ヒカルの碁パラレル 暗闇の中で 5章 地下へと続く道1 あれから数か月がたち組織からの連絡もない。
平穏すぎるほどの日常をなんとなく客観的に思うのは またいつ呼び出されるかわからないという、思いがあるからかもしれない。 アキラとは連絡を取ってはいない。 一度来たメールも開封せずに削除した。 パートナー解消はヒカルが望めば出来る。 でもそれをしない理由はそうすれば もう2度と会うこともないかもしれなかった。 それが心の中で引っかかってる。 携帯の着信音で目覚めたヒカルは無意識近くにメールを開けた。 送信者は空と直、メールに添付されていた写真が画面いっぱいに 映しだされる。 少しはにかんだ笑顔の直はやっぱり一目では少女のようで、その肩を しっかり抱く空は少し誇らしげでヒカルはほっこりする。 文面は大学の学際への誘いだった。 知人の病院に通いながらも元気でやってるらしい。 『お陰で今年は単位も取れそうだよ』というの直の言葉も添えられていた。 二人は『何でも屋』という サークル名で活動してるらしかった。それが空の言っていた探偵業と 関係あるかどうかはわからないが。 ぼんやりと、返信に悩んでいたら、佐為がのぞき込んできた。 『誰か?ひょっとして仕事ですか?』 「いや、空と直から、11月〇日に学際があるから来ないかってさ」 『私行きたいです!2人にも会いたいし!それで誘われたのはヒカルですか?』 「えっ!?」 『アキラくんは誘われてないのかと思って』 「あー」 と言ってヒカルは頭を掻く。メールはCCになっており、アキラにも同じメールが 送られていることは一目でわかった。 「アキラにも同じメールが行ってるみたいだな」 よそ事の用に言うと佐為があからさまなため息を吐いた。 『まったく、いつまでもらしくないです。 アキラくんに言いたいことがあるのなら。さっさとハッキリ言うべきです』 「そんなのオレないし」 『そうでしょうか?私にはあるように見えますが』 「オレがあいつに何を言いたいって?」 あの時佐為はアキラとオレとの言い争いを聞いていたのだろうと思う。 佐為は『聞いていない』というが妙に絡んでくるところを見てもそうだ。 だが、お互いそれを口にすることが出来ないでいる。 『私が言ってもいいのですか?ヒカルはアキラくんの事、ス」 佐為が言おうとしたことに顔が真っ赤に染まる。佐為の声を振り払う ように『もう!!』と大きな声を上げた。 けれどその先は公定も否定もしなかった。 『いい機会じゃないですか?』 「いい機会は、直と空と会うことだろ? 佐為下らねえこと詮索してねえで、あいつらが人間としてやっているか どうかってことだぜ?」 『わかってますよ、でもそれはヒカルはお友達としてですよね?』 そうも話してる間にメールの着信を告げる音がしてヒカルは立ち上げた。 ヒカルは顔をしけめ、大げさすぎる程のため息を漏らした。 アキラが二人に返信したのだ。 【・・・待ち合わせは、ヒカルと二人で行きます。空くんと直くん に会えるのを楽しみにしています】 「まったくあいつは・・・」 そこには勝手にオレも一緒に学際に行くことになってる。 おまけに空に待ち合わせ時間と場所まで取り付けていた。 『ヒカルがぐずぐずしてるからですね』 佐為が口を尖らせる。 「お前はどっちの味方なんだ!」 『ヒカルに決まってるでしょ』 言い争いもここまでと、佐為は『学際が楽しみです』とカラカラ笑う。 ヒカルも本当は楽しみにしてる。アキラに会う事だって躊躇はあっても こんな機会があって良かったと思ってる。 でもおそらく佐為のいうような感情ではない、と自分に言い聞かせる。 ヒカルにも自分のこの感情が何なのかわからなかった。 その日は晴天だった。 待ち合わせ場所は最寄り駅で、駅前の商店街を抜けると学園という 場所だった。 ほんの少し遅れたのはアキラと二人になるのを避けたかったからだ。 佐為はそんなヒカルの心境を知ってか知らずか、特に何も言わなかった。 案の定、待ち合わせにはすでに3人が立っていた。 空がヒカルを見つけ大きく手を振る。それにヒカルも応え駆け寄った。 『ヒカル、二人とも大丈夫ですよ』 大丈夫と思っていても、佐為の言ったことにホッとしてる。 