雨は夜中になっても止むことはなかった。
佐為はその日帰ってこなかった。
灯を消そうとしたヒカルをアキラが止めた。
「消さないで」
「でも、恥ずかしいだろ?」
「君をみたいんだ」
顔を染めヒカルは小さく頷いた
「アキラは知ってるのか?」
「何を」と聞き返したアキラはそれが愚問だった事を
悟って、「いいや」と首を横に振った。
「初めてだし、よく知らないよ。でも本能はわかってる
気がする」
「そっか、オレは何も知らなかった」
緒方と初めての時ヒカルは本当に何も知らなかった。
ホンの一月前まではだ。でも今はわかる気がする。
触れ合う意味も求める意味も。
言葉がなくなり、浴衣の中に忍び込んだアキラの手が
震えていた。ヒカルもまた身体を震わせた。
その震えに耐えられなくなりアキラの指が、がむしゃらに
ヒカルを求めだす。
「ア・・・キラ」
「ヒカル!!」
加速していく想い。
そうして、アキラはヒカルの帯を解き、中心に指を絡めた。
「やっ」
声を押し殺すためにアキラの肩にしがみ付いた。
互いに触れると内からこみ上げる熱さにやりきれなく
なる。
荒くなった息を口づけで交換し、アキラが腰を押し付けてくると
ヒカルはやんわりとアキラの手を外した。
ヒカルはアキラの下から抜け出し、アキラの帯を解いた。
そしてアキラを跨ぎ床へと押し倒した。
突然に立場が逆転する。
「ヒカル?」
「ごめん、少し目瞑って」
アキラが怪訝に顔を上げた。
「お前を受け入れる準備をするんだ。流石に恥ずか
しいからさ」
「見せてはくれないの」
「バカ絶対ダメだって、一つになるんだろ」
ヒカルに窘められ、アキラはやむなく目を閉じた。
「絶対開けんなよ」
そんな事を言われたらますます覗きたくなるのが人の心情
だがアキラはヒカルに言われた通り目を瞑った。
近くにあるヒカルの息が荒くなり、泣き声のような声に胸が
突かれる。
目をつぶったままヒカルの腕を掴むと「ダメだ」と言われた。
「開けてないだろ?」
「そうだけど、もう・・・少し」
上擦ったその声にアキラはもう我慢できなくなり、アキラは目を
開け起き上がった。
「バカ、開けるなって」
「ヒカル」
ヒカルはそのまま見るなと言わんばかりにアキラの
胸に飛び込むともう1度床に押し倒した。
そうして、腰を落とし
アキラの中心を口に含み唾液を絡め、舐った。
アキラもそしてヒカルも泣きたくなるぐらいまだ子供だった。
「あっ、」
アキラの喘声に感じているのだとわかると
ヒカルの中の欲望や、征服欲が増していく。
もっとアキラを感じたい。もっと自分を感じて欲しい。
解放するとヒカルはアキラに腰かけた。
「うまく出来るかわかんねえけど」
腰を持ち上げ、一旦力を抜く。
それでも入ってしまう力に深呼吸して少しずつ体重を落とす
「ううっ・・・」
「あっ・・・」
アキラもヒカルも呻くような声を上げ、ようやく収まった時には
汗だくで、ヒカルは苦痛で顔を歪めていた。
「アキラ、これで一つになった」
息絶え絶えでそう言うのがやっとだった。
「大丈夫?辛いんじゃ」
「少し・・・でもいいんだ。お前と一つになれたから」
アキラは優しくヒカルを労わるように髪に触れた。
それだけで角度が変わりヒカルは腹部が突っ張りアキラの腕を
ぎゅっと掴んだ。
そこには痛みだけじゃなく、互いに繋がった快楽があってアキラは
堪らなくなり自然と腰が動かした。
「あ、やめ、アキラ・・・」
「こうすると君をもっと感じる。でも君は辛い?」
ヒカルの下肢は微かに震えていた。
「辛いさ、でもオレもお前を感じたい」
アキラはもう我慢できなくなって湧き上がってくる欲望のまま腰を
打ちつけた。
「ああ、あああっ」
先ほどアキラは自分が言った事が頭を掠めた。
『よく知らないよ。でも本能はわかってる気がする』
僕は知っている。
もっとヒカルが欲しい。緒方になど渡したくない。
「あああっアキラ」
押し込めていた声が自然と大きくなり、ヒカルの腕を胸に引き寄せ
声を唇で塞ぐ。
吐息も喘ぎも互いの口内に留め、もっともっとと互いを請う。
「ヒカル、愛してる」
アキラの叫びに涙が零れ落ちた。
もうこのまま死んでもいいとヒカルは薄れる意識の中思った。
23話
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