだから。今日はオレ帰ります。
塔矢によろしく!」

「進藤くん?」

逃げるようにその場を立ち去ったヒカルを明子は
呆然としながら見送ったのだった。




     


  



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