ヒカルの目に見えないものを佐為は感じ取れるからだ。 ヒカルはアキラの顔をまともに見ず、空と直に話し掛けた。 「久しぶりだよな、空も直も元気そうで安心した」 「ヒカルは少し痩せたんじゃない?」 直に顔を覗きこまれヒカルは苦笑いした。 「そんな事はないと思うけど」 佐為が戻ってこなかったひと月まともに飯を食べておらず、3キロ以上は減ったが今は 戻っているはずだった。 「・・・にしても賑やかだな」 学校前というわけじゃないのに子供連れや学生、カップル人々の往来は激しく、 賑やかな音がここまで漏れていた。 「うちは小学校からの一貫だから、学生だけじゃなくて子供らも多いんだぜ。 オレたちがやってる『なんでも屋』も今日は外来を受け付けてるから大変でさ」 「大変なのに僕らの案内をさせるのは申し訳ないな」 アキラはオレと二人になろうとしているのではないかと思って焦る。 「あ、いや、今はまだ大丈夫じゃないかな、ちびたちがやってくれてるから」 「うん、大変になったら呼び出してっていってるんだ。それに二人には きちんとお礼をしたかったし」 オレは疑問に思ってることを聞いた。 「何でも屋って部活なのか?どんな活動してるんだ?」 直は空を見てクスリと笑った。 「部活だよ、その名の通り何でも屋だよね?」 「最近の依頼だと、子猫の飼い主を見つけて欲しいとか、 拾ったスマホを持ち主に届けて欲しいとか、高等部の水道管が破裂したとか、」 少し得意げに直が頷く。 「そうそう、あとは恋愛の相談が多いよね。それに、旧校舎にお化けのうわさがあるけど 本当か、とか・・・。」 『お化けですか!?』 『お化け』の噂に佐為が身を乗り出してヒカルは苦笑いするしかなかった。 「そんな依頼まで来るの?本当に何でも屋さんだね」 感心するアキラにヒカルも頷く。 「ああ、あまりにも多岐に渡りすぎててびっくりだけど。 その「何でも屋」はお前らが作ったの?制限とかねえの?」 「部活を立ち上げたのは、「祭」(まつり)だな。祭はオレと直の幼馴染で親友なんだぜ、 あいつが副生徒会長だったから部活として立ち上げられたっていうか?」 それに直がうんうん、と頷く。 「でもあいつは今はアメリカに留学してる。オレたちが拉致されてる間は心配して 戻って来てくれて、心配症だから夏休み終えるまでこっちいてくれてさ、 あいつも留年になるかも、」 直が申し訳なさそうに笑う。直と空にはそういう友達もいるという事だ。 「依頼の制限は、もちろんあるよ。活費をもらっているから校内かうちの生徒じゃない と受けないよね? 水道管も応急処置はしたけど後で水道やさんに来てもらったし」 大変だろうが困ってる人を助けるのはやりがいもあるだろうし、充実もしてるのだろうと 思う。 そうこう話してるうちに空のポケットの携帯がなる。 「どうした?ちび?ええああ?わかった、すぐ直と戻るから」 電話の様子で2人が呼び出された事はわかった。 「ちび、大変って?」 「なんでも断るにも、受けるにも受けられない依頼が来たらしい。べそ掻きそうな声だった」 「ごめんなさい、二人に学園を案内したかったのに」 声を落とす直にヒカルは苦笑した。 「いいぜ、とにかく一緒に学園まで行こう!」 「僕とヒカルは2人で学園を回ってるから心配しなくていいよ」 アキラの返答にヒカルは内心焦り、『いやオレらも・・・』と口を挟んでいた。 「いや、オレらもその『何でも屋』ってやつ手伝えねえかな? アキラは興味ねえ?」 アキラの顔はやはり見ることが出来なかったが、そう話題を振ったのはアキラと二人に なることは避けたかったからだ。もちろん空と直のやってる『何でも屋』というものにも 興味があった。 「僕らはお邪魔にならないかな?」 「そんなことないよ!空、アキラとヒカルが一緒にいてくれるだけでも心強いよね?」 「もちろん、お前らなら喜んで」 5章地下へと続く道2話へ 一服 ようやく5章ですm(__)m サブタイトルの「地下へと続く道」、これもすきしょ!のパラレルで前に 書いたタイトルと一緒になってしまいましたm(__)m それから名前だけ出てきた祭(本城祭)くんの中の方は 千葉進歩さんです。今後登場予定はない、気がするんだけど💦 祭くんはなんとなく佐為に雰囲気似てるような気がしてます。 |