ヒカルの碁パラレル 暗闇の中で 4章 正体3 表向きは公安に属するが、重要機密をあつかう組織にヒカルは所属している。
そのため中に入るのにも手続きが面倒なのだ。 携帯も所持品のほとんどは預けなければならない。 代わりに渡される連絡用の携帯にはプライベートの連絡先は一切ない。 ひょっとしたらアキラの連絡先はあるかもしれないが、アキラからの連絡が 代用品に入るはずもなく、 最後にもう1度確認したが、期待する履歴はなかった。 所定の手続きを済ませると佐為も神妙な面持ちだった。 エレベーターの中ヒカルは独り言のようにつぶやいた。 「なあ、佐為はどう思う?」 『先に行きましょうか?』 「先にお前が行ってもな、」 『大丈夫です。ヒカルには私が付いています』 「はは、頼りにしてるぜ?」 軽口を言って降りた先にまた検査が待ち受けており、秘書だと思う女性が 対応してくれた。 「奥のお部屋で緒方がお待ちしてます」 緒方は組織の支部のTOPだった。 ヒカルが訓練生の頃に数回顔を合わせた程度だが、 その時も挨拶程度でほとんど面識がないといってよかった。 彼女にそのままついて進むと、廊下のある場所で突然空気が 変わった。 重くなった?前に進もうとする足が重力に吸い付けられたような、 まるでそんな感じだった。 『気を付けて、ヒカルダメです!!』 佐為の叫ぶような声が聞こえ咄嗟に振り返る。 「佐為!」 今しがた背後で聞こえたはずだった佐為の声、 だが、そこには佐為はいなかった。 まるで忽然と消えてしまった、そんな感じだった。 「どうかされましたか?」 前を歩いていた秘書が立ち止まり不審気にヒカルをのぞき込む。 「いえ、」 そうは言ったものの、胸騒ぎを覚えた。 「あのここは何っていうか、霊の侵入できないようなその地場とか あるのか?」 組織のものならわかるかもしれないとヒカルは聞いた。 「あの、どういう事でしょう?」 ますます、彼女は顔を曇らせた。 「あ、いや、そのすみません、足を止めて」 ヒカルはもう1度振り返り廊下を見回したが、佐為の姿はない。 きっと先に行ったか、どこか気になる部屋が、あったに違いない。 そう結論付けたが、胸騒ぎは消えなかった。 中に通されると秘書は慇懃に挨拶をして出て行った。 もう1度振り返ったが、佐為の姿はなく諦めるしかなかった。 「すみません、出先だったので、私服で」 「いや、こちらこそ急に呼び出して悪かったな、まあそこに座れ」 L字のソファを進められ、座ると緒方がその向かいに腰をおろした。 緒方は組織トップというのもあるが、存在そのものに威圧感があった。 「隠し立てしてもしょうがないから、単刀直入にいうが、お前の正体が人外で はないかというものがいる」 「オレが?人外?」 まったく予想にもしなかった事だった。 見当違いを疑われてる。というか寝耳に水もいいところだった。 「いや、誰が?」 思わずつぶやいた後、『まさかアキラが?』と背筋に脂汗が流れる。 つい先日島で学に献血した時のことが巡ったからだ。 すぐにそんなはず絶対ないと打ち消したのは、アキラを信じたかったからだ。 「相手は言えないが、そういう事なんだが、思い当たることはないか?」 「思い当たるも何もオレが人外なわけないっていうか、そもそも組織に入ったときに 検査もしてます」 「オレもお前の検査結果は見たがな」 振り返るように緒方が見たデスクには書類があった。見えないがヒカルに関する事柄 のものではないかと思う。 「確かに検査時点では人間であったが お前は、最初の任務で伊角というヴァンパイアと接触してる。今回の島の任務では 直接的には会ってないようだが、「間接的には」接触がある。 気づかぬ間にという事はある。 よしんば耐性がある分、自覚がない可能性もあるしな」 それを納得するわけにはいかなかったが、ヒカルは止む無く頷いた。 「もう1度検査を受ければオレが人間だと納得してもらえるんですか?」 「まあ、そう焦るな、検査項目は結構あるのは知ってるはずだ。 もっと簡単に人間だと証明する方法がある。これから俺に付き合え」 大抵は血液検査やレントゲンなど一般の項目で人か人外かはわかる。 ただ最近は人に紛れて生存していくうちに、体格や構造も 人間に近い人外のものも多かった。 本当に自身で気づかないものもいるという話を聞いたこともあった。 空や直のように、ヴァンパイアとサキュバスの過去を捨て忘れてしまった ものもいるぐらいなのだ。 「わかりました」 ヒカルは疑いを晴らすためにも、ここは緒方に素直に従う他なかった。 →正体4へ
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