ヒカルの碁パラレル 暗闇の中で 5章 地下へと続く道2 空と直が通う学園は門の構えからして広くそこから黄色に染まった
イチョウ並木が見える。 校門は、特に呼び込みや、受付で賑やかだった。 そんな中、直が招待状と学園の案内図をもらってきてくれた。 「はい、これ、ヒカルくんとアキラくんに、ここが僕らがやってる『なんでも 屋』のブースだよ、こっちが南側が新館、奥の旧校舎は学際の後取りつぶしが 決まってる」 校内図を頭上からのぞき込んだ佐為に鬱陶しいとばかりにヒカルは 振り払い、見やすいように横にずらしてやる。 やはり佐為が気になったのは旧校舎のようだ。 ヒカルもある程度だが学園の下調べをしていた。 旧校舎で化学薬品の爆発があり、空と直が巻きこまれたこと そこに芥や学そして相沢が出入りしていたこともだ。 『ヒカル、旧校舎は今は入れないんでしょうか?』 旧校舎の場所には✖がつけられており、立ち入り禁止区域 になっているからそうなのだろう、と頷く。 だが、佐為はそんなことを気にせずとも出入りできるが。 ゆっくり巡りながら直の説明を聞く。 空はちびたちが心配と、先に『何でも屋』のブースに走っていった。 3人がブースに着いた時には空が一人でイスに腰掛け『全く・・』と 盛大なため息を漏らしてた。そんな空に直が頬杖をつく。 「青(せい)たちは?空、依頼はどうしたの?」 「どうもこうもねえよ、」 空はぶっきら棒に言った。 「青(せい)と学際回りたいって言う依頼っていうか、誘いでさ」 「ひょっとしてデートの誘い?」 「ああ、けど『何でも屋への依頼』っていう方が誘いやすいって事だろ? それで青にどうする?って聞いたら風太と廉も一緒だったら少しくらい っていうから、午前中だけならって、行かせた」 「そう、なんだ」 空は不機嫌で、その様子を見ていた直は苦笑いしてる。 直はそっとヒカルとアキラに耳打ちした。 「色々あって、空とオレは青の保護者代わりなんだ」 保護者という言葉に少し引っかかりがあった。ひょっとした『青』も空や直の ように施設で育ったのかもしれない。 「青くんが心配なんだね」 「うん、でもいつまでも保護者面出来ないよね」 空の不機嫌はピークで直が二人に小さく『ごめんね』と謝る。 「せっかく来てくれたのに、そうだ2人で少し回ってこない? チケット渡すから、オレたちの分のお昼ご飯も調達してくれたら 助かるし、昼休憩の場所はえっと、ここ」 そういって直が部室と言ってクラブ棟の3階の一室に丸印を付けてくれた。 「12時にはここをいったん閉めてくから」 「わかった、何人分買えばいい?好き嫌いはない?」 アキラがまだ半分拗ねたような空を見る。 「あ、オレと直の分とアキラとヒカルのでいいぜ、 嫌いなもんは特にねえぜ? 本当ごめんな、オレ青の事になるとちょっと冷静じゃな くなっちまうんだ。自分でもわかってるんだけどな」 「ちょっとじゃないでしょ」 直に窘められて空が『悪い』と素直に謝る。そうして自笑するように 笑った。 「まあ直の事でもオレは冷静じゃなくなるけどな」 「な、何言ってんだよ!」 直は首まで真っ赤になる。アキラがクスリと笑った 「二人ともご馳走様」 「アキラくんまで!」 直がポカポカとアキラの背をたたく。 「ヒカルくんも笑わないでよ」 そんなつもりはなかったが、どうやら笑っていたらしく、直に睨まれる。 と言っても全然怖くないんだが。 「いや、その悪い、オレたちそろそろ行こうか?」 思わずアキラにそう言ってしまった後、顔が引き攣った。 「お前らも、二人でゆっくり回って来いよ」 そういうつもりはないのだろうが、 空に冷やかされるように言われ、ヒカルは頬が赤くなったのを感じた。 歩幅を広く取りながらも、後ろから来るアキラが気になる。 突然佐為が話しかけてきた。 『ねえ、ヒカル!』 「ひょっとして旧校舎か?取りつぶしの前に見ておきたいよな?」 『いえ、その事じゃなくて、気になるものがあるのですが』 ヒカルはそれで足を止めた。 佐為の視線の先には大きく囲碁と書かれたブースがあり、 佐為は幽霊のくせに嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていた。 「行きたいのか?」 あれに付き合うのか?と内心思った後、アキラとの時間を持て余すなら、それも いいかと思う。 『はい、ヒカルは付き合わなくていいですよ』 「えっ、いや、でも」 『行ってきます~!!』 そう言ってさっさと佐為が行ってしまい、ヒカルは追うことも出来ず 困ったように頭を掻いた。 「どうかしたの?」 「あ、佐為が行きたいブースがあるって、それも囲碁だってさ」 「そうなんだ」 アキラは見えないだろうに囲碁のブースを振り返り佐為の行った方を見る。 そうしてぼそりとつぶやいた。 「君がさっき佐為と話してた旧校舎の件だけど、取り壊し が伸びて、学際の後になったんだ」 「そうなのか?」 「当初は夏休み中に取り壊す予定だったんだそうだ。 それが組織が入って、調査をしてくれた。無人島もだけど」 ヒカルはあれから組織と距離を取っていたので、知らなかった。 もちろんアキラもそれをわかって言ったのだろうが。 「じゃあオレたちが今日詮索することないんだな?」 「そう思ってる。でも君や佐為にしかわからない事もあるかもしれ ない」 「そうだよな、わかった。あとで佐為に行ってもらう」 地下へと続く道3へ こんな所で持ち越しになってすみません。 次回少しはいいムードになって欲しいなあ(滝汗) |